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「星のまたたき」(Twinkling Stars):隼人×咲蘭

#記念日にショートショートをNo.37『星のみちび』(Thread of a Star)

作者: しおね ゆこ

2020/7/7(火)七夕 公開

【URL】

▶︎(https://ncode.syosetu.com/n8175id/)

▶︎(https://note.com/amioritumugi/n/n72ff719ea61b)

【関連作品】

「星のまたたき」シリーズ

 僕らは天体観測が趣味だ。

それをお互いに認識したのは、高校の部活の強化合宿でのことだったと思う。

僕はテニス部に所属していて、咲蘭はマネージャーをしていた。

 それぞれの部屋で男子はトランプ,女子は恋話をして盛り上がっている中、夜の0時近くに一人で屋上に出た時のこと。

クラスメイトの吉野さんが、星空を見上げていた。

「吉野さん、星、好きなの?」

そう声を掛けながら隣に腰をおろすと、吉野さんはうっとりとした表情で星空を見上げ、頷いた。

「うん、大好き。空はどこまでも続いていて、その永遠の大地にたくさんの命が輝いているんだなって。」

吉野さんが瞳を綺麗に輝かせて言う。暗い夜に、映える瞳。

「頬、大丈夫?」

昼間の練習で、部員が軽く打った球が、頬に当たってしまったのだ。

「うん、大丈夫。あの時はボーッとしていて……。」

吉野さんはそう言うが、球打ちの軽いボールとは言え、ボールが当たったことに違いはない。ましてや顔にだ。特に女の子にとっては、傷が残ったりでもしたら…それは嫌なものだろう。

「ちょっと頬見せて。」

潜在的な、直感的な意識のもとで、吉野さんの頬に手を伸ばす。

「あっ……!」

吉野さんの少し紅らんだ驚いた表情に、自分のしようとしている行為が与える意味を理解する。

「ごめん…!傷が残っていないか、気になって。」

「ううん、私こそごめん。」

頬に熱をのせて目線を落とす吉野さんの表情に、気付こうとしないように言葉が漏れていた。

「好きだ。」

吉野さんの肩が、小さく震える。そして焦り顔で言葉を無理矢理当てはめ、視線を星に逃した。

「あ!星が、ね!!」

少し頬を上気させて、吉野さんが上を見上げる。

その動作に、これ以上ここに居させたくない感情が僕の中で湧き上がり、口を突いて出た。

「違うよ。」

「吉野さんのことが、前から好きだったんだ。」

吉野さんが、顔を真っ赤にさせて、僕を見つめていた。

やがて、少し肩を震わせながら、吉野さんが目をつぶり……そして言葉を落とした。

「わ、私も……木谷くんのことが……好き……!」

気が付いたら、キスをしていた。

熱が、暗い夜に、浮遊していた。

顔を離した直後に見えた吉野さんの顔の極限の紅さに、自分のした行為がようやく形となって記憶に現れる。

「ご、ごめん!急に…その…」

慌てふためく僕の耳に、吉野さんの小さな声が、鮮明に、そこだけ透明な幕の中を一直線に切り開いて、聴こえる。

「ううん、嬉しい……。」

すぐ隣りにいる人に、心臓が、主張する。

「…付き合って……もらえますか?」

最後にもう一つ、勇気を振り絞る。

「はい……。」

咲蘭の声。

一点一点に光を灯しながら、夜空は今日、そこにあった。

【登場人物】

●木谷 隼人(きたに はやと/Hayato Kitani)

○吉野 咲蘭(よしの さくら/Sakura Yoshino)

【バックグラウンドイメージ】

【補足】

【原案誕生時期】

公開時

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