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ロストワーカー~騙された傭兵はヒモ生活を夢に見る~  作者: ココア


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第1話:そんなこともありましたね

よろしくお願いします。基本的な投稿は月曜と金曜の朝6時になると思います。

 戦いとは、俺にとって生きる方法であり、目的であった。


 戦えば強くなり、強くなれば貰える金が増える。


 酒、タバコ、飯。強ければ自由に生きられ、全てを手に入れる事が出来た。


 何がいけなかったのか…………なんてのは今となってはどうでも良い。


 結局のところ、いくら強くても人である以上は、心臓を抉られたり、頭を潰されれば死んでしまう。


 更に言えば、多勢に無勢って奴だ。


 それは俺も例外ではなかった。


「――すまない」


 とある依頼を受けた先で待っていたのは、これまで俺と一緒に戦った事がある強者達だった。


 一対一ならば勝てるが、束となれば流石に無理だった。


 魔力は尽き、剣を握る腕も片方しか残っていない。


 敵であるならば親友でも殺すのが傭兵って奴だが、ここまでとはな……。


 二十人居た敵を四人まで減らしたが、その結果がこの様だ…。


「気にするな。やってやられてが世の常だ。最後に……一つだけ願いを聞いてくれないか?」


 倒れた俺の首に剣を当てる元親友……目がかすんで顔を見る事が出来ないが、声からして悔やんでいるのが分かる。


「――言ってみろ」

「この……剣を……お前らの誰かが受け継いでくれ」


 俺が傭兵となってから、とある遺跡で手に入れた剣。


 聖剣や魔剣と呼ばれる名剣ではないが、俺にとっては唯一無二の相棒。


 ただ頑丈で魔力の通しが良いだけだが、長期戦になる事が多い戦争ではとても重宝出来る剣だった。


 有象無象に使われるくらいならば、俺を倒した誰かに使って欲しい。


 もう片方の武器は砕けてしまったからな。


「分かった」

「ならもう悔いは無い――殺せ」


 朧気だった意識は、首を刎ねられたことで完全に落ちる。


 この戦いに悔いは無い。


 けれど、憎しみは残っている。


 裏切られるのは傭兵としての常だが、使えるだけ使い、いらなくなったら捨てる様は俺でも怒りが湧いてくる。


 誰よりも強ければ。或いは自由を捨てていれば、こんな目に遭わなかったのかもしれない。


 結構世の中に貢献してきたと思うが……まあ終わった以上は結果が全てだ。


 敗者に口無し。


 …………しかし、意識は完全に無いはずなのに、何故思考していられるんだ?


 死ぬのは初めてだから分からないが、これが普通なのだろうか?


 目を開けているのか、それとも閉じているのかすら分からないが……。


 なんて考えていると、白く光る玉が俺目掛けて飛んできて、そのまま溶ける様に消えた。


 どうやら俺は、目を開けているみたいだな。


 それからどれくらいか分からないが時間が経つと、何やら知らない記憶が俺に混じるのを感じた。


 一体何なのかと考えようとすると、視界一杯に光が溢れ始める


「産まれたわ……この子が、私の赤ちゃん……」

「ああ、よく……よく頑張ってくれた……」

「いい泣き声ですね。元気な……」


 上手くは聞き取れないが…………どうやら赤ん坊になったみたいだ――はっ?


