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導きのない新天地  作者: 風雷 刹那
第1章 異世界『クローア』
1/20

彼らの日常と非日常の始まり

みなさまお久しぶりです

1話、2話は10000文字を超えています

あ、初めましての人は初めまして風雷刹那です

前の作品の大改稿は…まだ途中なんですけど…新しいシリーズを始めております

実はこの作品も大改稿、2回目だったりします

前までは非公開で書いてました


作中時間 1日目(2023年10月13日金曜日)→変更(2023年5月19日金曜日)


“カッカッ”


“シャッシャ”


静かな部屋にペンが紙上を走る音だけが響く


“はぁ”


と誰が息を吐き


“ジジ”


と何かノイズのような音がして


“キーンコーンカーンコーーン”


と学生を喜びにも絶望にも誘う音が響いた



「テストは終了です! 自分のものを上に乗せるようにして、後ろから前に解答用紙を回してください」



ガサガサと紙が音を立て、前へ前へと集められてゆく

集まった紙を女性が右側の列から回収してゆく



「……24.26.28…はい、確認できました。今日の終礼はありません、お疲れ様」



彼女がそういうとバタバタと数名が我先にと教室から出て行った

他の生徒もバタバタと支度をしている



刹那(せつな)一緒に帰ろーぜ」



周りと同じようにバタバタと鞄に物を詰めていた白髪赤目の少年——風雷(ふうらい) 刹那は金髪のクラスメイトに話しかけられる



清人(きよと)…ごめん、ちょうど今日は「私と先約があるんだよ」…言い方に問題ありだよ? 茉里(まり)



刹那の発言に黄色に白のメッシュの入った長髪の少女——伊春(いはる) 茉里が言葉を重ねてくる



「ふふふ、いーじゃんか、私達の仲じゃん?」


「…ボードゲーム同好会か」


「あーらら、バレちゃった」


「ってことで、清人たちとは帰れない、ごめんねー」


「じゃ、また今度なー」


「…切り替えが早いなぁ」



去っていく男子を見て、思ったことをそのまま口に出しつつ…手だけは動かす



「にしても、刹那遅くない? 私はもう鞄の準備できてるんだけど…」


「そりゃあ、君と違って教材持ってきてるからね」


「…それを言われると痛い、けど持ってきてはいるんだぞ?」


「じゃあちゃんと勉強しなよ…先生心配してたよ?」


「うるさい…行くぞ」


「りょーかい」



残った数人で少し騒がしくなった教室を2人で出て、2人の所属するボードゲーム同好会の部室へ向かう



「先輩たちは明日もテストがあるなんて大変だよな」


「来年には僕たちもそうなるよ」


「そうだなぁ」


「何の話をしてるんですか?」


「お、委員長」

「あ、委員長」


「…私、やっぱりそう呼ばれるんですね」



委員長と2人に呼ばれた薄紫の長髪に青い目をした少女——水戸(みと) 灯莉(あかり)が不思議そうにそう呟く



「今日予定空いてる?」


「…ええ、空いてますが」


「よっし! 1人確保!」


「落ち着いて茉里、まだ何も伝えてない」



茉里の質問に反射的に答えた灯莉がそれに疑問を抱くよりも早く話は進んでゆく



「ってことで、委員長もボドゲ同好会にごあんなーい」


「えぇぇ!?」



茉里が灯莉の腕を掴んで、廊下を走る

刹那を置いて、彼女たちはどんどんと先へ進んでいった



「茉里さん、廊下を走っては…」


「わかってるわかってる〜」


「…聞いてませんねこれ」



一方その頃置いて行かれた刹那は



「お、刹那…こんなとこで何してんの?」


「お前と同じだよ夢宗(むそう)、部室を目指してるんだよ」



廊下を1人とぼとぼと歩く刹那に、白髪黒目の少年——天青(あまあお) 夢宗が話しかける



「なんか茉里の声しなかった?」


「茉里は委員長捕まえて、1人増えたって喜んでたよ」


「あぁ…」


「またあの子やりたい放題してるのね…」


「あ、(れい)



