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TSサキュバス転生ほど残酷な物語はない!  作者: 前花篩上
ロリサキュバス期
4/50

track4 惹かれた者

終わった。


望まぬTS転生の果てに、異世界で俺の純潔が散った。

…と、走馬灯が放映のカウントダウンを始めた所で、俺は異変に気付く。



「………あ、あれ?」

「はあぁ~~~~~~~!!!!!何て可愛いのこの娘……!!!天使過ぎる……!」



襲われていない。痛みも、苦痛も無い。

無論衣服を剥かれてもいない。…一体何が起こったんだ?


しかもこの声…。先程は半ばパニック状態で全く気付かなかったが……恐らく、”女性”の声だ。


静かに、固く閉じていた眼瞼を開く。

すると、不審人物は地に跪き俺に思いっきり抱き着いていた。


そしてフード部分が風で捲れ、その相貌が露になる。

現れたのは短く整えられた緑色の綺麗な髪、そしてヴィエラにも劣らない程に凛々しく美しい顔立ち。


……完全に女性だ。だが依然彼女は俺の腰に腕を回したまま顔面を胸部にグリグリと擦り付け、挙句の果てには深呼吸している。


少なくとも変態認定は確実だと本能で理解した。


ロリコンでは無かったという安堵は徐々に薄れ、まずこの謎の変態美人から抜け出す為に彼女の肩を掴み引きはがそうと試みる。




「は、離して……!!」

「スゥ~~~~……………ハァ……スゥ~~~~~~~」

「え、何だこれ、動けば動く程キツく……!!?ちょ、マジで!!特殊なロープの縛り方みたいな抱擁やめろ!!!離せええええぇぇええ」

「スゥ~~~~~~~……………はっ!!!?あぁあ!!!ご、ごめんね!!苦しかったよね!い、今離れるから…」




漸く正気に戻ったのか、変態は俺から飛び退くように身を離す。

まさかこの歳で圧死を覚悟するとは夢にも思わなかった。いやどの歳でも思わないだろうが。


……強烈な抱擁による呼吸の乱れを整え、立ち上がった彼女を改めて視認するが……やはりどう見ても女性だ。


背丈や顔つきだけなら、人間でいえば高校生くらいに見える。だが彼女が纏うオーラ、もとい醸し出す”妖艶さ”は、その幼さの範疇を明らかに逸脱していた。


あれ、なんかこのオーラどっかで……




「と、突然抱き着いてごめん!!見かけたアナタがあまりにも可愛くてつい、不可抗力で…!あるあるだよね」

「俺の管轄外のあるあるだな……」

「でも決して怪しい者じゃないの!!ほら、これ!!」



彼女は慌てた様子で、ローブの胸元で金色に輝く盾形のバッジをこちらへ見せる。

手拳程の大きさ故、理解するのに時間はあまり要さなかった。




「ん、この真ん中の紋章………。はっ!?……ま、まさか、帝国の………!!?」




ペガサスを象った様な紋章が刻まれたバッジ。

それは”ファシリア帝国”……つまり俺達が住まうこの国の、更に中枢に関わる人間のみが身に着ける事を許されたものである。

例示すれば、王族の護衛者や憲兵等…『マジで国背負ってます』的ポジションの奴らだ。


つーことはこの変態、少なくとも相当のエリートという事に………




瞬間身体が強張る。

…この世界、そして我が種族における必要最低限の知識はハンスの教育によって得ているつもりだが、あくまでも己の生存の為に必要な知識のみである。


つまり、”この世界の者達にとってサキュバスがどの様な存在なのか”等を把握しきれていない。ある程度順応しているのか、迫害されているのか、広く認知されておらず陰ながら活動しているのか。


だが、転生前の世界ではサキュバスは根本的に悪魔という認識だった。実際にその習性を鑑みても、手放しで歓迎などはされていないだろう。


万が一、サキュバスが国の偉い人にとって”駆逐対象”とかだったら…………?