 いや理解できないが、幸か不幸か、二度目の人生ってやつか……。


 折角ならば、今度こそ最強を目指してみるのも良いかもしれないな。







1






「こら! いつまでも寝てないで起きなさい!」

「まだ寝かせてよー」


 今度こそ最強を目指すと決めてから早八年。


 俺は今、母親に布団をひっぺがされて起こされている。


「もう……小さい頃はあんなに良い子だったのに……」

「やることはちゃんとやってるから、朝くらい許してよー」

「……はぁ」


 最初のうちは頑張っていたが、俺は途中で気付いてしまった。


 ――最強を目指すより、程々に強くなって程々に生きた方が楽だと。


 強くなれば敵が増え、増えた金は嫉妬を生む。


 俺は別に戦うことが好きなのではなく、金のために戦ってきただけだ。


 戦いこそが全てだと思い込んでいたが、転生してから冷静に考えた結果、そうだと気付いた。


 スラム生まれだったのもあるが、世の中強さだけではどうにかなるものではない。


「ステラとジオはあんなに良い子なのに、ヴィンはどうしてこうなったのかしら……」

「多分父上のせいじゃないですか?」

「……今度は何をしてたのかしら?」

「執務放棄して酒場で宴会をしてたよ」

「はぁ……」


 今日も母上は額に手を当てながらため息をつく。


 俺が最強を目指すのを止めたのは、余の不条理に気付いた事もだが、それだけではない。


「昨日の執務の半分は俺がやっといたので、褒めてくれても良いんですよ」

「ヴィンが色々とやってくれてるのは知ってるわ。だけど、だからって勉強と訓練をサボって良い理由にはならないわ。あまりメイドを困らせないの!」


 朝から怒られるものの、母上も本気で怒っているわけではない。


 今回の生まれは貴族であり、貴族らしくしろと母上は言っているのだ。


 元スラム産まれスラム育ちの俺には少し辛いものがあるが、面倒なだけで出来ないわけではない。


 さて、俺が考えを買えた理由だが、光る玉と融合? 合体して手に入れた記憶のせいだ。


 この世界とは違う世界で生きた人間の記憶。


 そこまで学の無い俺にとってはありがたいものだったが、それに伴い考え方が変わった。


 どうしてこんな記憶を持って転生なんてしたのか分からないが、生きてる以上生きるしかない。


 前は生きるためには何でもしてきたが、環境が変われば考えも変わる。


 ちゃんとした家庭に産まれていれば、あんな最後にも…………なっていた気がするな。


 どうせ俺だし。


 死ぬ前は親の愛なんて物を知らなかったが、幸運なことに男爵ではあるが貴族の生まれとなる。


 父上は騎士として国に使え、功績が認められて貴族となった成り上がりだが、騎士だったのにかなりのチャランポランであり、簡単なものは俺や母上が代わりに執務をしていたりする。


 頭が悪いわけではないのだが、単純に事務系の仕事が嫌いらしい。


 その癖貰った領地をしっかりと管理し、結果を出しているので、そこだけは流石俺の父上だと褒められる点だ。


「分かってますよ。だから着替え雑務も、ちゃんと自分でやっています」

「……もういいわ。ちゃんと今日の分の勉強と訓練をしておくのよ。サボっていたら、家庭教師をつけますからね」

「やることはやりますよ。母上には嫌われたくないですからね」


 チャランポランな父上とは違い、母上はとても素晴らしい人だ。


 貴族になったというのに偉ぶらず、家事は勿論俺と一緒に父上の執務を手伝っていたりする。


 今みたいに少々口煩いものの、親の愛というものをしっかりと感じさせてくれる良い親だ。


 まあそんな親の言う事を無視しているわけだが、働いたら負けって奴だ…………一応言われた事はしっかりとやっているけど。


 嫌われたくないというのは俺の本心ではあるが、異世界の知識でいうヒモ的な生活を目指そうとしている俺は、親からは駄目な子と見られているだろう。


 爵位についてはまだ話していないが、弟であるジオレインことジオに譲り、適当に旅に出ようと考えている。


 俺が産まれたのは俺が死んでから五年後となるが、俺が死んだせいなのか、或いは俺が戦争に介入し過ぎたせいなのか、今の世は結構平和らしい。


 魔物の被害や小競り合いはあるため、金を稼ぐ事は出来るし、商売についての知識もあるみたいなので、その方向でも金を稼ぐ事は出来るだろう。


「ご飯は出来てるから、食べたらステラの勉強を見てちょうだい。良いわね?」

「分かりました」


 今の俺は五人家族であり、その長男となる。 


 そして次男となるジオと、長女のステラティアことステラが居る。


 仲は悪いわけではないが、俺のやる気が無くなって以降は見る目が変わって来た。


 兄弟のために頑張る……のは今の俺には無理だ。


 頑張った結果が俺の死だった訳だし。


 あくまでも俺が頑張れないだけなので、面倒を見るのはどんとこいである。


 いっその事手に入れた記憶みたいに別の世界で生まれていたのならば、もう少しやる気が出たのかもしれないが、俺が死んだ世界なのは確認済みだ。


 それと、俺の死は結構な事件だったらしく、父上と母上も知っていた。


 まあ内容としては情報操作があったのか、俺が騙されて殺されたのではなく、世界の敵だから殺した事にされていた。


 そして俺が戦って殺した十六人は英雄と呼ばれ、残りの四人は勇者や聖女。賢者に剣聖なんて呼ばれているらしい。


 俺が剣を渡したあいつは嫌がっているだろうが、どうせ世界の安寧のためーだとか、民のためーとかって言われて丸め込まれたのだろう。


 あいつが死ぬ前には一度会っておきたいが…………あんまりやる気が出ないな。


 とりあえあず着替えてから食堂に行き、メイドではなく母上が作った料理を食べて、ステラの部屋に向かう。


「おはようステラ。来たぞ」

「やっと来たのね。駄兄」


 出会って最初の一言が罵倒か。


 流石俺の妹だ。



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