幕間
清水、西村先輩、木村宮崎ペアの活躍により、一回戦は俺たちの圧勝で幕を閉じることになった。
そして、その後も順調に勝ち上がり、ベスト4進出にまで手を届かせることができた。
次の試合まで時間があるのでここらでお昼休憩にしようとのことで、俺たちはそれぞれ昼飯を食べることにした。
俺はというと、今は近藤と体育館近くのベンチで一緒に昼飯を食べている。昨日食べた時と同じ席だ。
「ついにここまで来るとはな」
近藤は今の成績に感動しながら嬉しそうに食事していた。俺はそんな近藤に少し呆れながら注意した。
「……ちょっと気が早くないか?」
「ははっ!そうだな。気が早いな、俺は」
いまの近藤は、いつも二人で一緒にいる時よりもうれしそうだった。
「………やっぱり、楽しいか?」
俺は気づけばそう近藤に言っていた。
「?ああ。卓球は楽しい。俺の中では一番だな。……お前はどうなんだ?卓球、楽しいか?」
近藤は俺にさっきと同じ質問をした。
俺は少し考えてからこう答えた。
「ああ。楽しい、かな」
すると近藤は不思議そうな反応をする。
「なんだ?その曖昧な答えは。………やっぱり半ば強引にやらされて嫌だったか?」
これでも近藤はゲームで釣ったとはいえ、したいわけではないだろう卓球を俺にやらせたことを気にしていたらしい。
俺はまた呆れ、そして近藤に答えた。
「いいや。お前に物で釣られて卓球部に入ってから、むしろ充実してたぐらいだ。卓球事態にはまったことももちろんだけど、こうして仲間に恵まれてながら過ごしてきた今までの日々は、本当に今までで一番、楽しかったよ………」
「………?原、大丈夫か?いつもより元気がなさそうだが」
途中から俺の声色が落ちてしまった。そのことを気にして、近藤は俺に心配そうにそう聞いてきた。
「い、いやいや。大丈夫だよ。さっ!昼飯も食い終わったし、俺はスポドリ買ってくるよ。お前もいるか?」
「あ、ああ。じゃあ頼む」
「りょうかい!」
俺はこれ以上詮索されるのを恐れ、昼飯を飲むように食べてから近くの自販機にスポーツドリンクを買いに行った。
「次に勝てばもう決勝戦だ。みんなに迷惑をかけるわけにはいかない……」
自分の内にある不安を胸に隠したまま、できるだけ平常と変わらない振る舞いをしなければ。
スポーツドリンクを買って近藤のところに戻ってから俺はそう意識してみんなと過ごした。
そしていよいよ、決勝戦進出をかけた戦いの火蓋が切られるのだった。