暗闇の世界
気がつくと僕は暗闇の中にいた。
周囲は漆黒に包まれており、何も見ることができない。
自分が息をしているかもわからない、そんな漆黒の闇。
ただ意識は明確にあって、自分が存在しているという事はしっかりとわかる。
ただ僕は死んだはずだった。小さい頃から難病を患い、高校に行くことすらできず、病院で生涯を終えた。
それが僕の人生のはずだった。
この漆黒の闇は黄泉の世界なのだろうか?
天国に行けるとは思ってはいなかったが地獄にいくほど悪い事は出来ていないはずだ。
「おーい!誰かいないのか!」
反響音はなく、まるでこの暗闇の空間が永遠に続いているかのようだ。
少し途方に暮れつつも、何かを見つけるまで歩き続けるしかない、僕はそう決意した。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
一晩中無心で体を動かし続けている。
真っ暗闇の中で方向感覚もまるでなく、どこに進んでいるのかも分からない。
ただ地面を掴む確かな感触だけを信じて歩き続いている。
歩くことは昔から大好きだった。体が弱かったからこそ、歩いて未知なる世界に踏み出すことが好きで、病院から抜け出してよく大冒険に出かけていた。
それにしても、真っ暗闇の中歩き続けた経験なんて僕にはなく、まるで暗闇と自分の体が融合し意識も何もかもがなくなってしまいそうな感覚に恐怖した。
「おーーい、、!誰か、誰かいないのか!」
心の底から助けを求めたが、答えに応じてくれる気配はまるでない。
何日間歩いたのだろうか。驚くことに、どれだけ歩いても疲れを感じていないのだ。
ただ体とは裏腹に頭がおかしくなりそうだった。
まるで拷問かのような環境に、僕は踏み出す一歩の力が少しずつ抜けていくのを感じた。
一歩ずつ力が抜けていく、どれだけ歩いても何も変わらない。絶望に心が押しつぶされていく。
もうだめだ、、そう思って歩む足を止めた瞬間、一筋の光が現れた。
僕は目を疑い、何度か自分の目を手で擦った。
「この暗闇はもしかすると僕を試していたのだろうか?」
絶望し諦めた瞬間に現れた光に訝しむ気持ちは少しあったが、自分を救い出してくれるかもしれないこの光に強く救いを求めていた。
挫けそうだった心に気合いを入れて、再び足に力を込めた。
光の方向に一歩ずつ歩いていく。
10分ほど歩いただろうか、そこには意匠をこらした大きな扉があった。
西洋的な作りの扉であり、まるで大神殿への入り口かのような荘厳な作りだ。
「ついに辿り着いた。この道のりは僕への罰だったのだろうか、、、この先には神様でもいるのだろうか、、?」
ついつい独り言を呟いた。
扉を開けると何が起きるのか不安はよぎったが、僕は思い切って、力強く、目の前の扉を開けた。
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