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永遠の苦悩

気がつくと同じ森の中にいた。

ただ生きたままバケモノに食われた痛みだけはしっかりと覚えている。

この壮絶な痛みはもう一生忘れることのできないだろう。


辺りを見渡して、同じボロぬろを着て同じ場所にいる事実に気づき、僕は心の底からこれからの未来に恐怖した。


「女神様、、これは一体なんなんですか、、、!僕は一体何か悪いことでもしたんですか、、!こんな苦しむくらいなら早く死なしてくださいっっ、、」


叫ばずにはいられなかった。

ただ彼女からの答えはなく、僕の声が空に虚しく響くだけだった。

不安を少しでも取っ払うべく本当はもっと叫びたかったが、さっきのバケモノにこの声が聞こえるかもと思うと、思う存分叫び散らすことさえもできなかった。


僕は女神様を呪った。

さっきは森の北の方角に歩いて行ってバケモノに出会った。

もう北の方向には行けない。ただ他の方角に行ったとして、同じバケモノがいない保証もない。

絶望の中で僕は選択を迫られている。


まずは身の回りで武器になりそうなものを探すしかない

周囲を賢明に探してみるが、役に立ちそうなものは全くない。それでも何かないかと茂みの中を探していると、少し先の尖った木の棒を見つけた。


こんなものバケモノとの戦いには何の役にも立たないが、ただの木の棒でも自分の喉を突き刺せば、苦しまずに死ねるかもしれない。気がつくと僕は落ちていた木の棒をしっかりと右手に持っていた。


先程の恐怖が体を支配しており、生きたいというよりむしろ苦しまずに死にたいという感情に心が支配されていた。

僕は先程のバケモノを避けるように、南側に向かって歩き出していた。

足取りは非常に重く、匍匐前進に近い姿勢で、2−3歩歩くたびに周囲を見渡した。


3時間程度は歩いただろうか。緊張のせいか全身から汗が吹き出し、喉はいつになくカラカラだった

水場を探して辺りを彷徨い続けるが何も見当たらない。

さらに数時間散策を続けるが水場は見当たらず途方に暮れてしまった。

もはや歩く元気すらない。


「女神様、、、せめて水辺まで案内してくださいっ!森の中に1人放り出されても世界なんて救えませんっ!」


ガラガラになった声で叫ぶももちろん返事はない。

先程とは違う苦しみが僕を襲う。口がスムーズに動かせなくなってきた。唾液もでない。意識も朦朧としてきた。

こんなことで死ぬわけにはいかない。最後の力を振り絞り水場を探し諦めず前に進む。

ひたすらに果てのない森を歩き続けていると、ふと水の音が聞こえた。


幻想かと思うような儚い音だったが僕はこの音に縋るしかない。

音の鳴る方向に歩き続け、そしてついに小川を発見した。

よかった、、、流石に女神様も熱中症で僕を殺すことはしないか。


この世界と女神様に強く恨みを抱いていた僕だったが、ホッと胸を撫で下ろし小川に向かって歩いていった。


小川の水を両手で掬い体を水で潤す。これほどまでに美味しい水は飲んだことがない。

無我夢中で水を飲む。体中が満たされていく。


僕は油断していた。この世界が、冷酷で残酷ということをすっかり忘れていた。


水を飲んでいる時には気づかなかった嫌な生き物の気配を後ろに感じた。

僕は緊張しつつ後ろを振り返った。


そこにはいた、、、、あの ”バケモノ” が。


「グヒヒヒヒッゥッ」


聞き覚えのある笑い声でバケモノは笑う。

僕は顔を引き攣らせる。先程の恐怖が体を支配する、指一本も動かせない。


まだバケモノとの距離は2m近くある。今すぐ動けば逃げ出せるかもしれない。

このバケモノはただ力があるだけの愚鈍な生き物かもしれないのだ。


僕はなけなしの勇気を振り絞り小川に飛び込んだ。小川を泳義きり反対側の岸に辿り着けば逃げれるかもしれない。

向こう岸までは20m程度、、、後ろを振り向く余裕もない。全力で体中の筋肉を使い泳いだ。


岸が見えてきた、あと少し、、、


岸に手が届くその瞬間、僕は足を引っ張られた。

振り向くと退屈そうな顔をしたバケモノが見える。

水の中で僕はバケモノの方に力強く引っ張られる。バケモノは水の中でも素早く動くことができた。


至近距離でバケモノの顔をまじまじと見るが、バケモノはさっきと違って無感情に僕を見ているかのようだ。

おそらくさっきとは違う個体なのだろう。バケモノの右手がサッと動く。

僕は、真っ赤に染まった水の中の首のない自分の体を一瞬見た。


僕は意外と冷静だった。

痛みを感じる間もなく、僕はすぐに意識を失った。



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