黒髪に赤のメッシュで黒目の少女——宮翔(みやかけ) 玲が夢宗の後ろから現れる



「…茉里は…もう少し成長してほしいとは思うわね」


「楽しくていいじゃんか」


「あなたほど能天気には考えられないわよ」


「なるほど幼馴染みだもんねぇ」


「いや、刹那がテキトーすぎるんだよ」



そんなふうに話をしながらゆっくりと歩いて部室へ向かう

真っ直ぐ続く廊下の突き当たりまで行き、左へ曲がる

すると、扉の開いた騒がしい部屋が一つ目に入る

わーわーぎゃーぎゃーとまるで幼稚園のような騒がしさの部屋から聞こえてくる声は…



「ほんとに盗んで来てないんだよな?」


「うん、ほんとだよ☆ まやたん嘘つかない」


「…でも茶道部の衣装って買えたかなぁ?」


「茉里さん、そこまで盗みを疑うことありますか?」


「こいつならやりかねないから…」


「なんで!?」



聞き覚えのある声だ



「…入りたくないなぁ」


「わかる」


「はぁ…行くわよ」


「「はぁい」」


「やる気のない返事ね」



玲に急かされ、刹那と夢宗は顔を合わせてニヤリと笑うと…少し開いただけの扉をバンッと大きく開いて



「我らが玲様の」


「ご登場!!」



仰々しく、そしてわざとらしく演技した



「…はぁぁ…アンタたちがふざけようとするのはわかってたわ」


「バレてた?」


「何年の付き合いだと思ってるのよ」


「1ヶ月かな」


「…プラス3年ね」


「そんだけ僕らが馬鹿やってきたってことだね」


「ずるい! まやたんもやりたい!」


「…薄々、こうなるのもわかってたわよ」



自らをまやたんと呼ぶ、和装をした桃色の髪に桃色の目の少女——舞風(まいかぜ) まやが刹那と夢宗に先ほどの演技を自らもやりたいと話す

そんなまやを見た刹那は問う



「…その服どっから盗んできたんだ?」


「だーかーら! 盗んでないんだって! まやたんが自費で買ったの!」


「だよなぁ盗んできたと思うよなぁ…」


「なんでよ!?」



酷い、と嘆く桃色の少女だが…誰もそれに優しくしようとはしない

まやが少女ではなく少年だから…ということもあるが、そもそもまやが信頼されていないからである



「今日はテストだったろ? 何でそれ着てるんだ?」


「ふふん、聞いて驚きたまえ! ちゃんとまやたんは制服から着替えたのだ!」


「…何がしたいんだお前」


「まやたん可愛いってみんなに言ってもらいたい!」


「素直」


「…欲しかないのかお前」


「逆に清々しいまであるわね」


「まやさん…って感じですね」


「新入生とか編入生しか言ってくれないだろそれ」


「…むー、まやたん可愛いのにー」


「自分で言うな」



いつも通りに部室が騒がしくなってきた



「ってか、茶道部に入ってないのにそれ買っていいのか?」


「まやたん茶道習ってたから! 抹茶点てられるから!」


「そこじゃないでしょ」


「…一応茶道部に名前だけ置いてるし」


「なんで???」


「…前に女の子と話してて抹茶点てられるって話したら、名前だけでいいから置かせて欲しいって言われて」


「…で?」


「それで融通してもらったの、その子も可愛いものが好きみたいだから」


「…お前のクラスの茶道部っていうと、由梨音(ゆりね)さんか」


「そーそーそんな名前☆」


「名前覚えてあげて?」



そんなやりとりをしていると、廊下からふたつの声が近づいてきた



「だから人間には限界があるんだっつーの」


「頑張ればできるだろ」


「お前のその信用は何なんだ」


「頑張れば何でもできるんだよ」


「できねーよ!」



その声がだんだん近づいてきて、部室の扉の前で止まった



「お、全員いるな」


「…1人多いと思うが?」


「誤差だよ誤差」


「ハタさん、逸人(はやと)やっとか」



ハタさんこと、焦茶色の髪に茶色の目の少年——簱矢(はたや) (みなと)

