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涼介と湊

「というわけで、期末テストの範囲は以上の通りです。来週からテスト期間ですが、体調管理に気を付けて下さい。これで、私の講義を終わります」


教授がそう言い終わると同時にチャイムが鳴った。


「おい、授業終わったぞ。起きろ」


横で安らかに眠っている涼介の頭にスマホの角をぶつけた。思ったよりドンっと鈍い音がした。


「ってーな、なんだよ」ぶつけられたところを手で押さえながら、眠たそうに眼を細めてこちらを見た。


「授業終わってるぞ」


「まじかよ」


「早く帰ろうぜ」


「ん」


講堂を出ると熱気が肌を撫で、すぐに汗をかかせる。


もうすぐ期末テストとレポートを大量にこなさなければならない。出席がギリギリだからテストとレポートで頑張らないと単位が結構やばい。


それを乗り越えると二か月近い夏休みが待っている。


「あっちーな」


「なー」


涼介がシャツをパタパタさせて風を送らす。


ちらちらとシャツの隙間からかすかに割れたしなやかな腹筋が見える。


空には見本のような入道雲が存在感でまわりを圧倒させていた。


アスファルトを踏みししめるたびに陽炎が大きく揺らめいた。沿道沿いにはニパッと笑うかのようにヒマワリが立ち並んでいる。



涼介がなかなか隣に来ないので後ろを振り返ると、何かをじっと見つめていた。


涼介のところまで数歩下がり、涼介の視線の先をみると猫がいた。ブロックの塀の上で暑そうに体を横たわらせている。


白と黒のぶち猫は凝視する涼介をものともせず、のんびりと遠くをながめていた。


まるで世界には猫と涼介しかいないように見つめていた。



しばらくの間、涼介が歩き出すのを待っていたが、我慢しきれずおれは声をかけた。


「ねこ、かわいいな」


「うん。ここのしっぽの曲がり方が最高」


猫は体に沿うようにくるりとしっぽを収納していた。


「いいよな、ねこは。自由が職業みたいなもんだから」涼介はねこを心からうらやましがるかのように言った。


「じゃあ、人間の職業は?」俺は問うた。


「進歩という名の環境破壊」


「むなしいな」


「そんなものだろ」


どこか遠くの方で政治家が地球温暖化について、化石燃料について、そして原発について一生懸命叫んでいる。


拡声器で声を出しているのか、声がキンキンと鳴っていた。


俺たちは顔を見合わせ、ふっと同時に笑った。


猫がちいさくにゃおんと鳴いた。

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