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TSサキュバス転生ほど残酷な物語はない!  作者: 前花篩上
成人の儀
48/50

track48 プレゼント

「シーラ様……本当に立派になられて……私はもう感涙で前が見えません………ぐぅ……」


「一体何時間泣いてるんだお前は……」



入団式を終えた俺は、ハンスとお母様の二人と合流した。


ハンスはこの通り、感嘆の言葉を号泣に添えて延々垂れ流し続けており、お母様に至っては式が始まって俺が登場したあたりから感極まり過ぎて失神している。


今もハンスが大泣きしながら白目を剥く彼女を車いすに乗せるというアナーキーな構図が出来上がっていた。



「改めて、入団おめでとうシーラ君。歓迎するよ」


「ふん、せいぜい足引っ張らないよう注意してよね」



振り返ると……ジーク隊長と、あの時かなり()()()()()()()デラネ・ローワスターの二人が立っていた。



「……よろしくお願いします、ジーク隊長。それにデラネも」


「あーーッ!”先輩”でしょ!?せ・ん・ぱ・い!!崇め奉りなさい!!」



隊長と握手を交わした後、俺はデラネの右手を取って半ば強引に引き寄せる。



「もっと先輩と仲良くなりたくて………ダメ……ですか?」



耳元で極力ゆっくりそう言うと、彼女は露骨に表情を蕩けさせ、膝が震え始めた。



「はひゃっ……ま、まぁべちゅ……べつに……そういうことなりゃ……いいけどぉ……」


「お、そうか?じゃあ普通にデラネって呼ぶから、よろしくな!」




チョロい。


声に若干の催淫を掛けて彼女の色欲をあぶり出し、すかさず吸収する。


これで軽食も取れて面倒な上下関係も薄くなり一石二鳥だ。




「シーラたん………いつの間にあんな芸当を……?私も耳元でねっとり囁いて色欲いっぱい出させて欲しい……」


「貴様は何もせずともドバドバ溢れ出てるだろうキモリリスが」



号泣から急に真顔で毒を吐くハンスに、いつも通りアイラさんが激高していた。


……一か月ぶりにいつも通りの皆の姿を見て、安堵感と寂しさからの解放が押し寄せた。



「はぁ……はぁ……ま……間に合った……」



感傷に浸っていると突然、前方から激しい呼吸音と共に一人の黒い影が現れる。


それは、ゼエゼエと膝に手を付きながら大量の汗を流している修道服を着た少女、ロミィだった。


「ロミィ!?……どうしてここに……」


「ほ、本当は……騎士団の催しに教会側の人間は……基本参加出来ないけど……式の終わりになら少し……話せるかもって………っゲほ……ぅぇ………」


「内臓出そうなくらい息切れしてるけど大丈夫……?」


「一日分の任務午前中でこなして……魔力切れのまま走ってきたから死にそ………」



本当に死にそうだった。基本超絶インドア気質であろう彼女が全力で走ってきた結果、うら若き少女がしてはならない顔を浮かべて嗚咽している。



「そんな命を賭けて来てくれたんだ………ありがとうロミィ」



次の瞬間、デラネが大慌てで割り込んできた。



「ちちちちょっと!!なんでロミィ・メルファルトがここにいるのよ!!教会の実質ナンバー1がなんでシーラに……」


「なんでってそりゃ……その………と、友………し、知り合い……以上だから」



すると、さっきまで呆けていたデラネの表情が宛らベンタブラックが如く黒く染まっていくのが分かった。



「今……”友達”って言い掛けたの……?()()シーラとアンタが……友達……?」



ヤバいかもしれない。この顔は完全に”庇護欲(ヤンデレ)”モードだ。しかもさっき調子に乗って催淫したから余計にこじらせている。



「なっ……友達なんてそんな…………あ、っていうか!!私その……シーラっちにプレゼントしたいものがあって……」


「シーラ”っち”ですって……?もう一度言ってみろア〇ズレが……」



”ギリギリ”の罵倒が出るほど怒り狂っている。しかしそんなデラネをよそにロミィは、半ばウキウキした様な表情で修道服の胸元に手を入れる。……俺は思わず目を背けてしまった。


そして、彼女が取り出したのは一枚のチケットだった。




「ん?何これ?」


「ネヴロにある”デトロ・セラス”っていう温泉リゾートの年パス。ウチ、任務で結構ネヴロに来るから毎回ここに通ってて。……そんでいつの間にかプラチナ会員になっちゃってさ、”知り合い3人まで無料招待可能”っていうオプション付きの年パスまで貰ってんの」



……なんだその温泉回に強引に持っていきたいが為のご都合主義が如きチケットは。



「元々お祝いするつもりだったけど……シーラっちお嬢さまだし、物とか食べ物は野暮かなって思って。なら行ったことないような場所にでも連れていきたいなー……てさ。どう?帰る前に二人で寄っていかない?」


「ちょっっっっっと待ちなさい!!!」



デラネが、鬼の形相で俺とロミィの間に再び割り込んできた。



「今アンタ、”知り合い3人まで”って言ったわよね!!?」


「え、えぇ……?いや言ったけど……ていうかさっきから誰?」


「帝国騎士団第三部隊四首、デラネ・ローワスターよ!!そしてシーラは()()後輩であり一級庇護対象!!どこぞの馬の骨よりよっぽど親密な関係なの!!その温泉リゾート……私も連れて行きなさい!!」


「なんだ一級庇護対象って……絶滅危惧種かなんかか俺は」


「初対面で凄い圧………うーん………まぁ、シーラっちがそれでいいなら……別にいい……けど……」



少し残念そうにも言える表情を浮かべつつ、ロミィがこちらを一瞥する。その横でデラネが、”四捨五入したら殺意なんじゃないのか”という程の圧力で俺を凝視していた。



「俺……わ、私は全然良いよ……?」


「やったぁ!!!」



”やったぁ”じゃないんよ先輩。



「…………それともう一人、あそこの木の陰から同じくらいの圧力で見てくる人いるんだけど…………誘う……?」



ロミィが俺の後ろを指さす。正直、振り返らずともわかっていた。



「アイラさんも………どうですか?」


「えぇっ!!?どうして分かったの!?やっぱりシンパシー!!?」



『変態オーラです』とは言えず、苦笑いで返す。………女子二人のほのぼの温泉リゾート観光から、ヤンデレ&ド変態リリスの湯けむり百鬼夜行と瞬く間に変貌を遂げてしまい、既に憂鬱になりそうだが……彼女の厚意を反故にする訳にはいかない。この二人はなんかこう……上手くあしらっていこう。




「……ごめんねロミィ、()()()付になっちゃって。………でも本当にありがとう」



二人に聞こえないよう、小さく耳打ちする。



「っ……ま、まぁ……社交辞令……?的なアレだし……!別に二人っきりが良かったとか思って……ないし……」


「ふふ……それもそうだね」




彼女は露骨に照れ出した。。……この姿をシスター・グレイスが見ていたら、さぞニヤニヤしていただろう。



「ちょっとシーラ!!私以外の女に囁かないでよ!!」


「だからそれ私にもしてよシーラたん!!」



………とはいえこの欲獣達との温泉旅行は、さぞ地獄の様相を呈すのだろうなと……俺は嘆息せざるを得なかった。


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