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天使様との帰り道

あれから数日、以前は清水咲希と関わる機会などないと思っていたのだが、気づけば友達という関係にまでなっていた。少し前の歩なら考えもしなかっただろう


「清水さんって普段家で何してるの?」


ふと疑問に思ったことを口にしてみた


「そうですね、授業の復習をしてあとは家の家事とかでしょうか?」


「さすが天使様、毎日授業の復習とか偉すぎるだろ」


「そうでもないですよ」


控えめだが嬉しそうにしている。

かわいい、そう思ってしまう程に彼女は魅力的だ


「家事ってお母さんの手伝い?」


「いえ、家には基本いつも私一人ですので自分のご飯や洗濯、あと部屋の掃除とかです」


「ご両親は?一緒に住んでないの?」


そう問い掛けると少し寂しそうな表情を浮かべている


「父は私がまだ赤子の頃に、交通事故に巻き込まれ亡くなったと聞いています。母は大企業の社長をしてまして、家にはなかなか帰ってくる時間がなく、泊まりこみで仕事してることがほとんどらしいので実質一人暮らしみたいなものです」


「つらくないか?」


歩が心配して彼女の顔を覗き込むと、急に近づいたからか慌てふためきつつも首を振っている


「いえ!全然そんなことないですよ!小さい頃から母が必要以上に色んなものを与えてくれたり、大事にしてくれているのでそれ程つらいことでもないですよ」


清水さんの母親は亡くなってしまった父親の分まで、多忙ながらにも愛情を注ぎ込んできたのだろう


「愛されているんだな」


「はい、本当はもっと一緒にいたいですけど、あんまりわがままもいうのも負担をかけるだけですので。だからこそ母に悩みを打ち明けたくないといいますか」


そういい困ったようにこちらを見ている。初めて出会ったあの日、なぜ友達がいないと言うのに親に話したがらなかったのかわかった気がした。ただでさえ多忙な母親に、自分のことで更なる負担をかけたくなかったのだろう


「星川くんのご両親はどのような御方なのですか?」


「うちの両親か?別に普通だよ」


「普通って、もっと他にあるでしょう」


何故かムッとしている。今度は納得できないのか本当のことをいえと言わんばかりに天使様の方から近づけてくる


「多少口うるさいくらいだよ。だ、だからそんなに詰め寄るな!」


なんて危ない子なんだ、自分の可愛さを理解してやっているのか。


「ふふっ、星川くんも大事にされてるのですね」


嫌々ながらにも答えてくれたのがお気に召したのか、天使様は満足そうな顔をしている。


「そういえば来週から中間テストがありますけどちゃんと勉強はしていますか?」


「出された課題はやってるしなんとかなるだろ、多分」


うん、多分大丈夫。今までだってなんとかなってきたし。歩は現実から目を背けるようにどこか遠くを見ている


「なんとかなるでならなかったらどうするのですか?」


「その時はその時だ」


そうだ、もしダメだったらダメな時に考えればいい。赤点はとったりしたことはない歩だが、その思考は後に自分を苦しめるものになるだろう


「仕方ありませんね、星川くん明日からテスト前日まで放課後お時間頂いてもよろしいですか?」


「はい?」


「試験対策しますよ、いいですね?」


歩のことを心配してか一緒に勉強しようと誘ってくるのだが、正直気乗りはしなかった


「えー、めんどくさい」


「す、すみません出しゃばりが過ぎましたね、すみません」


本気で言ったつもりはないのだがすぐに引いてしまったことに少し驚いてしまった。軽く冗談で放った言葉に天使様は縮こまってしまう


「い、いや面倒くさいとは言ったけど嫌とは言ってない!」


天使様に勉強を見てもらえるのだ、嫌なわけはない。ただ勉強に対して気乗りしないだけだ


「じゃあ」


「クラスメイトの視線もあるし、放課後みんなが教室をでたあとだったらいいよ」


さすがにクラスメイトがいる中でやるとなれば、周りから羨ましいという視線が飛んでくるし、一緒に勉強がしたいと志願してくる輩が現れ勉強ところじゃなくなるのは目に見えている


「そうですか、それじゃあ明日から一緒にお勉強しましょうね」


「うん」


了承の意を受けとったことで安心したのか柔らかい笑みを浮かべている


「一つ聞いてもいいですか?」


「どーした?」


「やっぱり私と友達なのは嫌ですか?」


先程のことで不安になってしまったのだろうか。それにしてもやたらと友達という関係に拘り敏感なのは、彼女にとって嫌な出来事でもあったのだろう。もしくは噂がそうしたのか


「別に嫌なんかじゃないよ、だから清水さん、お願いだからそんな顔しないで」


今にも泣き出しそう顔があまりに子供地味ていたからか、無意識にもつい頭を撫でてしまった


「わ、わかりました!わかりましたから!早く帰りますよ」


そういいそっぽを向いてしまった彼女の頬は少し赤みを帯びていた。案外思っているより子供っぽいんだなと、友達として新たな一面を知れた喜びからか歩からは自然と笑みがこぼれていた


「星川くんの馬鹿」


そう小さく呟いた言葉は歩に届くことはなかった

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