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序
実のところ
僕は君を待っている
君が僕を食べてくれる日を
さぁ そのフォークで僕の目をくりぬいて
君の好きなベリーを詰めるといい
ケーキ・ナイフで腕を刻んでおくれ
なんて赤く なんて甘い香りのソースだろう
愛しい人よ
僕を殺す君の顔が見てみたい
「デコレーション・クリームはなぁに?」
それはオルガスムス
楽園に咲いた花の蜜
(エリオ・ポートマン『楽園』より)
暗黒の路地裏に立ち込めた甘い香りが、脳髄にまで充満している。夢の中にいるかのようだ。満月はぼんやりと雲に隠れ、暗闇がすべてを覆う。
これで悪夢は終わった。世界は救われたのだ。
どこの酒場からか、野太い声が漏れている。仕事帰りの男たちが愉快にブドウ酒を呑んでいるのだろう。しかし、目の前に倒れた男が口をきくことはもう二度とない。この男の卑しい笑い声を聞くことも、蛇のような目を見ることも、もうないのだ。
使命を終えてほうっと息をついたとき、ふいに、わずかだが視界が明るくなった。月が雲から抜け出したのかと振り返った瞬間、息を呑む。
暗い大通りを走り去る影があり、その悪魔のような目がこちらを向いていた。黄金の髪が月光を集めて怪しく輝いて――そして、一瞬のうちに消えてしまった。