白髪に青い目のだるそうな少年——戈室(かむろ) 逸人が現れた



「やっとだよやっと、あの教師、終礼長いんだよ」


「それは俺も同意」


「さて、全員プラス 1集まったことだし、準備するか」



刹那がそう言いながら立ち上がり、部室の大きな棚から大きな箱を取り出して、部室中央の大きな机の上に乗せた



「今日は何をするんですか?」


「人生ゲーム-アルティメットライフ-だね」


「…すごそう…ですね?」


「うん、結構すごいんだよこれ」


「刹那ー早く準備してー」


「そーだそーだ」


「お前らも準備手伝えよ」



部室入り口付近の机付きの椅子に座り、早く準備をしろと言う、まやと茉里に刹那が手伝えと言うも聞く気はないようで動こうとしない



「私手伝いますよ」


「委員長は今回客だから座ってて」


「刹那、シート敷けたぞ」


「お金も準備できたわ」



これをやるのは2回目だったのでだいぶ手際よく準備ができた

そうして始まるのは自分のピンを乗せる車の争奪戦である



「金色の車もらうか」


「あっ、私も使いたかったのに!」


「茉里はサボってたからな」


「じゃあ私は白い車もらうわね」


「んー俺は、青色にするよ」


「俺はシンプルに黒でいいか」


「私はピンクにしますね」


「まやたんもピンク使いたかったのに!」


「じゃあサボるな」


「…むーじゃあ赤でいいもん」


「銀、銀色はないのか?」


「…あるよ」


「じゃあそれで!!」


「…はぁ僕は」



刹那は残ったいくつかの車を見て、サッとその中の一つを手に取る



「この薄茶色にしよう」



直感に導かれて、この色にした

すでに刹那以外の全員が大きな机の周りに集まっている



「始めるわよ」


「誰から行く?」


「まやたんから☆」


「はぁ、いいよ」


「じゃあ、まやから時計回りだな」



つまり、まや→刹那→茉里→玲→逸人→夢宗→湊→灯莉…と言う順になる

全員の前には2000円の配布金がある



「まずは小学生コース! ……ぐへへ」


「自分の言葉だけで興奮すんなロリコン」


「ち、違うもん☆」


「早く回しなさいよ」



まやがルーレットを回す

“カラカラ”と言う音と共にくるくるとルーレットの中央が回り、ゆっくりと力を失って……止まる



「…4! えーっと…?」



まやが人を現す白いピンのついた赤い車をスタート地点から4マス進める

そのマスに書いてあるのは…



「親のPCをいじり、ワンクリック詐欺を踏んでしまった…ルーレットで引っかかったか、引っかからないかを抽選 1〜7引っかかる 8〜10引っかからない 引っかかった場合所持金を全て失い、お小遣いもなくなり、一回休み、今後詐欺に引っかからない数字が表示より2個増える」


「……さぁ、まや…回そう…ルーレットを! 回そう!」


「か、確率が高すぎるよ☆」


「引っかかれ引っかかれ」


「ええい! もうどうにでもなれ☆」



“カラカラ”と音が響く

ルーレットが回り、ゆっくりと減速していき……



「5! んにゃぁああああ!!」


「ふふふっ、はい全額没収ね」


「…小学生ゾーンなのにいきなりやばいの来てるな」


「前やったシートに比べて、こっちのシートまずいんじゃない?」


「それでも僕は行くぞ…7、7…」



刹那が7マス目の『お年玉をもらう』を見て、それが出るように祈りながらルーレットを回す


“カラカラ”と音を立ててルーレットが回り…



「…2、2ってなんだ」


「…家のものを壊した、叱られて500円払った、お小遣いなし」


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」


「500円持って行くわね」


「どうして…」


「初動でいきなり2人マイナスかよ」


「はははっ! 今度は私だな、ほいっ」



茉里が前の2人を笑いながら回したルーレットが刺した数字は



「6、親にお小遣いの交渉をした、1〜5 お小遣いが2倍もらえる 6〜10お小遣いなし……交渉失敗するとなくなるのか…」


「貴様もこちらに来い…」


「いいや、私はお小遣いを増やしてみせる!」



“カラカラ”とルーレットが回る

速度が落ちてゆき、10..1..2...3....4......5....…止まった



「5だ! お小遣い倍!」



そう言って彼女はルーレットを回す

お小遣いの金額はルーレットを回すことで決まる


ルーレットが指す数字は



1だ



「…100円…」



そう100円である

お小遣い100円だ

2倍しても200円である



「どおしてぇぇええええ!!」



まや、刹那に続いて、茉里もダウンした



「ふふっ、200円どうぞ」



銀行役をしている玲はとても楽しそうである

そんな銀行役の玲の番である



「私は…そうね、マイナスにならなければいいわね」


「なれー」


「まいなすにー」


「なれー」



玲の後ろに、3人ほど悪霊がいる



「それっ」



“カラカラカラ”と音を立て、ルーレットが回る

そろそろ大きなプラスが出てもいい頃だと…悪霊3人組以外の全員が思っている



「……7! 来た、さっすが私ね」


「なになに、お小遣いの10倍もらえるのか…へー…」


「え、私の上位互換じゃない?」


「ふふっ、いいわ、10を引いてみせるわよ!」


「いーち、いーち」


「1出ても相当プラスだぞあいつ」


「これまでが酷すぎただけでは?」



ルーレットが回る

茉里の恨みと玲の祈りを乗せて


3.4.5..6…7….8…..9……10….


