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それから三日たった夜に鈴は律から電話で呼び出しを受けた。
場所は、小森神社の鳥居前。
鈴は、なんだろう? と思いながらもその場所にきちんと約束通りに出かけて行った。まだ少し寒かったから、鈴は制服の上に黒色のコートを着ていた。
小森神社の鳥居前に着くと、そこには同じく制服姿の律がいた。
この場所で律とこうして二人だけで会うのは、もう三度目だった。一度目は出会いのとき、二度目は律が鈴に告白をしたとき、そして今が三度目だった。
律はわざとなのか、それとも偶然なのか、二人が出会った時と同じような、赤いフード付きのパーカーを制服の中に着ていた。
「よう。夜に呼び出してごめん」律は言った。
「ううん。別にいいよ」
鈴はそう言って律のところまで移動した。
鳥居の反対側の道路には街灯が立っていて、その明かりが夜の小森神社に咲く桜の姿を明るく映し出していた。一面が暗い夜と桜色の光に包まれているように思える幻想的な風景だった。
恋人同士でこんな場所に来たら、あるいは恋人同士になる直前の二人がこんな風景を見たら、もっと二人の距離が縮まるか、あるいは、きっとあっという間に恋に落ちてしまうのだろうと鈴は思った。
律はしばらくの間、黙っていた。
だから鈴はそんな素敵な風景をしばらくの間、ずっと眺めていることができた。
「手紙。読んだんだ。桜の手紙」律は言った。
「うん」鈴は律を見ないまま、そう返事をする。
「だから、その返事をするよ」
律の言葉を聞いて鈴はようやく律を見た。