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05 賢い馬に連れられて着た街で

 キースは後方から手綱を着けたまま走ってきた馬を掴まえて、その馬に水を飲ませつつ馬の好むものがあったかな?と考えながら空間収納の中身を漁っていた。

 

 餌を与えている間に、馬に積まれているこの馬の持ち主の荷物を漁っていると誰のものか解るようなものは何もなかった。

 着替えが数枚と、水だけだった。

「物はいいものだな・・・」


 頭のいい馬みたいで、キースにすりよってくる辺り可愛げがあると思って、この馬にしばらく乗ることにした。

 馬は早くていいが、尻が痛いんだよな。と思いながら馬に乗り上がった。


 馬に乗っていると襲われる確率が上がるから、いいんだが、泊まる場所に苦労したりするのでキースは手に入れた時は馬に乗り、じゃまになると売り払うことを繰り返していた。


 馬は方向を指示しなくても行きたい方向があるのか、勝手に進んでいった。

「まぁ、いいけど。持ち主が名乗り出てきたら面倒臭いな」とチラリと頭をかすめたが、それはそれでまぁいいか。と馬の行きたい方向に任せた。


 一晩野宿を考えていたキースは、馬のおかげで夕刻前には次の街に辿り着き、馬は一軒の宿屋へと向かっていった。

「誰かいるか?」

「はいはい。おりますよ。いらっしゃいませ」


「いや、ちょっと聞きたいんだが、この馬の持ち主を知っているかい?」

「馬ですか?」

「ああ。馬がどこからか逃げてきて捕まえたんだけど」

 出てきた女の顔が渋いものになる。

「よくない話ですね・・・」

「まぁ、そうだろうな」

厩番(うまやばん)の所に行きましょう」


 厩番に馬を見せると「ガウス様の馬だ」と言った。

「そんなガウス様の!!」

 女が目を見開いて口元を押さえる。

「馴染みの方の馬なのかい?」

「ええ・・・」

「この馬はここに預けた方がいいかい?」


「いや、うちでは面倒を見きれないので、お兄さんの好きにしたらいいさ。ガウス様がこちらに来られることがあったら、あんたのことは伝えておくよ」

「まぁ、二〜三日はここの街にいるから帰り際もう一度立ち寄るよ。その時にそのガウス様とやらが来てなかったら俺がもらっていくよ」


「うん。それでいいんじゃないかい。うちには泊まらないのかい?」

「こんな上等な所に泊まれるような身分に見えるか?」

 キースは稼ぎはいいので、この宿でも泊まれるが面倒を避けたかった。

「でも馬の面倒が見れるところはうちより高いところばかりだよ」


「それは困ったな」

「使用人部屋の空き部屋なら朝食だけ付けて、これだけでいいよ」

 そう言って指を三本立てた。

「風呂は入りたいんだが・・・」

 指が一本追加された。

「じゃぁ、それで頼むよ」

 厩番に馬を預けて、キースは旅装を解くことにした。


「ここの街は他所から持ってきた物を売るのにどこを通したらいいんだい?」

「商業ギルドで聞いておくれ。いろいろ教えてくれるだろうさ」

「ありがとよ」


「ちょっくらギルドへ行ってくるよ」

「気をつけていってらっしゃい。ギルドはこの道の右側五ブロック先にあるよ」

「そうかい。ありがとよ」


 まぁ、場所を教えてもらったことだし、商業者ギルドに先に顔をさすかと考えて、ギルドの戸をくぐった。

 必要事項を記載して、場所の確保をして、明日からの二日間の商売の許可書を貰う。


「冒険者ギルドはどこにあるかな?」

「お向かいだよ」

 扉を出て正面を見ると、たしかに冒険者ギルドがあった。


 冒険者ギルドに入って「ここは捕まえた手配犯を受け入れることができるかな?」

「ああ、うちで預かれるよ」

「助かるよ」

「何人だい?」

「十五人いるんだ」

「十五人も?」

「ああ。牢屋へ連れて行ってくれ」

「こっちだよ」


 生物を入れられるマジックバックを出して、そこから十五人の男達を取り出した。

「程よく弱っていると思うから、騒ぐこともないと思うよ」

「そりゃ、助かるね。確認作業に二〜三日掛かるよ?人数多いから」

「ああ、その間は商売しているから、大丈夫だ」


 俺はギルドカードを預けて、手配書を五枚出した。

 後の十人は配下のものだったり、別の現行犯逮捕だったりする。


「あの男とあの男はルルカルカ村で村民を殺しているところに出くわして捕まえたんだ。

 これがそこの村での調書だ。

「殺されても文句が言えないほどの悪党だったので、俺からもこの二人には情状酌量を申し立てておくよ」

「わかったよ」

「二日後か、三日後にくるよ」


「そうしとくれ」

 ギルドカードを返してもらって、俺は一応商売をする場所を見に行った。


 にぎやかな市が立っていて、人通りもいい。

 これは儲かりそうだと思いながら、移動するのだろう。店じまいが投げ売りを初めているところが何箇所かあって、俺はその店で交渉して、かなり安い値段で全てを買い取ってやった。