1に行く寸前で止まった



「来たっ! 10000円獲得ね!」


「この世界は不条理だぁあああああああ!!」


「まやたん持ち金ゼロなのに!!」


「悪いわね、私ばっかり得しちゃって」


「ムカつくぅ!!」


「玲さん…運良すぎじゃありません?」


「ふふ、お小遣いは無いから逸人回していいわよ」


「おう…せめて俺もプラスがいいな」



逸人が小さく呟きながら、ルーレットを回す



「8 部屋の掃除を褒められた、500円もらった…悪くないな」


「私のお小遣いより多い!!」


「はっ、お小遣いは…」



ルーレットは5を指した



「500円ね、はい、合計1000円よ」


「悪くないんじゃねえか?」


「…彼らに比べたら悪くないんじゃないですか…?」


「あいつらと比べたら大体良いだろ」


「今度は俺だな」



夢宗がルーレットを回す

刺された数字は…1だ



「え、 1? えーっと、親戚のおじさんが面白い話をしてくれた…やる気が出てルーレットをもう一回回して進む…おぉ、悪くない…」


「くっそマイナスいけよ」


「こいっ! プラスぅ!!」



ルーレットが“カラカラ”と音を立てる

幾度も聴いたその音は、何度聞いても緊張させる



「1と3以外1と3以外1と3以外」



ルーレットは10を指して止まった



「あれ、小学生ゾーン出ちゃいましたね」


「中学生ゾーンの最初は…新生活に思いを馳せて、おしゃれを始めた1000円払う……この野郎…あ、でもお小遣いが5倍になるんだった」


「マイナスだぁ!! え、お小遣い5倍!?」



夢宗がルーレットを回すと、6が出た



「1000円取ってから…3000円ね」


「2000円プラスか、玲と比べると微妙だなぁ」


「ふふん、次は俺だな、とりあえず1番の金持ちになりたいな」


「車だけを見る限りだと成金っぽいよね」


「うるさいぞ」



湊がルーレットを回す

“パチッ”と音がして8に止まった



「逸人と一緒か」


「あ、追突ってなかったっけ?」


「あるよ、社会人ゾーンから」


「今はないのか良かった、で、お小遣いは……4か…つまり400円、微妙だな」


「合計900円なんだし、あそこの3人よりはマシじゃない」


「最下位と比べてもなぁ」


「ちょっと待て最下位って何だこの野郎!」


「刹那! 一番怒りたいのはまやたんだよ!!」


「いや、私だろ! 私は一応プラスなんだぞ! こいつらと一緒にするな!」


「うるさい200円!」


「何だマイナス500円」


「プラスが怒りに出てこないで! まやたんは持ち金全部持っていかれたんだから!!」


「…あ、えっと、その、私回しますね?」



まや、刹那、茉里の最下位組がわーわーぎゃーぎゃー騒いでいる中、遠慮気味に灯莉がルーレットを回す

“カラカラ”という音があまりの騒がしさにかき消されつつも、ルーレットが回り、速度が遅くなって…



「……10ですか、えーと、気持ちを新たに勉強に励み、テストでいい点を取った…1000円もらった…あら……お小遣いは……………ろく、600円ですね」


「灯莉アンタなかなかじゃない、まぁ私ほどじゃないけど…はい、1600円」


「あ、ありがとうございます」



これで全員一周したわけだが…



「次行くぞー」


「まやたん動けない!!」


「なはは! じゃあお先にこの地獄を抜けさせてもらうよー」



そう言いながら刹那が回したルーレットは7を指す



「…いち、に、さん、し、ご、ろく、なな…ここだね…えーっと? ガチャガチャにハマった、ルーレットで出た数だけ回す………一回につき300円、出た数だけガチャ景品を獲得する」


