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導きのない新天地  作者: 風雷 刹那
第2章 セーミニの街
19/20

2024ハロウィーン特別小話『彼らのハロウィーン』

昨日の夜、急にこう言う話書きたくなって書き出して、今日書き終わりました

なるべく早く出したかったので、書き終わってすぐ出しました

急いで書いたからおかしいところも多いけど目を瞑ってほしい…ほんとに勢いだけで書いたからチェックもしてない


「ってことですよ、ヒノミさん」


「…お主がそんなにやる気を出すのはおかしいのう」


「はぁ? 喧嘩売ってます?」


「なぜじゃ!?」



ヒノミと刹那がヒノミの部屋で話している

その内容は…



「はろうぃーん…のぅ」


「やりましょう。というか、ヒノミさんもイベントごと好きですよね?」


「そうじゃな、何が必要じゃ?」


「まぁまずは…」



そうして2人は話しを深めてゆく…

そんな出来事から4日後…









「うん。これでいいんじゃないかな」


「いや、雑ですよ。ほらこれとか壁にくっつけましょうよ」


「そですねー」



灯莉と刹那はかぼちゃのような見た目の実に顔がくり抜かれたものを設置し、器用な灯莉によって作られた小道具や装飾品でリビングを飾りつけてゆく

今日はヒノミと刹那と灯莉しか家にいない


オレンジと黒を基調とした装飾が張り巡らされ…部屋の中は完全にハロウィーン仕様である


さらに、くり抜かれたカボチャの顔が描かれた可愛らしいオレンジ色のマカロンが皿の上に積まれており、灯莉の才能の高さを示している



「マカロン食べていい? 委員長」


「ダメですよ!」


「…そっかー」


「何をしとるんじゃおぬしらは」



呆れたような顔をしながら、ヒノミがやってきた

その格好は…


巫女服である



「あの、委員長…? これは?」


「よくわかりません」


「ヒノミさんの格好」


「よくわかりません!」


「なんで巫女服!?」


「よぉぉくわかりませーーん!!」



完全に黙秘である

ちなみに、狐耳と狐尻尾のある巫女、素晴らしい…とか刹那は考えている

多分、イベントで刹那もテンションが上がっているのだろう



「じゃあ僕たちも仮装する?」


「しましょう」


「そうだ、委員長…自分のだけ簡単なのにしてないよね?」


「そ、そんなことはありませんよ?」


「……」



目を逸らしながら自室に帰っていく灯莉に刹那がジト目を向ける

灯莉は“ガチャ”とドアを開き、“バタン”と音を立ててドアを閉める

それをしっかり見送った後に刹那は自室の扉を開けて、中に入る



…おい全く見てなかったけどふざけただろ委員長



「…」



おしゃれな洋服と…もふもふのついた上着

手に取り付ける狼の手

ん? 片耳に載せる用の帽子

ふーん、オシャレだな

尻尾に巻く、黒い帯…

ナニコレ?



とりあえず着替える

鏡を見ると…うん、似合ってるな

シンプルな洋服ともこもこもふもふのファー付きの上着に細身目な狼の手

そして、小さな帽子がアクセント

尻尾に黒い布を巻き、少し垂らしておく


やべぇ、オシャレだ

すげー………全然ふざけてないわ、手以外


そんな感想しか出てこなかった様子の刹那が意識を取り戻す

自室の扉を開き、外に出る



「ヒノミさん見てくださいよこれー」


「なん…じゃ? お、おしゃれじゃのう」


「今手を見て言いましたよね!?」


「気にするでない」



刹那が狼の手を両手から取り外し、地面に叩きつけ、悔しそうに右足で力強く地面を何度も踏みつけている

どうやら、灯莉の用意した服に自信があったらしい



「ふぅ、着替え終わりました」


「あ、委員長」


「あ、刹……え? ちょっと似合いすぎじゃありません? 



