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病棟842号室

ゆっくりと溶けていく 甘いチョコレート

好きなものなんて 一言も言っていないの

全部代用品に変えられた とても小さな世界

仮初に作られた 崩れそうな境界


純粋に言葉遊びを 繰り返しちゃって

どこかで見捨てられた 体温さえ奪って

誰かの血管に 潜まれた悪意でさえ

無色透明に 預けてゆくよ


真っ赤な血液を採取して フラスコの中に流してゆく


傷だらけの体に 薄い白い布を纏って

静かに堕ちてゆく 眠りの世界へ

消えそうにたたずんだ 白いベッドの中は

あまりに綺麗すぎて 涙が溢れる


夜明けまでに泣いてしまったら

私は逝くのだろう なんて予想したって

もう吐き出されていた感情も

おぼろげになってゆくのに


カルテに書き込まれていた

「小さな、ちいさな悪意」の夢

どこかで見落としたのは

些細で嫌いな記憶


血を抜かれて 新たな血が入る毎日

何が新しいのか わからないけれど

ああなんだかねえ どうでもいいんだ

死んでゆく感覚に そっとキスをして


明日のことさえ 分かるはずないのに

窓の外は美しく歪んで 子供たちは帰り

私はここで歩けなくなり 僻みが増して

チョコレートを口に入れて 味がしないな


芽生えた嫌悪感でも 血液は流れているらしくて もうなにも報われない


酸素マスクすら もう私を慰めてくれなくて

もう嫌いよ 嫌いよ キライよと呟いてしまっても

血清は静かに 終わりを迎えてしまった

惨めもほどほどに


チョコレートだけは

私を見て どう思っている

もう嫌いだわこんな世界でも

最後まで視界と思考がクリアで


楽に死ねない

終わらない

なにも始まらない


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