第26話 背中を押したい
「よし、じゃあ早速撮ろっか!」
日曜日の午後。殊乃さんを中心にして始まった撮影はおおよそ順調に進んでいました。土曜日と午前中の猛練習もあって、ダンスも歌も割といい感じ(まあ、サビ以外を一人ずつにして、合わせパートを減らしたから歌いやすくなったんですけど)。
あと、ダンスよりムービー多めにしたことで、編集の手間はあるけどダンス練習も少し減らせたのも大きいような……
まあ、それはいいとして。結果的にいいPVが作れそう、かな。曲も歌詞も全力を注いで、衣装だってダンスだって一生懸命考えてくれたものだもん、きっと瑠奈さんたちも考えを変えてくれるはず。
撮り終えたら花蓮ちゃんと殊乃さんは帰るし(流石に三日連続は親御さんが心配しちゃうから)、悠里たちが頑張らないと。
「悠里ちゃんー?大丈夫?」
あっ、いけない、考えに没頭しすぎちゃった。心配してくれたのか、殊乃さんが首を傾げながら言った。
「だ、大丈夫、ですっ……!」
きっといいPVになる。きっと瑠奈さんたちを説得できる。
だから、今はこっちに集中。憧れの高校生アイドルの活動なんだ、全力でやらなきゃ。
「よーし、次のパート行くよー」
「「「はい!」」」
そんなこんなで一曲分の動画と挿入用の画像を撮り終えたころには、もうすっかり夕暮れで。花蓮ちゃん、殊乃さんはそれぞれ隣の市だから、電車を使ってお家に帰りました。
悠里の家と真奈ちゃんの家は近いから、夜遅くまで編集作業できるね。さすがに悠里一人だと無理があるもん……
と言ってもやっぱり時間がかかって、終わった頃には二人とも疲れ果てていました。真奈ちゃんをおうちまで送ったあと、お風呂は明日の朝にしようか、なんて考えながら歩いていると。
「あ、悠里……」
悠里にそう声をかけてきたのは、絶賛喧嘩(?)中の皐月ちゃん。前は悠里ちゃんって呼んでいたのを呼び捨てにしてくれるようになって、チームみたい!なんて喜んでいたけど。今はなんだか、名前を呼ばれるのが痛いな……
「こんばんは、皐月ちゃん。お散歩?」
「あ、うん、まあ、そんな感じ……」
皐月ちゃんはどことなく歯切れが悪くて。皐月ちゃんも迷ってるのかな、なんて思いました。
「あの、さ。どうするの?何か考えがあるの?」
覚悟を決めたような表情で問うてくる皐月ちゃん。
「あのね、皐月ちゃん。悠里たち、諦めないよ。動かなきゃ未来は変わらない……だから、悠里たち、頑張ったの、未来を変えるために……瑠奈さんたち皆を説得して、アガーシャと戦うために」
そして、はっとした顔でこっちを見る皐月ちゃんの目を見て、言いました。
「皐月ちゃん。グループチャット、見てね。よろしくね。おやすみなさい」
そうして急いで家に帰ると、グループチャット(ちなみに殊乃さんはまだ入ってないです)を開いて、一本の動画とコメントを投稿しました。
『この動画が、私たち一年生三人と、殊乃さんの気持ちです。私たちはアガーシャと戦います。負けるかもしれないけど、やらないと変わらないから。だから、皆が戻ってこなくても、私たちは諦めない。アガーシャと戦って、私たちだけでもハイドラに出てみせます』
『タイトルは、【夢色マーチ】です』
夢色マーチ。
高校生アイドルは悠里にとって憧れで、悠里は高校生アイドルになることを夢見ていました。
そんな悠里自身の背中を押したくて中学時代に作った曲をアレンジした、今回の曲。
この曲が、どうか皆の背中を押すような曲になりますように。