自室から現れた灯莉の見た目は彼女の髪の色と同じ薄紫の色をしたドレスであった

刹那の顔は、仮装とはなんぞ…という表情をしている



「え、え? それ作ったの? 自前で?」


「は、はい。そうですけど…」



刹那はドン引きした

いくら地球より時間が2倍あるとは言え…4日でこの家にいる11人分の服を作り上げて、お菓子まで作っているのだから恐怖しかない



「あ、あの…感想とかって…」


「え? あ、トテモキレイデス」



胸元と肩が大胆に露出しているので、高一男子にはあまりよろしくない



「ふふ、それならよかったです」



刹那がもこもこの上着を脱ぎ、灯莉にかける



「…あの?」


「その…ね?」



刹那の言わずとも伝わってくれという意志は灯莉に伝わったようで、急激に顔を赤らめていく

恥ずかしがるのならばなぜ作ったのだろうか



「あ、ありがとうございます」


「はぁ…なぁーにやっとるんじゃ、おぬしらは」



ヒノミに呆れられつつも、玄関へと向かう

ここで帰ってくる人を出待ちするのだ

今日は早く帰ってくるようヒノミに言われているためそろそろ帰ってくる頃のはずである


“ガチャリ”と音を立てて扉が開く



「トリックオアトリート!」


「…………は?」



1番の被害者は逸人だった

状況が全くつかめなかった様子で、心の底からの『は?』が出てきている

そこへ灯莉が出ていき…



「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ…です!」


「……はぁ?」



より逸人を混乱に陥れた

実質、これがイタズラである



「…俺、疲れてるのか?」


「はーい、一名様ごあんなーい」



扉を閉めて、外に戻ろうとしたため刹那が捕獲し、リビングへと引きずってゆく



「どういうことだよこれ」


「ハロウィーンだよ! トリックオアトリート!」


「マジでわけわっかんねえ」


「あ、部屋に逸人さんの服ありますよ」


「?????」



逸人の理解を超えたらしい

なんの脈絡もなく、知り合いがハロウィーンと言って仮装してたり、トリックオアトリートとか言ってきた混乱するだろう



「ワタシが着替えさせてやるのじゃ」



“パチン”といつもの音がなり…逸人の服装が変わる

変わった自らの衣装を諦めたように見て…呟く



「…これ作ったの誰だよ」



黒い服に実を纏い、刹那の小さい帽子を大きくしたものを頭に乗せた逸人…その格好なさながら魔術師(タネも仕掛けもあるほう)である…つまり手品師(マジシャン)というやつだ



