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第3章:現場検証

1.新鷹ノ洞 ― 封鎖された海食洞


 事件の舞台となった「新鷹ノ洞(しんたかのほら)(仮名)」は、S県東部の断崖沿いに位置する自然形成の海食洞である。かつては地元の観光協会が「海の鍾乳洞」としてプロモーションを行っていたが、1985年に2名のケイビング愛好家が遭難、さらに1990年代には部分崩落が確認され、現在は立ち入りが禁止されている。


 地形図上では、「全長約150m、最大深度38m、内部に複数の空洞を持つ」とされているが、詳細なマッピングは行われておらず、構造の一部は未だ不明のままである。


 事件後の9月、民間の海洋調査会社「DEEP FIELD社」が現地調査を行い、その調査レポートの一部が家族の同意を得て公開された。


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2. “裂け目”の存在


 立花が最後に潜ったとされる「縦の裂け目」は、洞窟の奥からおよそ70m付近に位置する。垂直方向に深さ8〜10m、幅1.5m前後の亀裂で、外見はまるで“岩盤が上下から押し開かれた”ような異様な形状をしている。


 DEEP FIELD社の水中スキャン画像には、岩肌に対して明らか人工的とも思える直線的なカット跡が記録されている。そのため、一部の研究者の間では「自然洞ではない可能性」すら示唆されている。


 以下は、調査チーム責任者・長谷川潤のコメントである:

「問題の裂け目には、強い磁場異常が確認されました。

 コンパスが5〜8度ずれ、水温も部分的に上昇していました。

 海流の流れとは逆方向に、なぜか物が引き込まれる現象も観測されました。」


 また、裂け目の奥からは明確な反響音が返ってきた。これは通常の海食洞では極めて稀であり、音響解析において密閉空間がさらに奥に存在している可能性が高いと判断されている。


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3. 映像記録:不在の4分間


 早川真帆のカメラには、立花と並行して撮影された水中映像が一部残されていた。その中に、立花が裂け目に近づく姿が約2分間映されているが、その後、カメラは謎のノイズで映像を失い、4分間が完全に黒画面となっている。

 驚くべきは、その4分間にも音声のみが断続的に記録されていたことである。


 録音には、以下の異常が含まれている:

 •“石をゆっくりと擦るような音”

 •“三回ずつ繰り返されるノック”

 •女性とおぼしき低い声による“何かの呼びかけ”のような囁き


 特に最後の音声について、音声研究者・工藤圭一は次のようにコメントしている。

「解析結果では、周波数帯が人間の可聴域に近いものと重なっているが、発声源が水中かどうかの判別ができない。

 加えて、声が“逆再生されたかのような構造”をしており、音としてではなく、聴覚刺激として脳に直接押し込まれる感覚を与えます。」


 彼はこの現象を“擬似言語的ノイズ”と呼んでいる。


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4. 映像の最終フレーム


 立花のGoProは回収されなかったが、立花のノートPCには自動同期されるクラウド機能が搭載されており、撮影中の一部映像が断片的に保存されていた。


 映像のラスト2フレームは、不可解なものが映り込んでいる

【最終フレーム(解析画像)】

 •画面中央にぼやけた“白い塊”

 •その周囲に“環状の構造”が微かに確認できる

 •最も注目されたのは、左下に映り込んだ“楕円形の影”

 •拡大すると、眼球のような模様が浮かび上がっていた


 水中においてこのような視覚情報が残るのは異例であり、この映像の解析者は「錯視現象によるノイズ」として片付けているが、この“目”こそが、彼を呼んだ存在なのではないかと推測される。


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5. 過去の失踪者:1985年の記録


 立花慎吾の失踪には、過去に同じ場所で起きた失踪事件との奇妙な符合がある。1985年8月、地元の大学生2名がケイビング中に洞窟奥へ入り、1名が消息を絶った。当時の報道では「潮の流れに巻き込まれた事故」とされていたが、もう1名の生還者・藤森誠(仮名)が残した音声記録(報道音源テープ)には、次のような供述があった。


「水の中で誰かがノックしてたんです。岩を、一定のリズムで。

(謎のノック音が複数回混入)

 それで、K(失踪者の名)がそっちへ泳いで行った。

(3秒間の沈黙)

 声も聞こえたような……女の人の声で、“返して”って言ってた気がする。」


 この証言は立花の音声記録と酷似しており、再調査が行われる可能性も検討されたが、当時の資料の大半は既に処分されていた。


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