51
南高に入学して間もない四月ごろ。
鈴は桜に大事な話がると、真剣んな表情で呼び出されて、久しぶりに小森神社に向かった。するとそこには鈴と桜の先輩である岡田匠先輩がいた。
「あ、岡田先輩。こんにちは」
鈴は岡田先輩を見てすぐにそう声をかけた。
小森神社の前に立っていた岡田匠は後ろを振り返って「よう。久しぶり」と池田鈴に声をかけた。
岡田先輩は高校は二人とは違う北高(すごく頭のいい高校だ)に行ったのだけど、中学は南中学校で、二人の剣道部の先輩だった。
岡田先輩は剣道がとても強くて、剣道着姿がよく似合っていて、凛々しくて、あと頭も良くて、すごく女子から人気があった。
「池田はめがね、コンタクトにしないの?」と岡田先輩は言った。
「気に入っているんです。めがね」鈴は言う。
「……でも、最近はたまにコンタクトにすることもあります」
「そうなの?」
「はい」
そこまで話したところで、神社の中から「お待たせ」と言って一人の女の人が出てきた。その人は髪をポニーテールにしていて、岡田先輩と同じ北高の制服を着ていた。
「遅いよ」
「ごめん、ごめん。それで、その子は?」
女の人が鈴を見る。
「中学時代の剣道の後輩。名前は池田。池田鈴っていうんだ」と岡田先輩は言う。
「初めまして、池田鈴といます」鈴は女の人に頭を下げた。
「初めまして、鈴ちゃん。私は西山茜と言います」と茜さんは言った。
茜さんは岡田先輩と同じ学年の北高の生徒ということだった。
「じゃあな、池田」
「じゃあね、鈴ちゃん。またね」
そう言って二人は小森神社を出て行った。
恋愛の神様である小森神社に二人で一緒にやってくるということは、つまりそういうことなのかな? と仲の良さそうな二人の後ろ姿を見ながら、池田鈴は一人で思った。