「帽子から鳩出せる?」


「出せねえよ」


「ちなみに作ったのは私です」


「クオリティ高えのがムカつくな…」


「わかる」


「なんでですか!?」



ちなみにイタズラは成功してるので、マカロンをプレゼントである



「何味だよこれ」


「僕もまだ食べてないからわからない」



ちなみに、逸人は一瞬チラッとヒノミの姿を見た後、一度もそちらを見ようとしていない

別に…ヒノミの格好が『痛い』なんて思っていないのである


手を伸ばし積まれたマカロンから一つ手に取り、一口食べる

周りは少し硬く、なかはほろりと柔らかい

そして、中のクリームは……



「ベリーか…」


「はい、木苺のような実を使ってフランボワーズを再現しようとしました」


「え、委員長すご」



マカロンを一つ、刹那が手に取り食べると甘みと酸っぱさが口内に広がる

高いお店のマカロンには負けるが…普通に手作りとは思えない出来である



「…委員長すっっっご」


「そ、そんなに褒めないでくださいよ」


「そんなにうまいのじゃ?」



ヒノミが不思議そうにマカロンを手に取って、一口食べる

…面白い具合に目が開き、その目がシイタケ目のように輝き出した



「これは…すごいのう」



灯莉が頭をポリポリとかいている

褒められ過ぎて恥ずかしくなってきたようだ

すると玄関から“ガチャリ”と音がしたため、刹那が静かに近づいてゆく


玄関が開く



「今日もいい魔法ができたな」


「アンタねぇ…私の苦労考えてから言ってくれないかしら!?」


「だってよぉ、思いついたら作りたいじゃんか」


「いつもいつもいつも…アンタって人は…!」



軽い喧嘩をしながら入ってきたのは茉里と玲だ

2人が靴を脱いで、上がった瞬間に…



「トリックオアトリート!」


「うえっ!?」

「な、なに!?」


「ふふ、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ…です!」


「まぁこれがイタズラみてえなもんだがな」



刹那の突然の登場に2人が驚き、その驚きと混乱に拍車をかけるように灯莉と逸人が登場する



「え…なにこれ、ドッキリ?」



違う



「あー…ハロウィンね。逸人、アンタがこういうのに乗るとは思わなかったわ」


「これは着替えさせられたんだよ…」



逸人が玲の言葉に嫌そうに答える

当然、玲と茉里にだって、強制お着替えは待っている

ということで…



「ヒノミさん! 二名ご案内!」



刹那の台詞に対して、帰ってきたのは“パチン”という音であった

茉里と玲が3人の前から消えた

おそらくリビングに行ったのだろう

3人もリビングへと戻る


すると…



「ちょっ、ちょっと待った…なんで私メイド服なんだ!?」


「…和装メイド!? なんで!?」



そんな声が聞こえてきた

刹那が…ジト目になって隣の灯莉を見ると…実に満足そうな笑顔をしている様子が見えた

すぐに視線を前に戻した

…これ大丈夫なのだろうか



「なぁ、この服作ったの誰だ…?」



クラシカルなメイドの茉里がジト目で3人を見る

というより、笑顔の灯莉を見ている



「もちろん私ですよ」


