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導きのない新天地  作者: 風雷 刹那
第2章 セーミニの街
12/20

騒乱の1日-1日の始まり-

時系列:クローア生活12日目

3分の 1

ちょっと書きすぎました

これ含め12個分の小話ののちに、本格的にストーリーが進みます




「…ふわぁあ……なんか、地球にいた時と違ってきちんと起きれる様になったなぁ」



刹那があくびをしつつ、自室の扉を閉め、リビングへと歩き始めながらそう呟けば…



「…いやもう9時じゃぞ」


「……聞かなかったことには?」


「…できんな」


「…ふぅ……こうなったら、ここでヒノミさんを亡き者にするしか…!」


「おぬし、実はまだ頭寝とるじゃろ!?」



朝9時、ヒノミとのじゃれあいからその日は始まった



「あ、委員長また料理してんのー?」


「刹那さん、はい…料理が楽しくてですね…」



少し照れるかのように灯莉が肯定する



「…いやワタシの家の食事保管室が、アカリの料理で埋まりそうなんじゃが」


「えっ…あの食べ物の時間を止めるって部屋が!? あんなに広かったのに!? あんなに棚もあったのに!?」


「え、えへへ」


「なんかこの家で見るたびに料理してるなーとは思ってけど…そこまでなの!?」


「…そうじゃぞ、だから最近の食事はずっとあそこの料理を消費しておる」


「同じものを大量に作ってるわけじゃないから、飽きにくく消費もちゃんとできるから悪くないと」


「…ワタシが料理する必要なくなってしもうたのじゃが」


「もう委員長は屋台でも出したらいいんじゃないかな…」


「え…へへへ…あ、そうだ刹那さん、そろそろその委員長って呼び方やめませんか?」


「んー……食事保管庫の料理がなくなったら考えるよ」


「じゃあ一生変わらないじゃないですか!」


「一生無くす気がないんですね!?」


「料理中毒にでもなっとるんかおぬし!?」



と、色々ありつつも食事保管庫から料理を取ってきて、朝食を取る



「うん、美味しい」


「それは良かったです」


「本来その役割ワタシのはずなんじゃがのう…」



ヒノミが灯莉をジト目で見るが、灯莉は刹那に返答したのちすぐに料理に戻ってそちらに集中しているため気づいていない



「さて、セツナ…おぬし今日は何をするのじゃ?」


「そーですねー…あ、メルティアさんと依頼に行くんだった」


「ほぉ…また知り合いが増えたのかの?」


「はい」


「…ここを第二の故郷にでもしようとしとるのか?」


「…んー、そんなことはないんですけどね」



雑談をしながら、この日の予定を話してゆく



「そうじゃそうじゃ、ほれ、お主に渡し忘れておった金じゃ」



小さな袋をヒノミが刹那に投げる

それを刹那がしっかりキャッチして



「まだご飯食べてるんですから、やめてくださいよ…これどれくらい入ってます?」


「んー1000エルじゃ」


「お金と貨幣の関係を覚えるべきってことかぁ…」


「そうじゃな」


「まずこの小さくて薄い未完成の魔法陣が書かれてるのが1エル?」


「そうじゃ、1エル銅貨、小銅貨とも呼ばれとるな」



1円玉ほどの大きさの銅貨である、1円玉同様によく行方不明になると言う話がある



「で、これを5枚重ねると形が変形して、中銅貨になるんだよね?」



刹那が袋から小銅貨を取り出しながらそう言う

小銅貨が5枚合わさって少し大きな銅貨に変わるのである

サイズとしては10円玉ほどである…重さが5枚分も感じられないので質量保存の法則には反していると思われる



「そうじゃ、過去の天才が生み出した異次元の貨幣じゃぞ」


「で、小銅貨を10枚または中銅貨を2枚で、大銅貨だね」


「うむ、10エルじゃ」



大銅貨は楕円型で短半径が500円ほどで、長半径はその1.5倍ほどである

そんな大銅貨を5枚重ねると、真銅貨と呼ばれるものに変わるのだが…大銅貨と違う点は完全に魔法陣が貨幣全体を覆っている点である

そして、大銅貨を10枚、または真銅貨を2枚重ねると王銅貨と呼ばれる貨幣を覆う魔法陣が白く発光する銅貨に変わる、ちなみに大銅貨とサイズは同じで、重さも一緒である

質量保存の法則はどこに行ったのだろうか



「と、これと同じように銀貨も金貨もその上もなっておるわけじゃ」


「単位としてはいくらまでだろ」


「小銀貨が500エルからじゃから…」


「中が1000、大が5000、真が10000、王が50000、小金貨が100000、中が50万、大が100万、真が500万、王が1000万」


「…あれ? その上もあるってさっき言いました? 聞いたことがないんですけど……」



灯莉が調理場からリビングへとやってきて、そうヒノミへ問うと



「あぁ、存在するのじゃ…黒貨と白貨じゃな」


「そんなにいる?」


「正直いらんとは思うのう…使うとしても黒貨までじゃ」


「黒貨ですと…小は5000万、中が1億、大が5億、真が10億、王が50億…白貨なんて使わなくないですか…?」


