「星のまたたき」(Twinkling Stars):隼人×咲蘭
#記念日にショートショートをNo.37『星のみちび』(Thread of a Star)
2020/7/7(火)七夕 公開
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【関連作品】
「星のまたたき」シリーズ
僕らは天体観測が趣味だ。
それをお互いに認識したのは、高校の部活の強化合宿でのことだったと思う。
僕はテニス部に所属していて、咲蘭はマネージャーをしていた。
それぞれの部屋で男子はトランプ,女子は恋話をして盛り上がっている中、夜の0時近くに一人で屋上に出た時のこと。
クラスメイトの吉野さんが、星空を見上げていた。
「吉野さん、星、好きなの?」
そう声を掛けながら隣に腰をおろすと、吉野さんはうっとりとした表情で星空を見上げ、頷いた。
「うん、大好き。空はどこまでも続いていて、その永遠の大地にたくさんの命が輝いているんだなって。」
吉野さんが瞳を綺麗に輝かせて言う。暗い夜に、映える瞳。
「頬、大丈夫?」
昼間の練習で、部員が軽く打った球が、頬に当たってしまったのだ。
「うん、大丈夫。あの時はボーッとしていて……。」
吉野さんはそう言うが、球打ちの軽いボールとは言え、ボールが当たったことに違いはない。ましてや顔にだ。特に女の子にとっては、傷が残ったりでもしたら…それは嫌なものだろう。
「ちょっと頬見せて。」
潜在的な、直感的な意識のもとで、吉野さんの頬に手を伸ばす。
「あっ……!」
吉野さんの少し紅らんだ驚いた表情に、自分のしようとしている行為が与える意味を理解する。
「ごめん…!傷が残っていないか、気になって。」
「ううん、私こそごめん。」
頬に熱をのせて目線を落とす吉野さんの表情に、気付こうとしないように言葉が漏れていた。
「好きだ。」
吉野さんの肩が、小さく震える。そして焦り顔で言葉を無理矢理当てはめ、視線を星に逃した。
「あ!星が、ね!!」
少し頬を上気させて、吉野さんが上を見上げる。
その動作に、これ以上ここに居させたくない感情が僕の中で湧き上がり、口を突いて出た。
「違うよ。」
「吉野さんのことが、前から好きだったんだ。」
吉野さんが、顔を真っ赤にさせて、僕を見つめていた。
やがて、少し肩を震わせながら、吉野さんが目をつぶり……そして言葉を落とした。
「わ、私も……木谷くんのことが……好き……!」
気が付いたら、キスをしていた。
熱が、暗い夜に、浮遊していた。
顔を離した直後に見えた吉野さんの顔の極限の紅さに、自分のした行為がようやく形となって記憶に現れる。
「ご、ごめん!急に…その…」
慌てふためく僕の耳に、吉野さんの小さな声が、鮮明に、そこだけ透明な幕の中を一直線に切り開いて、聴こえる。
「ううん、嬉しい……。」
すぐ隣りにいる人に、心臓が、主張する。
「…付き合って……もらえますか?」
最後にもう一つ、勇気を振り絞る。
「はい……。」
咲蘭の声。
一点一点に光を灯しながら、夜空は今日、そこにあった。
【登場人物】
●木谷 隼人(きたに はやと/Hayato Kitani)
○吉野 咲蘭(よしの さくら/Sakura Yoshino)
【バックグラウンドイメージ】
【補足】
【原案誕生時期】
公開時