表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/123

70

 桜の家出は三日で終わった。

 それは儚い抵抗だった。

 桜が夜に小森神社に帰ろうとした際に、鈴は「遅い時間だし、送っていくよ」と言ってくれたのだけど、迷惑をかけちゃったし、考えごとをしたかったので、桜はその申し出を「ありがとう。でも、大丈夫だよ」と言って断った。

 桜は鈴にさよならをした。そんな桜の後ろ姿を鈴は心配そうな表情で見送っていた。

 帰り道、逢坂と呼ばれる出会いの名所で桜は一人「はあ」とため息をついた。

 なんだかすごく鈴に差をつけられてしまったような気がする。……これが恋の力なのだろうか? それとも、ただ単に鈴の努力が実を結んだってことなんだろうか?

 桜は考える。

 ……いや、律くんの出会いは、律くんとの恋は、きっと、きっかけに過ぎない。

 変わったのは、成長したのは鈴の力だ。

 だって、もしこれが恋の力のおかげだとしたら、私は、たとえばもし、違う世界の違う運命の中で律くんと付き合えたとしても、今の鈴のようになれたかというと、たぶん、なれていないから。

 私なら、きっと、もっと律くんに甘えちゃう。

 それでどんどんだめな方向に二人で向かっていっちゃうような気がする。

 結局、やっぱり律くんと鈴はお似合いの恋人同士なんだ。

 ……いいな。


 桜が小森神社の鳥居のところまでやってくると、そこにある街灯の明かりのところに、一人の桜と同じ高校生くらいの少年が立っていた。

 少年は背が高く、上も下も、真っ白な服をきていた。少年は青白い顔をしていた。少なくとも健康的ではない。髪も自然のまま、と言うかぼさぼさだった。

 少年は逢坂を登ってきた桜に気がついてこちらを向いた。

 その少年を初めて見たとき、もしかしたらこの少年は幽霊かもしれないと、小森桜はそんなことを思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