第4話 なんだか羨ましくて
「花蓮ちゃん、私たちと一緒に、アイドルやろう!」
従姉妹のちなちゃんに言われたからここに来ると。見知らぬ三年生にいきなり手を掴まれ、アイドルになろうと言われました。
…いや、なんで?
なんで私のことを知ってるの…多分それはちなちゃんが話したんだろうな。でもって、アイドル?いきなり何の話?
私が戸惑っていると、教室の中から声がした。ほんわかしているけど、呆れたような声。
「瑠奈、その子、戸惑っているわよ。きちんと説明しなきゃ」
その、先輩…であろう人の声に目の前の三年生はハッとなり、掴んだ私の手をパッと離した。
そして、
「ごめん!とりあえず、教室の中に来てもらってもいい?」
と、両手を合わせながら言われた。
言われるがままに教室の中へ入ると、さっきの三年生の他に二人、人がいた。おそらく三年生だと思う、けど。
「テキトーに座って〜」
と、ロングヘアの三年生に言われたため、まあまあ三人に近い椅子に座る。
私が座ったのを見計らって、ボブヘアの先輩が口を開いた。
「さっきはごめんね、瑠奈が暴走しちゃって。私は吹雪実莉、三年生。さっき暴走したこの子が野沢瑠奈、私の左側にいるロングヘアの子が雨宮颯姫よ。初めまして、花蓮ちゃん」
さっきの声の人だ。吹雪実莉先輩というらしい。そして私の手を掴んだのは野沢瑠奈先輩、吹雪先輩の隣にいる人が雨宮颯姫先輩。
私がそうやって先輩たちの名前を反芻していると、野沢先輩が口を開いた。
「あのね、花蓮ちゃん。早速だけど本題に入るね。花蓮ちゃん、私たちと一緒に、アイドルやってみない?私ね、ここにいる颯姫と実莉と、あと六人集めて、ハイドラに出たいの。それで、千夏からめちゃくちゃ可愛い子がいるって、花蓮ちゃんを紹介されたの。会ってみて、確かにめちゃくちゃ可愛いし、いい子だなって思ったの、だから、一緒に、ハイドラに出ませんか!?」
ハイドラに出たい…さっきのアイドルっていうのは、やっぱり聞き間違いじゃないんだ。
先輩達は悪い人じゃなさそうだし、別にやりたい部活がある訳でもない。やったっていい。
でも、アイドル、か…
アイドルってことは、人前に出るんだよね。人前に出るのは、もうなぁ…
答えない私を見て、雨宮先輩が言う。
「大丈夫だよ、花蓮ちゃん。瑠奈は馬鹿だけどちゃんと日本語で話せば通じるからさ」
その言葉に、「ちょっとぉー、さつきぃ!」と怒る野沢先輩。そして、そんな二人を呆れた顔で見ながら、
「二人とも、花蓮ちゃんの前なんだからやめなさいな」
と言う吹雪先輩。
なんか、楽しそうだなぁ。こんな風に笑い合える友達がいないから(まあ今日入学式で、ちなちゃん以外は誰も知り合いがいないから当たり前ではあるんだけど)、少し羨ましい。
もし、この中に入れたら、私の高校生活は楽しいかな。きっと楽しいよね。
そう思って、私は口を開いた。
「あの、先輩」
すると、三人がバッとこっちを向く。
え、なんか言いにくいなぁ。でも、言わなきゃ。
「私、入ってもいいですよ。……ただ、お願いがあるんですけど」
私の言葉にやったー!と喜んだ後、
「お願いってなあに?」
と野沢先輩が言う。
「私の他にも、一年生を入れて欲しいんです」
そう、私のお願いとは、一年生を入れることだった。たとえクラスが違っても、部活がきっかけで友達になれたらと思ったのだ。
「なんだ〜、そんなことか。もちろんいいよ!じゃあ、これからよろしくね!」
と野沢先輩。
なんか、話がトントン拍子で進むなぁ。まあ、いっか。我ながら単純だなぁ…先輩たちのが移ったのかも、なんてね。
そんなことを考えながら、私は言った。
「よろしくお願いします!」