「なんでお前そんな運悪いんだよ」


「知るか…くっそ…1出ろ1出ろ」


「101010101010…」


「借金はいやだぁ!!」



ルーレットがゆっくりと減速してゆき…

5で止まる



「せ、1500円……今持ってる分全部マイナス…?」


「あっはっはっは! さっすが刹那!」


「ふふふっ、はい、これガチャ景品5個ね…1500円はもらって行くわね」


「うぁぁぁああああ…で、でも今回はお小遣いあるし…これでマイナスを少しくらいは…へってくれ、減ってくれぇ!!」



ルーレットを回し、目を瞑って両手を組み、刹那は祈った

“カラカラ”という音が次第にゆっくりになり…



「……5……500円ね…はいどうぞ」


「圧倒的マイナスだぁ!!」


「ふっ、ふふっ、わからないわよ、そのガチャ景品にプレミア価格がつくかもしれない、じゃない」


「笑うなァ!」


「あっはっはっは!!」


「やっと私か、今度こそ私はまともにプラスしてみせる」


「…回せ、マイナスしろ、借金しろ」


「うるさいぞ刹那、私はそんなことにはならないからな! …3…3かぁ…そっかぁ……」


「くふっ…またガチャ」


「貴様もガチャ沼に落ちろォ!!」


「嫌だァ!!」


「101010101010…」


「1111111…」


「…借金1人目はお前がなれっ!」



ガチャにハマった茉里がルーレットを回す

4.5..6..7..8..9…10…1…2…3….4….5…..6…..7…….8…..9……..



