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導きのない新天地  作者: 風雷 刹那
第1章 異世界『クローア』
3/20

魔法使いへの一歩

クローアに来た日の翌日のお話

刹那視点あり


作中時間 2日目



「昨日はよく寝れたかの?」



ヒノミがゆっくりと揃い、皆で朝食をとった後にそう問いかける



「ほんとに48時間あるのね…実感したわ、昨日は長かった…あれで16時っていうんだから詐欺よ」


「くふっ、レイは元気そうじゃの」


「いいベッドでしたし、個室も広い…素晴らしいです」


「アカリも元気そうじゃな」


「この家の中を散策するだけで異世界だとわからされるんだよなぁ」


「…ハヤト、ワタシは寝ろと言ったが?」


「寝はしたぞ? 俺がそこまで寝ないだけで」


「なら良いかの」


「ベッドが違うことで少し寝にくかったが…まぁ十分寝れた」


「ミナトも寝れたのならよしじゃ」


「短剣を片手で持てなかったのが、夢にも出てきて気分が悪いです」


「…ムソウは短剣の適性が薄かったというのもあるのじゃろうな、まぁ夢を見れるほど寝れたなら良いのじゃ」


「まやたんとしては魔法を習うより、あなたの剣術が知りたいな☆」


「…マヤは聞く必要はないな」


「えー☆」



言葉の後ろに☆でもついていそうな話し方をする奴が元気でないはずがない

ただ、問題はここからである



「セツナ…おぬしちゃんと寝たか?」


「自分の尻尾をモフってたら、時間が溶けました」


「ワタシは寝ろと言ったんじゃが!?」


「寝る気だったんです、でもモフり出したら止まらなかったんです…あ、でも寝落ちはしました!」


「…はぁ」



ヒノミが手のひらを額に当て…ため息を吐いた

心情としては、『こやつどうしようもないんじゃが…』であろうか

ぐしゃぐしゃの髪と尻尾の刹那はそれでも寝れてはいたようである



「で、そんな寝落ちしたおぬしの隣は…?」


「zzz…ZZZ」


「ッ! こいつ立ったまま寝てます…」


「……」



ついにヒノミは頭を抱えた

刹那の隣で立ったまま寝ている少女…茉里にどう対処するべきなのかを悩んでいる



「私が起こすわ、いつもだもの」


「レイ…助かる」


「茉里、起きなさい…起きないとあなたの秘密を公開するわよ」


「茉里の…秘密?」


「zz…! やめて!」


「ほら起きた」


「幼馴染みが酷い…」


「…マリは寝れなかったのかの?」


「魔法が楽しみすぎて全然寝れなかった!」


「子供か!」



と、一通り騒いだ後

リビングから黒板のようなもののある部屋へと場所を移し…



「はぁ…では、魔法についての座学からやっていくのじゃ」


「おう」


「わーい」


「やったー」


「えー☆」


「ねぇ小さな子供2人ぐらい混じってたりしない?」


「まやたん小さな子供じゃないよ☆」


「お前じゃねえよ」



刹那と茉里のことである



「まず、前提として前の簡易的な説明は、忘れるのじゃ」


「え゛?」


「理由じゃが、簡易的ゆえにあまりにも説明が足りておらんかったし、ややこしいからのう」


「なるほど?」


「ではまず、魔法とは何かについてを説明していくのじゃ」



魔法とは


神々の戦いが起こっていた神話の時代に


神々の力を模して、人が生み出した力のことである


神々の使う術を見た人間たちが、それを真似し、人の身で使える段階まで形を変えたものが現代の魔法である



当時、神々の司っていた


 熱量 粒子 動力 祝福 呪詛


の5要素を細かく分け、人が手を出せるところまで落としたものが属性であり…

基本8属性は…細分化された要素の最下層でありつつも、最も洗練された単純な枠組みのことを指す


さらに、人は適性によっては、基本属性よりも神の要素へ近づいた属性である派生属性を使うことができ、基礎属性同士の組み合わせででしかできなかったことが、たった一つの属性でもって行うことができるようになる



