02 空間収納には商人としての商品も完備している。
キースが現在追っているのは奴隷商人だった。
今までは法律を守って商売をしていたのに、金に目がくらんだのか、それとも不運ななにかが起こったのか、法律で禁止されていることをしてしまった馬鹿な奴隷商を俺は二ヶ月追い掛けていた。
奴隷商だけを追い掛けているだけでは食い詰めてしまうことになるので、他にも何十件もの手配書を手に入れてその何十件もの犯罪者を同時に追い掛けている。
すごく運の良い時は、たまたま食料を手に入れるために寄った街で手配書の中の一人と出会うことがあったり、今行われている犯罪そのものに出くわすこともある。
そんな奴らを掴まえながら、冒険者ギルドで常時張り出されている薬草や、ゴブリン、コボルトなんかの魔物をを狩って小銭を稼いだり、お礼にと渡される色々なものを売って歩いたりしている。
自慢じゃないけど、俺は第六感がかなり発達しているようで、どこに向かえばいいか不思議と解る。
俺の犯罪者に対する憎しみが強ければ強いほどよく当たるみたいだ。
子供の頃から両親に勘がいい子だと言われていたが、親兄弟を目の前で殺されたことで特別に発達した能力なのだと思う。
今回はなんとなく東にある小さな村へと向かう気になり、目的もなく旅をしている風を装って、東の小さな村へと向かった。五十人ほどの小さ村落だ。
ここに犯罪者がいると直感はいっているが、どの事件の犯人かは解らないので俺は「この村で泊めてもらえるところはあるか?」と農作業をしている村民に声を掛けた。
「村長のところで泊めてもらえるが、かなりぼられるぞ」
「それは難儀だな」
と苦笑を浮かべた。
「俺、他所で手に入れたものを売って歩いているんだけど、なんか欲しいものがあるか?」
「塩! 塩があれば芋と交換してくれないか?!」
「塩は高いぞ」
「でも、本当に必要なんだ。最近商隊が来てくれなくて、皆難儀しているんだ……」
「解った。村人を集めてくれ、塩とかそれ以外にも色々持っているから物々交換でも、金ででも交換してやるよ」
「助かる!!」
俺が声を掛けた農民は家に戻って、鍋と鎌を手に叩いて人を集めた。
ワラワラと人が集まりだし、俺は最初の農民に芋一袋分で交換してやれる量の、塩を出してやった。
「空間収納持ちか?!」
「そうだよ。だから手ぶらに見えても色々持っているから、欲しいものがあれば何でも言うだけ言ってみてくれ」
集まってきた人達は慌てて自宅に戻り、交換できるものを持って再度集まりだした。
全員が塩を欲しがり、人によっては金だったり、芋だったり、小麦だったりした。
ふんぞり返った裕福そうな男が一人一番最後にやってきて「私の許可無く商売するとは何事か!!」
そう文句をつけられたが「あんたは誰だい?」と聞いたら村長の息子だと言った。
「後で村長宅で泊めてもらおうと思っていたんだ。あんたは欲しいものはないのか?」
「お前が持っているようなもので欲しいものなんぞあるか!」
そう言って村の中で一番大きな家に帰っていった。
鍋が欲しいと言った女には数種類の鍋を出して見せて「どの大きさが欲しい?」と聞くと女は嬉しそうに「これ」と指差し、値段を言うとギリギリ足りなかったのか、金と小麦と穴の空いた鍋で支払った。
あらかたの人間が塩を買って、欲しいものを手に入れて村人達は俺から離れていった。
俺はのんびり村長宅へと向かって「今晩ご厄介になりたい」と告げると、驚くほど高額な金額を言った。王都の高級旅館並みの値段だ。
「明日払います」と言って、塩を安く売れと言ってきた。
「話になりませんや。ここの宿泊代で赤字ですわ」
そう言って村長には塩を売ってやらなかった。
貧しい食事を出され、粗末なベッドで眠らされて、翌朝の食事は湯の中に研いた小麦が椀に半分入っているか?というような貧しい食事だった。
「出された食事と支払う金額がここまで釣り合わない宿泊地は初めてですよ」
と、村長を笑ってやった。
「ところで息子さんは?」
「息子に何の用があるっていうんだ?!」
「内緒のものを売ってやるって約束したんだけど、売るのが馬鹿らしくなったから、やっぱり帰りますね」
「息子は二階の右側の部屋だ!」
「そうですか、では行ってきますね。村長もたまに借りたらいいですよ。息子さんに。かなりいいものなんで」
そう言って下卑た笑いをしてやると、村長は何を想像したのか醜い顔をいっそう醜くして笑っていた。
俺は村長の下顎をスッと撫でるように殴って、気を失わせて縄で縛り上げた。
生物を入れることができるマジックバックに村長を入れた。
なるべく音を立てないように階段を登り、そっと右側の部屋の扉を開けると昨日見た息子が腹を出してイビキを掻いて眠っていた。
眠っていて意識がないのでそのまま掴んでマジックバックに入れ、左側の部屋の扉を開けたが誰もいなかった。
手近にいた農民に「村長と息子は悪事を働いていたから捕まえたので、もうここには帰ってこれないから、あとのことは頼むな」と言うと、村人は手を上げて喜び他の家々へと走って行った。
さて、ここから一番近い冒険者ギルドはどこだったかと、思い出しながら、東へと向かった。
この村長と息子は街道を行く女を何人も襲って手籠めにしていて、最近では十歳になるかならいかの子供にまで手を出していた二人だった。
「コイツラは死刑だな」
はぁ、奴隷商はどこに居るのやら?出会えないねぇ〜〜」
とため息をついた。
塩を手に入れられる街は……と考えて、このまま進めば手に入るか。
村長の家でまともな食事をしてからキースは村を出た。