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プロローグ
ーこれは物語ー
ー始まりの…物語ー
その日は雨だった。
曇天の空から大粒の雨が大量に降ってくる。
そしてその雨は、彼の顔を余す所なく濡らしていた。
そこは四国の中央部に位置するとある山村だ。
建物で、かつ誰かが住んでいるとなると数は限られてくる。
彼はただそんな建物を探しさまよっていた。
「どこか…人はいないのかっ…」
その言葉には、どこか焦りが見て取れる。
さまようこと数分。
そんな彼の思いが通じたのか、前方に一つの小さな木造家屋が姿を現した。
確かに小さく粗末な家だが、灯りが点いていて人の声も聞こえる。
人が住んでいるのは明白である。
彼はその建物に近づくと左手で抱えていた丸い布の塊を……いや、布にくるまれた何かを雨に濡れない軒下にそっと置いた。
「どうか…お幸せに……」
彼はそう呟くと、静かに後ずさり、その場を後にした。
後に残ったのは、布でくるまれたもの……鳴き声一つ上げずに眠っている赤ん坊一人である。
その日は雨だった。
曇天の空から大粒の雨が大量に降ってくる。
その雨は、大地を濡らし続けていた。