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あ、うん。  作者: 雨世界
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「梢さんは最近、なにか悩みごとでもあるの」と明日香の担任である深町先生が言った。

 二人は放課後の教室にいた。

 少し話があると言って、明日香は深町先生に呼び出されたのだ。

「成績は下がっていないし、もちろん生徒のプライベートなことに口を出すつもりはないんだけどさ……、ここ最近、見ていて明らかに元気がないから、どうしたのかなって少し気になっていてね」と深町先生は言った。

 深町先生はとても優しい落ち着いた雰囲気を持つ男の先生だった。ぼんやりとしているけど教育熱心で、ぼさぼさの髪と黒縁のメガネが特徴的だった。

 深町幸太郎先生。深町先生はその独特の雰囲気から、結構一部の女子生徒に人気があった。明日香はそんなことはなかったのだけど、茜なんかは半分冗談、半分本気くらいの感じで「幸太郎先生と付き合いたい。いやむしろ幸太郎先生と結婚したい。結婚して幸せになりたい」と言っていた。ちなみに深町先生は独身で年齢は三十二歳。ちょうど明日香たちの倍に当たる年齢だった。

 明日香はそんなことありません、と言って深町先生に言い訳をした。もちろん恋の相談などできるわけもないので、いろんな理由をつけてごまかした。

 深町先生はそれで納得したわけではないようだけど、「わかった。なにか相談事があったらいつでも相談してね」と言って、その日の二人の面談は終わった。

 深町先生にとっては明日香はたくさんいる生徒たちの一人に過ぎなかった。明日香はそれがよく理解できていたので、これ以上、変に深町先生に心配をかけることは予想と思った。

 明日香は北高ではできるだけ普段通りに振舞っていたつもりだったけど、朝陽先輩のことといい、どうも私はこういった演技が本当に下手なんだなと痛感した。

 梢明日香は、今まで自分を偽る演技なんて一度もしたことがなかったのだ。

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