「茉里がメイドなのはいいとして、私が和装メイドなのは納得いかないわ! あと、灯莉…絶対アンタお姫様でしょう? ティアラもあるんでしょ? そうよね?」


「…そ、そんなことはありませんよ?」



玲の怒涛の口撃により、灯莉が怯む

どうやらティアラはあるらしい



「せめて私もクラシカルなメイドにしなさいよ! ヒノミさんと和装二人組なの嫌なんだけど!」


「ちょっ!? そこでなぜワタシが攻撃されることになるのじゃ!?」



玲は周り全てを巻き込む、無差別口撃兵器になり始めている

そんな中、ニコニコとした茉里を見た刹那が指示を出す



「茉里、マカロンだ」


「承りました」



刹那の言葉にメイドらしく綺麗な一礼をした茉里は、積まれたマカロンの一つを手に取り…玲へと近づいていき…



「逸人も刹那も洋装だし…おかしくないかしっ」



周りを巻き込み続けるその口にマカロンを差し込んだ


もきゅもきゅと玲の口が動く、マカロンを味わっているようだ

頬が緩み…マカロンを食べ終わると…



「何すんのよ茉里! アンタはっ」



また始まったので茉里は再びマカロンをぶち込んだ

これが幼馴染みゆえの遠慮のなさだろうか

再び玲がもきゅもきゅとマカロンを食べる

怒っているように見えた顔が緩んだ



「…わかったわよ」



ようやく鎮まったらしい

和装メイドがしゅんとしている



「ねぇ、次の時…メイド組が僕の後に出てきてくれない?」


「ちょっ、アンタ!」


「ふっ、おまかせください。ご主人様」


「…え、これ私もRP(ロールプレイ)しなきゃダメなやつ?」



茉里がノリノリでメイドになりきっているのを見て、玲がうへぇ…という顔をする

別にRPをする必要はないのだが



「まぁそっちの方が面白そうだし、採用で」


「はぁぁあ!?」

「ぶはぁっ!」



面白そうという理由で採用した刹那に玲がキレた

そして、茉里が玲を見て吹き出した

相変わらず仲の良い2人である


ちなみに、次に帰ってくる人物によっては色々問題があるかもしれない

主に、クローア生まれクローア育ちのリーミナとメルティアのことである

確実にハロウィーンのことは知らないだろう


確実に反応が面白いのは夢宗だ



「…やっぱ変えた。夢宗が来たら頼むわ」


「確かにそうですね。1番面白そうです」


「…お前ほんとに茉里? 気持ち悪いんだけど」


「ご主人様? 言って良いことと悪いことがございます。それ以上言うのであれば、燃えカスになりたいということだと判断しますが……いかがなさいますか?」


「ごめんなさい」



茉里は茉里だった



「人が来たらワタシが知らせるからの…それまで遊んでおれ」


「自室に戻るのはダメなのか?」


「ダメに決まってんだろパーティーだぞ」


「こっちは勝手に参加させられた側なんだが!?」


「とりあえず手品師っぽいことしてよ」


「無理だが?」



刹那の無茶振りに逸人が顔を歪める

なぜか腰についている小道具の杖を持ち、被っている帽子を逆さにして持ち…杖で叩くと…



「何も起こらんな」


「そりゃ起こさにゃ起こらんでしょうよ」



当然何も起こらなかった

タネも仕掛けもないのだから当然である(世の手品師に喧嘩を売っているわけではない)

