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人生がつまらない僕 前編

 僕は滝田学園メンタルティーチャーの米谷(よねや)(じん)です。

 私立である滝田学園にのみ存在するこの役職は、名前の通り生徒のメンタルをケアするために生まれました。似たような役職は数あれど、私の仕事は悩みを受けて対処はしません。生徒にこちら側から話す、そんな仕事です。


                  僕



 僕は人生がつまらない。もうわかっている、自分が日常から抜け出せないのも。それどころかこの当たり前の生活こそが幸せということもわかっているつもりだ。でも、それでも心躍るような展開を、絶対に起きるはずがないとわかっていながら、諦めずにはいられない。

 いつものように下駄箱を開ける、床に上履きを放り投げ履こうとするがその拍子に何かが下駄箱から落ちた。

 それは突然、僕を非日常へと、僕の本当に待ち望んでいた道へと誘った。ラブレターのような紙だった。ラブレターだったならまた別の僕にとっての非日常が待っていたかもしれなかったがその時はすぐに悪戯だろうと考え苦笑いして裏を見る。

 そこにはただ一言


 昼休みに寄ってください 米谷 仁


 と、書かれていた。米谷仁とは誰だったか、どこかの先生だった気もするが思い出せない。この一年間の僕は聞いたこと見たこと全て「知らないわからない興味ない」で通していたから仕方ない。だが少なくとも女ではないだろう。そんなことよりも問題はこの手紙の間違い箇所だ。寄れと書いてあっても肝心の場所が書いていない。これでは米谷のもとにはいけないじゃないか。折角の非日常への道は早くも閉ざされようとしていた、なんてまだ気が早い。この一年間僕はコミュニケーションとは程遠い生活をしていたが、学校というシステムはクラスというものがあるので何もしなくても人がいる。当たり前と言えば当たり前だが社会に出れば自分がコミュニケーションをしなければ誰とも話せなくなると僕は予測している。とは言えやはり長い間話していないとなかなか話しかけるのには勇気がいる。しかしここでチャンスは捨てられない。迷いを捨て話しかけよう。誰がいいか、やはり話しにくいとは言え同性の方が圧倒的に話しやすい、あまり喋らない自分と同じような人はいないだろうか。そんな時一人の男子が目に止まった。確か名前は......思い出せないがいける気がする。とにかく話しかけてみよう。


「あの〜」

「何?」

「すいませんちょっといいですか?」

「いいけどなんで敬語?wクラスメイトなんだからタメでいいだろ。確か白木 惇だったか?」

「ああ、そうだ、えっと米谷仁て人知ってる?」

「あああれだろ、なんか新しくできたメンタルなんちゃらの先生。」

「おお、それみたいだ、どこにいるかわかるか?」

「え、メンタル室にいるんじゃねーの」

「よし、ありがと、な。えっと.......」

「山田 将也だ。改めてよろしくな。」

「おう、よろしく。」

 話が終わるときりがよくチャイムが流れた。いつもなら長く感じる朝の時間は少し話しただけで終わっていた。人と話すのも少しいいな、と思えた。


                Now loading


 昼休みがようやくやってきた。やりたいことがあるといつも何倍も授業が長く感じるあの感覚も久しぶりだった。

心躍らせてメンタル室へ向かった。



 〜注意:ここからは大幅アップデートが必要です。このアップデートには多くの電力を必要とする為、充電された環境でのアップデートを推奨します。また、このアップデートには多くの時間を伴います〜

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