「そうじゃのう、白貨はクローアに数枚しか存在しておらんしの」


「なぜ存在してるんですか…」


「いや、とある大国が黒貨を大量に置いておくのが大変だと言うからできた貨幣だからじゃ」


「…あぁそういうことですか」


「そうじゃ、おそらく見ることはないじゃろうな……と、ところでセツナよ…朝食は食べんのか?」


「忘れてた!」



急いで刹那は朝食を食べ終わり…訓練場に向かう

なぜかついてきたヒノミを連れて



「さて、セツナよ…模擬戦するかの?」


「…えー、魔法ありなら」


「良いぞ」


「よし言質とった!」


「ちょっと待ておぬし」


「じゃあ、ヒノミさんは魔法無しで!」


「こやつやりおった!」


「さーって、設定完了!」



刹那が虚空に手を伸ばせば、透明な氷でできた大きな片刃斧が現れる



「ほぉ、無詠唱に簡略化と効率化までされておるか…」


「まぁ、これは僕の力じゃないんですけどね」



斧を構え、目の前のヒノミをしっかりと視界にとらえる

ヒノミが虚空に手をかざす

水面に雫が落ちたかのように空間が揺れ…その手に刀が握られた



「ふぅ…」


「……」



2人は静かに相手を見る


カァァアアン!


と大きな音がなり、戦いの始まりを知らせた



「はぁあ!」



地を蹴って、空へ跳び、大斧の重量に身を任せ、縦に一回大きく回り…瞳を閉じたヒノミへと斧を振り下ろす



「孤流——‘(リン)’」


「ッ! “紅色散花(べにいろさんか)”」



ヒノミが目を開き、刀を抜いた

嫌な予感に従い、刹那が魔法を発動させる


刀が弧を描いて、刹那へ迫る

氷の斧が、殻が剥がれ落ちるようにして…氷が一層分剥がれれるように落ちてゆき、紅色の斧へと変化する

まるで一つの氷からノミで削り出したかのような見た目の紅色の斧と刀が接触し、爆発を起こした



「…くぅ…あっぶなぁ…」


「…面白い魔法を思いつくものじゃのう」


「それはどーも!」



瞬く間に作り出した氷のナイフを2本投げ、少し短い氷の直剣を作り出した刹那がヒノミへと再接近する



「手を変え、品を変え…か…」



氷のナイフを斬り落としながらヒノミがそう呟き



「飛べ! “流翔の炎剣(キリサクホノオ)”」


「む」



炎の剣が5本現れ、ヒノミに向かって飛んでゆく



「ぬるい!」


「ですよね!」



刀の一振りで5本が消え去り、氷の直剣と刀が対峙する

3度打ち合うと直剣が切断され、刀が刹那に迫るが



「“闇夜は真実を隠す”」


「…その才能に喜ぶべきか、怒るべきかわからんのう! 孤流——‘(ミョウ)’」



周りが暗転し、刹那が暗闇に溶け消える

が、ヒノミは振り抜いた刀を戻すことなく、捉えている刹那の気配へと蹴りを放つ



「ッ! “狐火(きつねび)”! ぐっう…」



暗転が終わり、火がヒノミへと飛ぶも、それも蹴りがかき消して、刹那に当たる



「‘(カイ)’」


「ぐ」


「‘(レキ)’」


「ふ、ぐうぅ……」


「‘(ネイ)’」


「…“ガァァァァァアアアア!!”」



戦技を連結させこちらに行動させまいとするヒノミを止めようと複数の魔法で強化された刹那の咆哮が訓練場に響き渡る



「‘(ソウ)’ッ!? ぐ…ここで中断されるか」


「流れて穿て“水戈突(ミズウガチ)”」



咆哮により戦技の連結を止められたヒノミに水が襲いかかる



「ぬぅ…がぼ…」



水が勢いを持ってヒノミを弾いたのち、その体を拘束するように包み込み、地面に立った刹那がそれに向かって氷の槍を投げ



「起点をもって凍てつけ…! “氷気活性(ひょうきかっせい)”」



水へと突き刺さった槍先が起点となり、水が完全に凍りついた



「ふぅ…」



周りが光り、刹那とヒノミが模擬戦前の状態に戻った



「…ま、負けた…ワタシが負けた?」


「あっ…」



刹那は嫌な予感を感じた



「もう一戦、もう一戦じゃ! ワタシは負けてなどいないのじゃ!!」


「いやです! ほら時間見てくださいよ10時30分ですよもう」


「だからなんじゃ」


「あれ? 言ってませんでしたっけ、僕、色々あって出会った人と依頼に行くんですよ」


「それは聞いたのう…名は…なんじゃったか…」


「メルティアさんですね」


「…メルティア、メル、ティア……ふぅむ…まぁ良いじゃろう」


「お昼前に集合ですけど、早めに行けるなら早めに行って街を見て周りたいんですよねぇ」


「…ふむ、そうじゃな…おぬしが良いと思ったのなら…そやつをこの家に連れてくると良い」


「…え、どういうことですか?」


「別に…どうということもないのじゃ」


「…そう、ですか?」



ヒノミの反応に疑問を感じつつも刹那は訓練所から自室に移動し、準備を整えるとセーミニの街へと向かっていった



「…接触にしては早すぎる、見えるというわけではあるまい…そうであれば()()が報告してくるじゃろうし…………ふむ…警戒するに越したことはない、が……疲れるものじゃのぅ…」