流石に服にそんな機能をつける時間はないだろう



「…刹那さんに協力して貰えばできたと思うんですけどね」


「う、確かに」


「ですが、刹那さんは材料探しがとても忙しそうでしたからね…」


「そうなんだよねぇ…ヒノミさんの手も借りて、いろんなとこ行ったからね」


「王都にも行ったのう」


「すごかったよ王都」


「何観光してんだよ」


「観光する余裕なんてなかったよ!」



この四日間ひたすらに刹那と灯莉とヒノミは忙しかった

誰にもバレないように動けたのだから良かったが



「ん? 誰か帰ってきたぞ」


「行ってきまーす!」



ドタドタと音を立てて刹那が、リビングからいなくなる

それを追うように他の者たちも玄関へと向かう


玄関が開かれ、夢宗が現れた

刹那の顔が変わる

その表情は『あ、カモだ』である

普通に酷い


刹那が茉里と玲の背中を押す

作戦変更である


茉里がにししと笑い、玲が嫌そうな顔をしながら前に出る

夢宗が靴を脱いで下を見た瞬間に2人は彼の前に飛び出して…顔を上げた瞬間に…



「「おかえりなさいませ、ご主人様」」



奥義を決めた

ちなみに茉里は完璧で、玲は少し棒読みである



「………え? は? え?」



対象は混乱している

予想通りである

ということで、刹那が飛び出して…



「トリックオアトリート!」



夢宗を現実へと引き戻す



「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ…です!」


「だからもうイタズラしてるって…」



続いて灯莉と逸人が飛び出す



「…?????」



夢宗は何も理解できていない様子だ



「えー、とりあえずっと」



次の人が来たら困るため、夢宗を捕獲して…リビングへと運んでゆく

運んだら当然、ヒノミによる強制お着替えである


夢宗の仮装は…執事だった



「…地味に似合うな」


「なんで僕と逸人とヒノミさんを除いて、セットみたいな感じなの?」


「和装メイドが西洋の姫とメイドと執事とセットなわけないでしょう!?」


「…確かに!」


「…え、これは。あれ? ハロウィン?」


「そうだぞ」


「はぁぁぁぁぁあ!? 俺なにも話聞いてないんだが!?」


「そりゃあ」


「話してませんし」


「のう?」


「もしかしてこの3人の犯行なの!?」



そう言った夢宗が、逸人、茉里、玲の順番で視線を動かすと…それぞれが深く頷いた



「はぁぁぁぁあ…ってかなんで俺執事?」



ため息と共に、夢宗が刹那を見る

刹那は首を横に振り、灯莉の方を見る

その意図を理解した夢宗が灯莉を見ると…



「…執事服は逸人さんと夢宗さんで悩んだ結果、夢宗さんになりました」


「なぜ俺?」


「逸人さんは手品師の方が似合っていたのでそちらにしましたけどね」


「…だからなぜ俺?」



夢宗が選ばれたのは消去法らしい

ちなみに、灯莉が逸人の問いに答えないのには理由がある

性格的に手品師の方が似合う…なんて本人に言えたことではない



「ということで、夢宗さん。こちらマカロンです」


「どうぞご主人様」



茉里が夢宗の口の前にマカロンを運ぶ



「…俺執事だが」


「黙ってお食べになりなさいませご主人様ぁ!」


「げふっ!?」



ニヤニヤと笑う茉里が強引に夢宗の口にマカロンをぶち込んだ

執事姿の夢宗が驚いて咳き込みつつも、マカロンを食べる



「…うま」


「そうでしょうそうでしょう」



茉里がドヤ顔で言っているが…作ったのは灯莉である


姫様(灯莉)に作ってもらったお菓子を執事(夢宗)に食べさせてドヤ顔をするメイド(茉里)…これが仮装でなければ、だいぶ異常な状況である



「アイツが作ったわけじゃないのになんであんな偉そうなんだ…?」


「楽しそうだから良いのではないかのぅ…」


「おい刹那、なんか魔法仕込め」


「いいよ、何にする?」


「鳩飛ばせ」


「おーけー」


「ワタシも手伝うのじゃ」



刹那が逸人の帽子に仕込みを始め、それを見たヒノミが面白そうに笑い、協力を宣言する

その後ろでは、仮装について玲が灯莉に文句を言っている


なかなかに騒がしくなってきたところで…



「お、次が来たのじゃ」


「行ってきまーす!」



ドタドタと音を立てながら刹那が走っていった

何回も見た人たちはすでに慣れた様子である


玄関が開き、2人の人物が入ってきた



「ミナちゃんは相当慣れましたねー」


「ししょーも追い越せそうなのです!」


「んー…そ、そこまでではー…ないと思いますよー?」



メルティアとリーミナが現れた

刹那はとりあえず恥をかくことを覚悟して飛び出す



「トリックオアトリート!」


「はえー?」

「ふぇ?」



2人とも不思議そうだ



「あー…えっとね。今、ハロウィーンっていう地球のイベント…をやってるんだ」


「なるほど…」


「え、今のでわかったのです?」


「いえー、あまり分かりませんけどー。セツナくんの格好がいつもと違ってオシャレですのでー面白いことをやっているのでしょうねー」


「いつもはおしゃれじゃないんですね。知ってましたけど」



メルティアの悪意のない言葉が刹那を貫く



「ふふ、冗談ですよー」



そう笑うと、リーミナを連れて、メルティアはリビングへと向かっていった

刹那は…察した

メルティアが、刹那と灯莉とヒノミでやっていたハロウィーンの準備に勘づいていたであろうことを

ハロウィーンが何かは知らずとも…なんらかのイベントごとをしようとしていることには気づいていたのだろうと


はぁ…とため息を吐きながら、リビングへと戻る

すると…



「こ、この格好はなんなのです!?」


「…わ、私は、このような服はあまり好きではないのですがー…」



浴衣を身につけ、狐面を頭の右側につけたリーミナとオレンジと黒だけで作られたふわりと膨らんだドレスとクラゲ方の髪飾り(オレンジと黒)…そして、クラゲ型の傘(オレンジと黒)を持ったメルティアがいた