ということを説明したところでヒノミは



「まぁ説明だけでまだ魔法を使っていない、おぬしらはわからないじゃろうから実演するのじゃ」



そう言って左の手のひらを上に向け



「“火よ(ロミ)”」



彼女が一言呟くと、左手の上にすっぽり収まるサイズの火の玉が現れる



「…魔法!」


「そうじゃ、ちなみに火の魔法を使う際に気をつけることは…絶対に自分は燃えないと思うことじゃぞ」


「…まさか、それで今ヒノミさんは燃えてないんですか?」


「そうじゃ…まぁ魔法によってはどうやっても自らに影響を与えるものはあるがのう」


「昨日の説明の魔力変化系統という話の属性と今の話の属性…どっちが正しいんだ?」


「どちらもじゃ、だから昨日の説明は忘れて欲しかったのじゃが…まぁいいじゃろう…」



逸人の問いに対し、これだから魔法はややこしいのじゃ…と呟いて、ヒノミが説明をする



「魔力変化系統というのは…神々が司る力が要素でなく属性へと変化したがゆえに、魔力が要素ではなく属性に寄るようになってしまった…ただそれだけじゃ」


「それって実質何が変わったんですか?」


「1000年以上前だと言われておるからワタシはわからんが…派生属性の適性持ちが減り、基礎属性の魔法が使いやすくなった代わりに、遥か昔の要素に近い魔法は使いにくくなったと言われているのじゃ」


「…ヒノミさんって転移魔法が使えますよね?」


「うむ」


「何属性なんですか?」


「転移は…空間属性じゃ、派生属性じゃぞ」


「はえー」



ヒノミがパチンと指を鳴らすと今日の朝食で出てきたりんごのような果物が彼女の前に現れる

それを右手で掴むと、上へと投げ上げ、指の上に細かく複雑な魔法陣を写し出し


りんごもどきが上へと投げられた力と下へと落ちようとする力がつりあい、止まった瞬間…姿を消した



「くふふ、まぁ今見たように慣れれば、詠唱をせずとも魔法陣を描けるのじゃ」


「…じゃあさっきのフィンガースナップの時は?」


「あれは儀式化をしておるのじゃ…指を鳴らすという儀式で魔法を発動させておる」


「なるほど」


「ということで、派生属性による魔法と基礎属性の複合魔法の差を見せるとしよう」



左手の上の火を消し、自らの周りに三つの魔法陣を映し出すと



「そうじゃ、魔法の並列起動可能数つまり、同時に魔法陣を描いて同時に発動できる数は基本3じゃ…適性があれば10まで同時起動ができるとは聞いたことがあるが、ワタシには無理じゃ!」