その背を見ていたヒノミが屋上でため息と共にそう言葉を漏らした














「お願いしまーす」


「わかりま…あ、あの時のうさぎの子!」


「…いや僕うさぎじゃないです」


「違う違う、メルティアちゃんと一緒にうさぎ連れてきた子でしょ?」


「あ、はい…ってあなたは」



ちょうどメルティアと共にうさぎを抱えて連れてきた時の門番の女性であった



「そうだ、自己紹介してなかったね…私はレウネ、気軽にレウ姉って呼んでね!」


「…は、はぁ」


「じゃあ後ろ詰まっちゃうからまったねー!」



刹那は強引に街へと入れられた



「え、えぇぇ…」



困惑しながらも、とりあえず西の大通りを進んでゆく

あいも変わらず騒がしいが、自分たちのことで盛り上がっているという話は聞いているため…いつかはこの騒がしさも無くなるのかと思うと少し寂しく感じた



「あ、そこの白い獣人さん寄っていきません?」


「ん?」



急に呼びかけられたため、足を止める

声の方を見ると…露店を開いている女性商人がいた

そこに並んでいる商品は、アクセサリーから武器や食料品、さらには野宿用のアイテムまで存在していた



「…え、なんの店なんですかこれ」


「そこ聞いちゃいますか…ならば語らせていただきましょう、私は、ある時は古物を、またあるときは装飾品を、またまたあるときは食料品を、そのように全ての品を扱う商人、ラウにございます」


「おおー…なんかそれっぽい」


「…お客さん? それどういう意味ですか?」


「んん、なんで僕を呼んだんですか?」


「いやいや、白い獣人さんなんて珍しいじゃないですか、なのでお金を持っていたりしないかなーと思いまして」


「うわー…清々しいなぁ…けど残念、僕は今1000エルしか持ってないんだよね」


「なるほどなるほど、でもレーダルやってらっしゃいますよね? ならば探究証を使って口座からお金を使えるはずですよ?」


「チッ、流石は商人、金に汚い」


「ちょぉっとぉ! それは商人に対する名誉毀損ですよ名誉毀損!」


「じゃあ…何がありますか?」


「一瞬見せた悪い顔忘れてませんからね? っと、そうですね、こちらのネックレスなどいかがでしょうか?」


「明らかに女性用ですが?」


「あら? お客さんお相手がいらっしゃらないので?」


「2度とこんわこんな場所」



イラッと来たので、露店を去ろうとすると…



「ああー! ちょっっっと、待ってくださいほら、こちらのかっこいいブレスレットとかどうでしょう!」


「……はぁ…いらないかなぁ」


「…くっ、もしやお客さん無駄遣いがお嫌いなタイプですか!?」


「いや違うけど…」


「なら、なぜ買ってくれないのですか…!」


「いや、せめて僕が欲しいと思うようなものを出してからそのセリフは言ってよ」


「…くっ、ならばこんなものはいかがでしょう、遙か昔、神代の遺物…の特殊魔術具です」


「…!? 魔術…? 魔法じゃなく?」


「えぇ、あの時代は神法以外の全ては『術』でした、神の術が法でありましたのでね」


「…つまり、今は魔術が…法則? で、魔法なのか」


「えぇ……あ、これ言っていいことでしたっけ…」


「まさか、一般に知られてる情報じゃないの?」


「そ、そんなこともありますね…というわけで口止めということも含めて買ってくれませんか?」


「いくら?」


「すでに、神の法は離れ、魔の法が主になっているので………8000エルでいかがでしょう?」



商人の女が出したその古代の、神代の魔術具なるものを刹那が視界に入れる



「…何を探ろうとした? まぁわかってはいるんだが」


「……ッ」



刹那の赤い左目が蒼く輝き、魔術具をじっくりと見る

その口から出てくる言葉は彼の口調とは少し違っていた



「はぁ、おいお前…あまり()()()に構うなと上に言っておけ! それの記憶は()が消してやる」


「えぇ、そうします」


「出てきたのが俺で良かったな、柊であればお前は結晶塊になっていたぞ」


「感謝します、が、このあと彼はどのようになるのですか?」


「あぁ、倒れるな…まぁこの段階で俺を降ろせるわけがないからな…半刻は起きないだろうから、どうにかしてくれ」


「わかりました」


「どーせ、ここまで想定されてんだろうけどな」



そう言って、()()は倒れた



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