刹那は崩れ落ちた



「せ、セツナくーん?」



メルティアの服装が癖に刺さったらしい

刹那は使い物にならなくなった



「和装組が増えたわ!」


「アイツ、ガキっぽいからあれにりんご飴持たせりゃ祭りに来た子供になるだろ」


「ししょー? 子供っぽいっていいました?」


「おっと、気のせいだな……あと師匠じゃねえから」


「逸人さんの読みは正解です。リーミナちゃんはお祭りに浴衣で来た子、メルティアさんはハロウィンのクラゲ姫です」


「ひ、姫ですかー?」


「大丈夫よメルティアさん、そこの灯莉も姫らしいから」


「わぁーー!! 違います違います違いますぅ!」



相当騒がしくなってきた

刹那が復活し、メルティアに話しかけに行く



「あぁ、うん……うん。」



いや、これは話しかけていない



「あのーセツナくん? 大丈夫ですかー?」


「…その、すごい似合ってる……似合いすぎて、直視できないっ」


「…そ、そうですかー…ふふっ」



小さく笑ったメルティアはマカロンを手に取ると、顔を逸らす刹那の口の前に運ぶ



「え? なんで?」


「セツナくんも…その凛々しいです、よー?」



そのセリフに驚いた刹那が口を開いた瞬間にマカロンを押し込み、メルティアは離れていった

口の中に広がる甘みと酸味、そして顔の熱に…思わずソファに深く座り込んだ



「…はっ、やられてやんの」


「て、めぇ!」



ソファに座る逸人と刹那が軽い口論を始めたのを見て、メルティアはクスリと笑い、マカロンを一口食べる



「あら、美味しい」


「そうですか? なら良かったです」



驚いたようにメルティアが声のした後ろを向くと灯莉が嬉しそうに微笑んでいた



「もしかして、これアカリさんがやったんですかー?」


「はい。楽しかったですよ」


「…ふふ。今度、学ばせていただけると嬉しいですー」


「ええ、喜んで!」



まだ2人足りていないがすでに相当騒がしい

ちなみに、最も騒がしいのは、メイドに成り切っている茉里の周りである



「ん? 来たな…2人おるようじゃぞ」


「よーし、最後の出番だ!」



毎回の如く刹那が走って玄関へ向かう


扉が開き



「ただいまー☆」


「帰ったぞ」



そう言って靴を脱ぐ2人の前に刹那が飛び出して



「トリックオアトリート!」



今日の決め台詞を言った



「まやたんお菓子持ってなーい☆」


「…そうか、今日はハロウィンなのか」


「ちょおい、もう少し反応しろや!」



あまりにも反応が薄い2人に刹那がキレた

割と予想していた流れではあったが、本当にそうなるとは思っていなかったようだ



「あー…お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ…です!」


「これ俺ら出る価値あるか?」


「わぁ! 皆、仮装してるぅ☆」


「…え、これ俺もさせられるの?」


「俺もしたから当然だな」


「嫌だなぁ」


「はぁ…知ってたけどさぁ」



ため息を吐きながら、刹那はリビングへ向かう2人の後についてゆく



「うわぁすっごーい、ハロウィーン仕様だぁ☆」



リビングに入った瞬間、子どものように目を輝かせたまやがそんなセリフをもらした

これまで、それに触れてくれた人がいなかったため、刹那は笑顔になった

小さい努力とか苦労とか工夫に気づいてもらえると嬉しいものである



「ヒノミさん、頼みます」


「任せるのじゃ」



“パチン”のヒノミが指を鳴らす

すると、まやは、頭に先の折れた魔女の帽子が乗せられ、服が黒とオレンジで彩られた魔女の服に変化し、湊は海賊船の船長と言ったような服装になっていた



「なぜ海賊…?」


「その、あまりに思いつかなくて…そうなりました」



湊の疑問に申し訳なさそうに灯莉が告げる

とは言え、似合ってはいる

立派な上着と立派な帽子…



「行くぞ子分ども!」


