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「私は、秋山律くんのことが好きです」
律のほうを振り向いた鈴がそう言った。
それは二年越しの鈴の恋の告白だった。
「二年前、この場所であなたに初めて会ったときから、私はずっとあなたのことが好きでした。あれから二年経った今も、その気持ちは変わっていません。私はずっと律のことが大好きです」
自分でも驚くくらいに素直な言葉が口から出た。
気分もすごく落ち着いている。
こんなに素直に、冷静に、律に恋の告白ができたのは、きっとその手に桜の手紙を持っていたからだと思う。
律は鈴の告白を聞いてとても驚いていた。
でも、すぐに真面目な顔になった。
そして「俺も鈴のことが、鈴に負けないくらいに大好きです」と鈴に言った。
その言葉を聞いて、鈴の頬はほんのりと赤く染まった。
同じように律の頬も少しだけ赤く染まっている。
「あの、秋山律くん」
「はい」
「秋山律くん。もしよかったら、私とお付き合いをしてくれませんか? ……私の、恋人になってください」鈴は言う。
「はい。なります」
律は即答する。
まっすぐ、鈴の目を見て、律ははっきりと言う。
その瞬間、池田鈴と秋山律は晴れて恋人同士として結ばれた。
ずっと我慢をしていた涙が、鈴の両目から頬を伝って、地面の上にこぼれ落ちた。
鈴は今からでも鳥居をくぐって、それから石階段を駆け上って、小森神社にいる桜のところまで言って、桜ときちんと話がしたいと思った。
でも、それが鈴にはできなかった。
もう遅い時間だし、桜はすでに寝ているかもしれないし、それに「家まで送っていくよ」と優しい声で律がそう泣いている鈴に言ってくれたから……。
だから鈴はその日はそのまま家に帰ることにした。
帰り道の途中で、二人は少しだけ夜の中で立ち止まって、そこで初めてのキスをした。それは二人にとってお互いに人生で初めての、キスだった。