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季節はいつの間にか春から夏になった。
南高は夏休みの時期になって、一ヶ月以上のお休みになった。
その夏休みの中頃、小森桜は家出をした。
もうなにもかもが嫌になってしまったのだ。
巫女の仕事が嫌だった。
小森神社が嫌いになりそうだった。
お父さんとの会話が面倒臭かった。
だから家を出ることにしたのだ。
桜が家出をした場所は、親友の池田鈴の家だった。
鈴の両親は「いらっしゃい、桜ちゃん」「ゆっくりして行ってね」と言って桜のことを歓迎してくれた。鈴はなんだか変な顔をしていた。
「お邪魔します」そう言って桜は鈴の家にお邪魔した。
「あんたなにやってんのよ?」と鈴は言った。
「私にもわかんない」
鈴のベット上でだらしなくごろんとなっていた桜はそのままの姿勢でそう言った。
「桜のお父さん心配してるよ、きっと」
「だいじょうぶ。ちゃんと手紙を置いてきたから。鈴のところにいますって」コンビニで買い込んできたお菓子を食べながら桜は言う。
「それって家出じゃなくない?」鈴は言う。
「家出だよ、家出。もう本当に嫌になっちゃったの。こんな生活」桜は言う。
「巫女さんのこと?」
「……まあ、だいたいそんなこと」
そこまで話したときに、鈴の電話がなった。
鈴は電話に出て、楽しそうな顔で電話の向こう側の人物と会話をする。桜はそんな鈴の体を両足でがっしりと捕まえた。
「うん。わかった。じゃあ、またあとでね。うん。……私も」そう言って鈴は電話を切った。
「誰から?」桜は言う。
「桜。その格好、みっともないよ」鈴は言う。