「「アイアイサー」」



ノリのいい刹那と夢宗が乗った

湊は気分が良さそうだ

それでいいのか簱矢湊



「ねぇねぇまやたん可愛い?」


「はい、可愛らしいですよー」


「ねぇねぇまやたん可愛い?」


「そう、じゃな。可愛らしいとは思うのじゃ」



魔女っ子になったまやは口裂け女のようなことをしている

それで可愛いと言われて満足そうである

こっちもこっちで、それでいいのか舞風まやという感じである



「では、皆さん…ソファに座ってください!」



盛り上がっていたリビングに灯莉の声が響く

その声に従って、刹那とヒノミと灯莉以外が座り、刹那が食事保管庫へと走っていき、灯莉が机の上のマカロンの積まれた皿を持ち上げる

ヒノミが指を鳴らすと、机の上にオレンジ色の布が敷かれ…灯莉が皿をテーブルの端に置く



「いいんちょー? そこに置いたら食べられないよ?」


「ふふ…大丈夫ですよまやさん」



トタトタと静かな足音が近づいてくる

その音の方を見ると、刹那が大きな皿を持って近づいてきている



「…あれはー」


「秘密ですよ」


「ししょー気になるのです!」


「そうか黙っておけ……あと師匠じゃねえ」



刹那がテーブルにやってきて、その真ん中に皿を置く



「ということで、ハッピーハロウィーン!!」



皿の上の大きな被せ物を取りながら刹那が大きく声を上げた


全員の視線が皿の上に集まる


そこには…


オレンジ色クリームのショートケーキが1ホール乗っていた



「え? 委員長これ作ったの?」



夢宗が灯莉の方を驚いたように見て、問いかける

灯莉は小さく頷くと、刹那からケーキをカットする用のナイフを受け取り、切ってゆく



「12等分ですと…小さくなりそうですね」


「一つのあまりは誰が貰うんだろか…」



ヒノミが指を鳴らすと全員の前に皿が現れ…切り終わったケーキが配られてゆく

思ったよりは小さくないそれを配り終え



「いいんちょー食べていい☆」


「はい、どうぞ」



灯莉のその言葉で全員がケーキを食べ始める



「すごく美味しいのです!」


「これ何味だ?」


「本当はカボチャ味のクリームにしようと思ったのですが…カボチャはなかったので、それっぽい実を混ぜ込んだクリームです」


「美味しいわね…これ一回で?」


「いえ、刹那さんとヒノミさんに何度も試食してもらいました」


「だからまぁ…うん、僕はケーキはもう少し少なくても良かったかなぁ…」


「ワタシもじゃ…」



少しげっそりとした表情の2人を見た灯莉がてへっと舌を出す

その後、黙々と全員がケーキを食べていたが



「ししょー! 食べさせてほしいのです!」



その言葉で再びリビングは騒がしくなった



「は? 何言ってんのお前」


「私はもう食べ終わっちゃったのです。なのでししょーが残すなら貰おうと思ったのです」


「ほれ」



逸人が自分の皿をリーミナの前に置く



「食べさせてほしいって言ったのですぅ!」


「うるせぇ自分で食え!」



結局リーミナは自分で食べていた

不満そうな表情をしていたが、ケーキを一口食べればそれも緩んでいつもの笑顔に戻った

逸人はその横で“はぁ…”とため息を吐いている



「メルティアさん。いりますか?」


「いいんですかー?」


「僕はもう…はい」


「ではもらいに行きますねー」



もういいやと言った顔をした刹那がメルティアにケーキの譲渡の話をすると、彼女は空いている刹那の隣に座り、持ってきた自身のフォークでケーキを横から食べ出した



「…持っていっていいんですけど」


「もう来ちゃいましたから」



この2組がほのぼの…ほのぼのしたやり取りをしている一方で



「はい私のものー」


「ちょっと、茉里!」



余った一切れのケーキをめぐり、火種が生まれ…



「早い者勝ちだぜ、玲ちゃん?」


「取り返してやるわ」



戦いが始まった


