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ブリランテはここで。  作者: 彩瀬 まる
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部員たちの作戦


部活動生は夏の大会に向けて最大の力を振り絞り、汗を流し、泣き、笑う。そんな青春を体験しているひとつの部活として、吹奏楽がある。

彼らは指揮を中心に全員が主役となり音楽によって人を感動させる。

あの瞬間の彼らは、間違いなく1番輝いている。あの時と違い……


*


今日は始業式。私達は新たなクラスと新たな担任を迎えた。玄関前に貼られているクラスのメンバーの名前に目を向けていた。

「3組…3組……あ!!紗月さつきもいるじゃん!」

陽菜ひな〜!!!」

「ちょうど良かった!紗月!同じクラスだよ!!!」

私のクラスに吹部がいて良かったな。やっぱり部活の子の方が一緒にいる時間が長いのか、行動する友達は吹部一択だったから。

教室に戻ったら、3年連続で同じクラスの真希まきが話しかけてきた。

「3年連続とか神っっ!

てかさ、顧問表みた?『吹奏楽 松崎先生』って書いてあったんだけど、うちらの担任だよね?どの先生か分かる?」

ああ、そう言えば顧問表見てないや。前頼りにしていた顧問が異動になっちゃって現実から逃げてきてたんだ。

「………見てない。」

相当落ち込んでいた声だったのか、真希は申し訳なさそうにしていた。しかし本当に前の顧問の畠本先生が好きだったのは事実だ。厳しいものの、細かく指導して下さっていたのは嘘偽りない。

でも決めたのだ。新たな1歩を踏み出して、新しい顧問と頑張るってことを。


─キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン ─

そんなことを考えているとチャイムがなった。


「こんにちは。今日この学校にきた松崎直斗まつざきなおとです。新任ですが精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!教科は英語です。」

そう言った瞬間、いやその前から、教室がザワザワしてきた。私たちの学年では、『新任の先生』をあまり好んでいなかったから。

1年の時も、2年の時も、新任の先生の授業は案の定にグダグダしていて、2人共事情があり教師を辞めていった。その“事情”は恐らく人間関係なんだろう。この学校は治安が悪く、頻繁と言えるほど親が学校に呼ばれているのをよく見る。きっと生徒と絡んで何かしら先生という職業に違和感を感じたのだと思う。

だから多分この先生も辞めていくのだろう。私たち3年の先生、なのに新任、副顧問ではなく顧問。そういった所から生徒から批判を受けていくんだろうなって目に見えてはいた。


あの日から1ヶ月が経った。松崎先生はやっぱり授業はグダグダ。生徒からも批判を受けている。だけど一つだけ違った。あの先生、生徒の批判聞こえてないのかな位にメンタルがくそ強い。どれだけ言われても「みんなのために頑張るよ」の一言で返している。

あの日決心したことは、絶対に守るつもりだ。


だから、それだから、みんなの意見には賛成できない。…


*


ガラガラッ───

古びた部室のドアを開けた。

春休み明けの、初めての部室で待っていたのは新任の顧問、松崎先生。

一緒に部室に来ていた真希は、来る途中私に向かってこう言っていた。

「あずさちゃん、顧問新任みたいだね。これじゃさぁ、私たち3年の最後の夏、大変なことになりそうだよね。


だからさ…………追い出しちゃおうよ。」

「え??」私はそう答えた。何を言っているかわからなかった。数秒経ってから、理解ができた私は、「いいね!!!」と言った。理由は一つ。松崎は新任で苦手だから。


*


あの作戦は部員に広まっていった。始業式から1ヶ月。この日陽葵にもこの事が伝わったのだ。賛成しない陽葵は徐々に後輩にまで嫌な目をされることがあった。でもその覚悟で決意していたから、と自分の意志を貫いていた。


次の日、部員たちに不幸なニュースが耳に入った。

真希が自殺したらしいのだ。

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