止まった


9だ



「2700円!? 嘘だっ! 500円も借金なのか!?」


「しゃーっきん、しゃーっきん」


「借金コールをするな!」


「まだお小遣いがあるよ☆」


「まやお前、お小遣いで1出るの願ってるだろ!?」


「うん☆」


「こなくそぉ!!」



茉里がヤケクソで回したルーレットは2を指した



「ふふ、茉里ちゃんいまどんな気持ち? さっきの200円が消えて今回のお小遣いも消えて、それどころか借金までできちゃったのどんな気持ち??」


「小学生が借金するのはおかしいだろうが!!」


「はい、2400円ぼっしゅーと借金の紙と300円、それからガチャ景品9個ね」


「ああああああああああああああああ」


「ねぇねぇ茉里…なかーま」


「うるさい! お前の方が金あるじゃないか!」


「はっはっは! さっきまで僕の方が少なくて見下してたのに…最下位になった気持ちはどーだい?」


「くそがぁぁぁぁぁぁああああ!!」


「まやたんよりも下がった気分はどーお?」


「コイツらウゼぇぇぇええええええ!!」



彼らは騒ぎながらゆっくりゆっくりと進み


ついに…



「ついに社会ゾーンか」


「長かったなぁ…」


「その前に職業シート行かなきゃね」


「職業100個用意してるのほんとイカれてると思うわ」


「ルーレットを2回、回して1回目が十の位、2回目が一の位になるからね…はい、まやから行こう」


「あれ、これ社会ゾーンに入った人からじゃないの?」


「1人でも社会ゾーンに入れそうならみんなやるのよ」


「確かに、そうだったな」


「えいっ! 1…と…………6…16は…アイドル! まやたんにピッタリだね☆」


「そうかなぁ…? 僕は……8と………1か……小説家…あぁ売れなくて破産しそうだなぁ」


「私は…とりあえず金が欲しいな…2……4……24…個人飲食店経営者……おい売れないと安定しないどころか…私いま、借金膨れ上がってるんだが?」


「次は私ね…まぁ私はそうね、お金をさらに増やしたいわ…6…8……投資家…いいわね、最高よ!」


「…投資家って職業か?? まぁいいか……4……3…ハッカー……なんかハッカーって前回見た限りホワイトイベントとブラックイベントあったよな?」


「俺は十の位が7に固定されてるから一回か…5……配信者……うーん、安定を知らなそう」


「次は俺だな、稼ぎたい…普通に稼ぎたい……9…2……パイロット、悪くないじゃん…それどころかいいのでは?」


「…最後に私…ですか…10……4……つまり4ですか、銀行員…一昔前なら安定と言われてましたね…今はよくわかりませんが」


「ってことで、夢宗早く社会ゾーン行ってくれ」


「行くぞー!! ………6! えーっと、大きな一歩を踏み出したこ



音が消えた

いや、刹那や夢宗たち全員が部室から消え去っていた

彼らが座っていた椅子や机、ボードゲームも同様に


彼らがいた場所には、半透明の大きな亀裂ができていた



『誰も……巻き込まれていなきゃいいけど…』



誰かの呟きが聞こえると共に、亀裂は静かに小さくなって…消えた




























とに喜びを抱いた、やる気が上がり職業の業績が上がり出した」


「配信者ってことは、人気が出たのかな」


「業績ゲージは2になったね…これで給料は…2000円から20000円か」


「しょぼい」


「回しまーす………5……10000円!! おいしい!」


「言うてじゃろ」


「…はい、10000円よ…って、あんたたちおかしいと思わない?」


「何が?」


「周りよ! 明らかに森じゃない!」



玲の言うとおり、彼らは今森の中にいた

先程まで部室の中だったと言うのに



「まぁ、現実逃避ってのも含めてボードゲーム続けてるし…」


「はぁぁ…でも、なんか見られてるような気がしていやね」


「…確かにそんな気がするな」



刹那の意見に、玲が何か見られているようだと伝える

それに逸人も同意した



「俺の勘は何も言ってないや」


「あの夢宗の直感が何も言ってないのか」


「じゃあ、移動しようか…確かに僕らは水も食べ物も何もない…ここでとどまってボードゲームをしててもねぇ?」


「偉そうに言ってるけど、お前とどまる気だったよな?」


「…で、どっちに行く? 夢宗」


「んーーーー…今向いてる方は嫌な予感がする…右は……うん、右もダメ…左……もダメ…後ろ…はもっと嫌な感じ……全部ダメそう」


「…一番問題なさそうなのは」


「左だね」


「…行こう」



全員で左へと歩みを進める



「…あんだけ一瞬で視界が切り替わったんだから異世界転移を疑っていいよね? ってことで、まや」


「なぁに?」


「ほい」


「何で木の枝?」


「僕らよりも戦えるでしょ?」


「確かに昔やってたけど…どうかは分からないよ?」


「出来る限りの援護はするさ、この石とかで」


「じゃあまやたんも…出来る限りはやるね☆」


「なら、私も木の枝を持ちます…薙刀なら経験がございますので」


「逸人は…あもういい感じの木持ってんのね」


「カバンに入れておいたハサミやら何やらが欲しくなる」



緊急事態でこそ彼らは輝く

こういう時にしか彼らはまともに協力することができないが学校でも緊急時の彼らは信頼されている、緊急時のみ



「机とか持ってくればよかったかなぁ…」


「あれめっちゃ頑丈だけどその分重いじゃん」


「まぁアレのために部費だーいぶ貯めたしねぇ…」


「いくら中高一貫高といえど2年も部費貯めたのはなんとも言い難いな」


「なんか前から嫌な予かッ「やぁあっ!!」…何だあれ」



夢宗が嫌な予感がすると告げる途中に前から飛びかかってきた何かを、まやが太い木の棒で殴り飛ばす



「刹那! 変なのいたよ!」


「お前が木の枝をぶち当てて気絶させたのまで見てたよ……なんだろう、トカゲっぽいけど…明らかに大きいよね」


「とにかく先を急いだ方がいいんじゃないかしら」


「そうだね」


「森の中を歩くのはいつぶりだろうか」


「修学旅行の時以来だね」


「懐かしいもんだな」


「右前ッ!」



夢宗が場所を告げる



「私が!」



灯莉が槍のような木の枝で飛びかかってきたトカゲのような何かを殴り、落とす



「まだ、足りてないな…はっ」



逸人が石を投げると、トカゲもどきの頭に突き刺さり、トカゲもどきはふらりと動きを止める



「まずいんじゃないこれ?」


「コモドオオトカゲとかその辺に近いサイズだよなぁ」


「…上から来るっ! 前に走ろう!!」


「お前の勘がなかったら僕ら本当に不味かったんじゃないかなァ!?」



3匹のトカゲもどきが上から飛びかかってきたが、夢宗の勘に従って前へと走り、回避する



「左前」


「見えた…おりゃぁぁああ!!」



刹那がおおきく振りかぶって石を投げる

トカゲもどきの大きな頭にしっかりと当たり、ドサッと木からトカゲもどきが地面へ落ちた



「なんか力が強くなってる気がする?」


「まやたんも思った☆」


「私も思いました」


「……やっばい、なんか周り全部嫌な予感する!!」



“ガサガサガサガサガサ”


“ザワザワザワザワザワ”



木々が動き、葉が揺れる

森がざわめいている


木と木の間から何かが飛び出してきた



『ワオオオォォォウ!』



とても巨大な狼が現れた


先程までに幾度も見たトカゲもどきたちが刹那たちの周りに大量に集まっている



「…ちょっと、まずいんじゃない?」


「ちょっとどころじゃないだろ」



この状況でも彼らはいつも通りであったようだ

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