二つの魔法陣が重なり、一つとなる



「複合魔法“雪華(ユキハナ)”」



花形の雪が室内を舞う



「綺麗…」


「くふふ、この程度で驚くでないぞ、“雪華(ユキハナ)”」



次に舞い出した雪の花は先ほどと違い…鮮やかに色がつき、雪で作ったものだとは思えない



「全然違うわね」


「綺麗…ですね」


「すごーい☆」


「ちなみに消費も少なくなるのじゃ…まぁそれは良いじゃろう、特異属性に関しては説明しても無駄じゃから説明せん、あれをもっとるものなぞそうおらんからな」


「はーアンタの空間属性は特異じゃないのか?」


「派生属性と特異属性は別物じゃ」


「なるほど」


「では、この後に魔法は実際にやってみるとして…次の説明をするのじゃ」



魔法と似ているようで全く違う術について


《錬金術》

こう呼びだしたのは過去の転移者であるのだが、それは置いておくとして

想像することにより、生きている存在以外の形、存在を変えることができる術

ただ、錬金術とはいうが、物質を変えるのは相当想像が強くないといけないため…物質変換を目的として使うものではないとされている

ただ、アクセサリーなどを作る際にとても便利であるために重宝されている


が、《錬金術》と魔法を組み合わせた《錬金魔法》であればアクセサリーを作る際に特殊効果を付与することまでできるため…あまり《錬金術》だけで使われることはない



《呪術》

他者を呪う術

実は要素に近い術であり、呪詛の要素への関連性を持つ…が神が属性を司るようになったがゆえに弱体化した

今では、派生属性である呪属性の魔法の方が強いため、ほとんど使われていない



《法術》

他者を癒し、助ける術

《呪術》と同じように要素に近い術であり…祝福の要素への関係性を持つ…が神が属性を司るようになったがゆえに弱体化した

それどころか、属性魔法の癒しなどの方が圧倒的に使えるため、もう全く使われていない



《妖術》

妖人族だけが扱うことのできる術

魔法よりも利便性が高いと言われている

魔法にも派生属性に妖属性が存在するが、《妖術》ほど便利ではないが、どちらも利点が存在しているという




「こんなもんじゃな」


「《錬金術》は使えるようになっとこう」


「なぁ、ヒノミさん、これが終わったってことは…!」


「そうじゃなぁ、実際に魔法を使ってみるのじゃ」


「やったあああああああああああ!!」


「茉里…」



玲がなんとも言えない感情を視線に乗せて、茉里を見る



「まやたんはやらなくてもいーい?」


「…いや、なんであれ使い方だけは学んでもらうのじゃ、その後は自由じゃぞ」


「はーい☆」



全員参加が強制された

ヒノミがパチンと指を鳴らす

どこからか現れた8枚の紙が机の上に乗る



「なんですかそれ」


「これはそよ風を呼ぶ魔法の魔法陣を書いた紙じゃ」


「あの魔法陣を空中に描くやつって…紙にも描けるんですか?」


「いや、ワタシが自分の手で写したのじゃ…それは過去の転移者曰くスクロール、まぁ『陣紙』じゃ」


「で、それをどうするんですか?」


「ほれ全員こちらへ来るのじゃ」



ヒノミが呼び、刹那たちはヒノミの周りに集う



「1人1枚持つのじゃ」



そう言って彼女は全員に一枚ずつ渡していく



「よし持ったの、ここからは簡単じゃ…その紙が真っ黒になるまで、魔法を発動させるだけじゃ!」


「いや、魔法の発動の仕方がわからないんですが!」


「そこに関してはどうしようもなくてのぅ、人によって違うから感覚を掴むまでやるしかないのじゃ」


「一度つかんだら問題ないんですか?」


「そうじゃぞ、便利じゃろ?」


「…ここでやるんですか?」


「その必要はないのじゃ、とりあえず自分の部屋に行ってやるのが一番じゃぞ」


「…ヒノミさんはどんな感じで使えました?」


「そうじゃのう、母のように素晴らしい魔法を使いたいと願いながら、ワタシもどうやったら使えるのかを他人に聞いておったわ! 全く役に立たんかったぞ」



笑いながらそう言いつつも…



「まぁ教えるのじゃが、なんというかその紙と繋がったような、何かが通ったような感覚と共に風が生まれて…使えたことがわかったのじゃ、そこから何回か発動させ、どうすると発動するかを調べていったのは懐かしい思い出じゃよ」



彼女は懐かしそうにそう語った







〈刹那視点〉



1人悩むために、自分の部屋に戻っては見たものの…


発動するまで…ねぇ?

これがそよ風の魔法だっていうなら…そよ風が出るイメージを浮かべてみるか?


いや、全然ダメだ



「あー、わからん…」



そもそもヒノミさん重要なところを教えてくれてないな…何を考えたら使えたのか



「…茉里のところに行ってみるか? いや、あいつが先に終わらせてる可能性はあるな…あいつに教わるのだけは嫌だぞ」



とりあえずベッドに座り、自分の尻尾を回して膝上に乗せ、撫でる

あぁあ…至福

モフモフを撫でているだけじゃなく、撫でられる気持ちよさも同時に手に入るとは…便利な体になったなぁ


とはいえ、昨日お風呂に入った後は大変だったなぁ…

尻尾が全然乾かなかったし


ヒノミさんに聞いたら魔法で乾かすから全く気にしたことなかったって言われて…魔法の万能さを少し恨んだもん…


はぁ…

ひゅうと優しく風が吹いた

ん?



「……」



今窓開けてないのに、風吹いたよね?

紙を見ると…少し黒く染まっている

…初めての発動がこんななのは嫌だ!!





その後、昼食の際に聞くと、茉里も一回発動できたらしいが…どうして発動できたかは言いたくないと言っていた


なんとなく、理由がわかってしまった気がする





のちに色々聞いたら、皆あんなようなことを考えていた時に発動したらしい

だから誰も、発動したことないものに初めて発動した時のことを言わないのだとか

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