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閉幕

 「ありがとうございました」

 「あ、ありがとう、ございました」

 試合が終わり、挨拶をした俺は何も考えられないままラケットを片づけていた。

 「ちょっといいか」

 その最中西本から俺に声をかけてきた。

 「……なんですか」

 まさか今のはいい試合でした、とでも言うつもりじゃないだろうな。

 「今の卓球……馬鹿にしていたのか?」

 「………は?」

 どういうことだ?俺はいつも通りやっていただけなのに。

 「お前と試合をしている時、お前からは何も感じなかった。試合に対する思い、熱意がない。勝てないと判断したとたんにすべてを諦めたようなプレーをする」

 「いや、あんなの見せられたら戦意喪失するでしょ」

 確かに俺は途中勝てないと判断し、半ば勝負を棄てていたと思う。しかし、俺の場合今に始まったことではない。無理だと思えば何でも見切りをつけ、捨ててきた。その結果が今だ。何も間違ったことはしていない。そのはずだ。

 しかし、西本は俺のそんな信念を否定する。

 「……技術だけ見ればお前には才能がある。去年の大会でも見たことがないからお前は一年か?」

 「いや、二年生ですけど……」

 「なっ!?………そうか。だとしたらそれは凄い。しかし、お前はこれ以上強くなれない。戦況を見極める能力、一つ一つのレベルの高い技術がありながらお前には”心”がない」

 「心?」

 「ああ。言っておくぞ。お前は卓球をやめるべきだ。いや、そもそもスポーツに向いていない」

 「っ!?」

 そう西本に言われたあと、彼は自分の荷物を取りに行きこの場を去った。

 俺はまた、何も考えられなくなっていた。

 

 そして大会の閉幕式が終わり俺たちは会場施設前に集まっていた。

 「いや~悔しいっすね~」

 「宮崎君いつもどうりすぐ負けたね」

 「木村もな~」

 宮崎と木村は一回戦負け。正直意外だ。

 「僕も頑張ったほうなんだけどね」

 西村先輩は俺と同じ三回戦負け。競り合いの末2-3とギリギリのところで負けてしまったらしい。

 「それでもみんな頑張ったと思うよ。それと、清水君ベスト8、近藤君3位おめでとう」

 宮本先生が笑顔でそう言うと清水は少し照れた様子で、近藤はどや顔で俺たちの拍手を受けた。


 「原君も、初参加で三回戦まで行くなんて凄いことだよ!ちょっと見直しちゃったよ~」

 「あ、ああ。もっと褒めてくれてもいいんですよ」

 「これ以上褒めると堕落していくのが目に見えているからダメ」

 「チィッ。これで今まで通り授業中に寝れると思ってたのに」

 「聞こえてるよ原君」

 「もちろん嘘に決まってるじゃないですか!あはは……」

 「……?」

 ……どうやら、俺は思った以上にショックだったらしい。

 完膚なきまでに叩き潰され、さらに今までの俺の尊厳を全否定され……もはや笑うことさえもできなくなってしまっていた。

 「とにかく、みんなお疲れ様でした!明日、学校は休みですからゆっくり休んでくださいね。じゃあ今日は解散!気を付けて帰ってね!」 

 こうして怒涛の一日が終演を迎えたのだった。


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