 それを繰り返して商品をたっぷり抱えて、キースは満足した。


 何処かで夕飯を食わなけりゃならないと思いながら屋台を冷やかしつつ、いい匂いのする串焼きと野菜の煮込みと冷や飯を買って、市が見える高台に上って直に座り込んで飯を食った。

 どちらも旨いおかずで、串焼きはもう何本か買って空間収納に入れておくかと一人算段していた。


 宿に戻ると、馬の持ち主が別の馬に乗って現れたと言うので、馬の持ち主と会うことになって、馬を交換することで話はついた。

 賊に襲われて馬だけを逃がしたらしくて「この宿に先に行っていると信じていたが、馬が一匹で入れてもらえるかそれが心配だったんだ。助かったよ。」と小銭を握らせてくれた。


「賊はどうされたんですか?」

「手傷は負わせたんだが、逃げられてしまってな」

「犯人はこの中にいますか?」

 キースが持っている手配書を見せると「こいつとこいつとこいつ」と言って三人の手配書を指さした。

「後二人いたけど、この手配書の中にいないな」


「そうですか。皆散り散りに逃げましたか?」

「ああ。バラバラに逃げた」

「解りました。憲兵への届け出は済まされましたか?」

「ああ。済ませた」

「ご無事で何よりでした」

「あぁ、こちらこそありがとうな」

「賢い馬でしたよ」

 キースが褒めると嬉しそうに笑って厩へと歩いていった。


 

 キースの商売はいつもどおり順調で、よく売れた。

 新鮮な野菜に新鮮な肉、このあたりでは珍しい魚。

 魚を出すと、高級宿の板前がやってきて、一括買いをしていった。

 殆どの物が元手が掛かっていないものだったので、ボロ儲けが出来た。

 

 冒険者ギルドに行くと受付のおばちゃんが新しい手配書をくれて、キースはじっくりと目を通してその特徴や人相を覚えた。


 この街は兵士もいるし、早々に移動したらガウス様とやらを襲った犯人が見つかるだろうとキースは南の方を向いていた。

 この先には小さな村があるはずだ。

 そこでふと思い出したのが、今は馬がいることだった。


 南へ急ぐべきだと勘が告げている。

 キースは馬に跨って、全速力で南にある小さな村へと向かった。

 二時間ほど馬を走らせて、村に着くと血まみれで村のドアを叩いている男と出会った。

 村人は固く扉を締めて出てこない。

 賢い村民たちだと感心して、俺はその男の背後から声を掛けた。

 

「おい兄さん、家になんか用かい?」

 振り向いた男は、ガウス様とやらを襲った相手に間違いがなかった。

 生き物を入れられるマジックバックを頭から被せて、ひとり捕まえると、残りの盗賊達も出てきた。

 全員がどこか切られていてガウス様やるな。と感心しながら全員の意識を刈り取って、マジックバックに収納した。


 一応村民達には捕まえたこと、手配書を見せギルドカードを見せ「もう心配ないから」と言い聞かせた。

 村民達から感謝され、村の収穫物だと言って新鮮な野菜を分けてもらって、キースは街へと急いで戻った。


 宿に戻ってガウス様がいるか聞いたら、ゴロゴロしていたらしく、寝乱れた格好で出てきたので「あなたを襲ったと思う人物を捕まえたので、一緒にギルドに来てもらえますか?」と聞いた。

 冒険者ギルドへと気安くついてきてくれて、まだ満員の牢屋の中に新たに五人を出して見せた。


「ガウス様を襲ったのはコイツラで間違いないですか?」

 一人一人を見ながら「ああ、コイツラで間違いない」とキースが一人で捕まえたことに感心していた。


 ギルドの受付は「仕事を増やすんじゃないよ」と怒りながらもキースの冒険者カードを受け取って、五人の支払いは即決でされた。

 

 後で教えられた所、ガウス様はこの辺の偉い人だったらしい。

 その日はガウス様の奢りで酒を少々いただいて、気持ちのいい眠りへとついた。


 二日後、ギルドからの支払いを受けて懐が温かい内に先へ進もうと思いながら馬に乗って、さて、どちらに向かうかなと考えていると、ガウス様に背後から声をかけられた。

「キースとやら・・・一ヶ月ほど私に付き合ってもらえないかな?」と言い出した。

「俺がですか?」

「そう、その腕を買って一ヶ月間をこの金額で」と提示された金額はかなりの額だった。


「俺は一人でブラブラしているのが性に合っているんですが・・・」

 遠回しに断ってもガウス様は聞き入れてくれず、ガウス様の事情を勝手に話し始めた。


 のんびりと歩かせていたキースの馬は、ガウス様の後ろを追い掛けて全速力で走ることになってしまった。

話が続いてしまいました・・・。_| ̄|○ il||li

次話1/21予定です。


ほとんど人気のないシリーズですが、私が書いていて楽しいのでこのまま続けます。(笑)

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