ケーキを自分の皿にとった茉里とそれが欲しかった玲

彼女たちに半分こなんて甘い考え…甘い考え? はない


皿を取ろうとした玲から遠ざけるように自分の皿を左手に持ち、ニヤリと笑った茉里が見せつけるようにケーキを一口食べる



「あ、アンタ…ってやつは!!」



瞬間、刹那がメルティアを抱え、テーブルから離れた

もちろんメルティアが食べていた刹那のケーキも持って


理由はもちろん退避

刹那とメルティアの座る反対側で、玲と茉里の喧嘩が始まったからである


そして、茉里の左隣にいた灯莉はマカロンを持って退避

玲の右隣にいた夢宗は危険を感じた舞風により首根っこを掴まれて退避…退避? した



直後、テーブルが跳ねた



「あっ!?」



リーミナの食べていたケーキの乗る皿が空を飛ぶ

逸人がそれをキャッチして、テーブルから離れる

それを追ってリーミナも退避

ちなみに、他に置いてこられた皿などの食器はヒノミが転移で回収している


湊は舞風が退避した時点で、退避していた


ちなみに、ヒノミは大笑いしながら玲と茉里の喧嘩を見ている



「もうあの人酔っ払いと変わらんな」


「イベントに酔ってるんじゃね?」


「なるほど☆」


「おいそこ! ワタシのことをなんだと思っとるんじゃ!」


「変な人」


「即答するでない!」



茉里が玲の手を避け、ついにテーブルの上に乗る

それを追って玲もテーブルに登り…テーブルの上での取り合いが始まった



「…言ってくれれば作るんですけどね」


「ワタシよりあやつらの方がイベントに酔っとるじゃろうな」



灯莉が呆れたようにマカロンの皿を持ちながらそういうと、何か含みのある言い方で夢宗の方を見ながら、ヒノミが言う



「…いや、あなたも大概でしょ」



いつもよりテンションの高いヒノミを見ながら夢宗がボソッと呟くと、ヒノミが夢宗を睨んだ

夢宗は目を逸らした



「はい、お姫様…ケーキです」


「ふふ、その格好ですと似合いませんねー」


「ですよね」



テーブルの上の戦闘を全力で見ないふりしている刹那とメルティアは小さな机に移動していた


そして、大きなテーブルの方は…



「よこしなさいって!」


「私のだから無理ー」


「ガキっぽいのよアンタ!」


「そりゃまだガキだからね!」


「むっかつく!」



喧嘩のレベルが低い

玲が茉里に蹴りを放つと見せかけ、皿に手を伸ばす

茉里は蹴りを避けようとして、皿を動かし…


奇跡的な状況により、ケーキを乗せた皿が空中へと飛び出した



「「あっ」」



玲と茉里の声が被る

それを取ろうとした2人の腕が接触し、皿を受け取れずに別の方向へ弾き飛ばしてしまう



「「ちょっ」」



回転がかかったようで…皿がゆっくりと回っている



退避していたメンツは遠く届かない

玲も茉里も届かない

皿が下を向き…ケーキから地面へと…落ちかけ…


姿を消した



現れたのはヒノミの手の上である



「「ほっ」」



2人が良かったと息を吐き…



「どうしておぬしらは分けると言うことができんのじゃ」



いつもの説教が始まった

喧嘩中は大笑いするヒノミだが、終わるといつもこうである



「それは茉里が」


「玲が…」


「問答無用じゃあ! 一旦空の旅に行ってくるとよい!」



2人の姿が消えた

おそらく、超上空に飛ばされたのだろう

これが当たり前になるくらいには…彼らはこの家で暮らしている


そう、この世界に来てから約5ヶ月ほどだ





2024ハロウィーン特別小話 『パラレル世界の彼らのハロウィーン』 end

今までの刹那たちのまま、時間が経ってハロウィーンになったパラレル世界のハロウィーンイベントいかがでした?

つまり、本編と違う流れを辿った後のハロウィーンです


いつか本編のハロウィーンが出る…と思いたいですね

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