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 桜の手紙に書いてあることは本当のことだった。

 鈴は、ずっと秋山律のことが好きだった。

 鈴が律のことを好きになったのは、今いるこの場所で、小森神社の鳥居のところで、ぼんやりと舞い散る桜の花を眺めている律の姿を見たときだった。

 それは池田鈴にとって人生で初めての恋であり、……つまり、一目惚れの、初恋だった。

 でも、その鈴の恋はかなうことのない恋だった。

 なぜならそのあとで、あの石階段のところで、約束の時間になってもやってこない鈴を迎えに神社のほうからやってきた鈴の親友である小森桜も、鈴と同じように、その日、律を見て、律に恋をしたからだった。

 桜が律に恋をしたのは、その瞬間にすぐにわかった。

 だから鈴は、自分の気持ちをその瞬間から心の一番奥のところにしまいこんだ。

 それで、全部を忘れようとした。

 なかったことにしようとしたのだ。

 自分の運命に逆らおうとした。

 ……でも、それは儚い抵抗だった。

 すぐに消えると思っていた鈴の律への思いは二年経っても消えることはなくて、今もずっと鈴の中に残っていた。

 あのときよりも、ずっと大きな気持ちとなって、鈴の中に確かにに、もう無視することができないくらいに、まるで我慢比べの風船のように大きく膨らんで、きちんと存在し続けていたのだ。

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