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ラプラスの人工天使  作者: 仮称
冒険者試験編
3/8

ACT2/島流しver.異世界

 6月24日 異世界にて


 とあるギャング集団が壊滅させられた。


 名前は『トード』。

 国内だけで組員数も3340名、とバレスケープ国内最大規模。

 崩壊の原因は事故でも、警察組織による介入でも、ましてや抗争ですらなかった。


 それは、たった1人の少年であった。


 名前は『古賀達也(こがたつや)

 正体は地球出身の元傭兵である。



――時は遡るほど2日前


 古賀は大きく口を開けて、澄んだ空気を吸い込む。

 早朝の冷気に肺が暴れていた。

 袈裟に掛けられたギターケースの紐が黒々と光る。


 現在の時刻は、5時半を少し回ったところである。

 けだるげな眠気の一方で、刺す様な肌寒さが古賀には妙に心地よかった。


 古賀とエソラ、そして黒服の男は互いに顔を見合わせる。

 ちなみに黒服の男だが、先ほど古賀が無理矢理連れて行こうとした彼とは別人である。

 しかし先の彼が、あれ以上に抵抗した訳ではない。


 たまたまそこに居合わせた、彼の同僚が自ら交代を名乗り出たのだ。

 とは言え別に黒服2人の間に熱い友情やら、因縁の過去の様な複雑なバックボーンがある訳ではない。

 同僚の自由意志に根差す、自主的志願であった。


 ひとまず、前話の黒服をA、名乗り出た方をBと呼ぼう。

 Bは加入してから年月が浅いそうだが、一方で仕事は優秀で腕が立つそうだ。

 壮年の男が惜しそうな顔をしていた辺り、事実であろうとの判断で、古賀は彼を連れていくことにしたのだ。

「じゃ、行くか」

「あ、その前に、自分はジョー……」

「あー名前はいい。茶髪って呼ぶからよ」


 あ、はい!と黒服(ちゃぱつ)はやけに仰々しく頭を下げる。

 それに対し、まるで狐に化かされた様に、面食らった顔の古賀。

 茶髪は古賀にその理由を尋ねた。

「んあぁ、俺はガキの見た目なのに、妙に礼儀正しいんだなって」

「そりゃあもちろん! クオリアさんから、たくさん聞かされておりますもの!」

 茶髪は大げさに両手を広げて、目を輝かせる。


「年齢は14にも拘わらず、『膨大な知識教養』『堪能かつ豊富な語学力』『極めつけに圧倒的な戦闘力!』 いやー男が憧れるのも無理はないっすよ。特に銃器の扱いがズバ抜けてるとか、まるで"一流のスパイ"って言うか。"傭兵"みたいでカッコいいです!」

 テセウスでの活劇は仲間の間でも持ち切りでしたよ、と茶髪は続けた。


『テセウス』とは、数日前にここ、『バレスケープ』王国の港に停泊した豪華客船の名前である。

 そして『バレスケープ王国』

 これまた地名で分かる通り、ここは日本ではない。


 ――そして地球でもなかった。


 人口80憶人超えの、この"異"世界に置いて、地球出身者は『古賀達也』ただ一人。

 早い話が、彼は異世界に迷い込んでしまったのだ。

 それも憑依と言う形で。

 更にはその対象と言うのも、中学生の子供(ガキ)である。


 これで今までの言動や立ち回りにも説明がつくであろう。

 なんせ実年齢は、見た目のソレの倍なのだ。


 しかし栄光の傭兵時代も既に過去の話。

 英雄、古賀達也は一度死んだ。

 不死身の異名も、今や文字通り形無しである。



 茶髪のキラキラとした眼差しに、古賀は苦笑い。

「褒められたもんじゃねぇよ。結果的にクオリアには"貸り"作っちまった」

 ――口先では謙虚にのたまう古賀だが、実は今朝のひと悶着。

 適当にごねてギャングの頭に"貸し"を押し付けよう、と言う彼の陰湿で狡猾な立ち回りが原因であった。


 そんなことはつゆ知らない茶髪。

「なんて謙虚な方だ!」

 彼は更に感激した表情で、まるで古賀を拝むかのように両手を組ませる。



「でも古賀さんがいなければ、テセウスは沈んでいたと伺っています。幾ら貴方が謙遜なさっても、オレからすれば壮年の男(オヤジ)(タマ)救ってくれた恩人である事には変わりありません」

「確かにそう考えると、俺のワガママも"労災"の範囲内かもな」

 ――とはいえ2億は破格だが、と古賀は軽く舌を出す。


 目の前の金額にビビッて、思わず適当な理由をつけ押し返してしまった為。

 内心"してやられた"と苦い顔の古賀だが、結果的にそれが彼への評価を一段押し上げた事には気が付いていなかった。

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