「ふふーん、そう!私は帝国騎士団第三部隊副隊長、シャルテ・アイラ。宜しくね!」

「てっ……!!!帝国…騎士……!?」




……これは詰んだ。よりにもよって騎士団員なんてどう考えてもヤバい。エリートどころか執行人じゃねぇか。

懸念していた通りサキュバスが駆逐対象だったとして、この女にバレたら即微塵切りだ。三秒クッキングだ。


…い、いや落ち着け落ち着け。サキュバスといえど容姿だけ見れば完全に人間だ。

ヘマをしなければ、この女を適当にあしらって逃げるだけの猶予はある筈。




「驚いたでしょー!?お姉さん、すっごく強いの。怪物とか一瞬で細切れに出来るくらい!!」

「は……ははは…しゅ、しゅごいでしゅね……はは…」



何だお前…怪物ってお前、精を貪る卑しい怪物って事かお前!!!!

か弱いロリに向かって細切れとか言うなバカお前!!!



「ところで、アナタ名前は?こんな場所で何で一人なのかな……もしかして、迷子になっちゃった?」

「シ、シシシ……シーラと…申します………どうかご勘弁を……」

「何故!!?別に怒ってないけど!?」

「は、はははは……間違えましゅた…ごめんなしゃい…」



それは”しどろもどろ”の極致。


もはや会話という人間の根本的な対人能力すら深淵に堕ち、顔は青ざめ、唯々サブリミナル的に謝罪をねじ込むだけの傀儡と化していた。



「あのねシーラちゃん、私はこの街をパトロールしてただけ。…そしたら偶然一人で困ってる女の子が見えて、助けてあげたいって思ったから近づいただけ。あと超絶可愛かったから。全然怒ってなんかないよ。だから怖がらないで?ね?」



脳天まで青ざめていく俺を安心させようと、柔らかい声色で語りかけるアイラ。

そうだ。彼女は別にサキュバスをピンポイントで狩りに来たわけじゃない。

ここで挙動不審になっていたら返って怪しまれるだけじゃないか。それに、この人は……何となく”良い人”な気がする。変態だけど。



「だ…大丈夫……です。あ、ありがとう…ございます」

「ぐぅっ……!お礼するだけでこの可愛さ……も、もはや可愛さの真理と言っても差し支えないわね!!!」

「差し支えます」

「ツッコんでも可愛い!!!!」



彼女の善意、そしてイカれた言動のお陰もあり、段々落ち着きを取り戻してきた。

このまま上手く立ち回りつつ……この広場から離れれば…







「……………何を、しておられるのですか」

「えっ…?」






刹那、聞き慣れた声が耳元で響く。

思考を途絶し反射的に後方を振り返る。

そこには、先程元気よくエルフを篭絡していた筈のハンスが…不気味な笑顔を浮かべて立っていた。




「ハ、ハンス!?お前……!!俺が助け呼んでも全っ然来てくれなかったじゃねぇか!怖かったんだぞマジで!!襲われてそのまま成人向けコンテンツ突入かと思ったわバカ!!!」

「…それに関しては全面的に謝罪します。……しかし、一先ずこの女と話をさせてください」

「は?」



彼の視線は、俺ではなくローブの少女…シャルテ・アイラに向けられていた。

するとアイラはハンスの姿を見た瞬間、露骨に表情を歪ませ立ち上がる。




「何故、貴方がシーラ様と一緒に?」

「様……?そっちこそ、何でアンタみたいな悪魔がシーラちゃんと慣れ慣れしく話してるワケ?……さっさと消えなさい!!」

「え、え?ちょっと……アイラさん!?ハンスも……どうしたんだ急に…!」




彼の表情が珍しく曇る。それが嫌悪感に起因するものである事は明白だ。

そして…数秒の沈黙の末、嘲笑う様な声色でハンスが口火を切る。



「悪魔?ハッ……それは自己紹介か何かですか?…………”リリス”の娘、シャルテ・アイラ様」





それは、聞き覚えのある悪魔の名だった。

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