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それから二年の月日が過ぎて、鈴は南中学校の生徒から南高の生徒になった。
南高には桜も一緒に入学した。
鈴と桜は幼馴染で、こんな風に幼稚園のころからずっと一緒に、同じ場所で、二人は育ってきた。
だから鈴と桜が同じ高校に行ったことは、二人にとってはごく当たり前の出来事だった。
だけど南高には一人、余計な奴がいた。
それは秋山律だった。
二人とは違う東中学校の生徒だった律は、南高を受験して、合格し、二人と同じ南高の生徒になった。そのことを律から聞いたときに、桜は「よかったね、鈴。律くん。私たちと同じ南高なんだって」と、とても嬉しそうな声で言った。
「うん。そうだね」と言葉を返しておいたけど、実は鈴はあんまり嬉しくなった。
できれば律とは違う高校が良かったと思った。
鈴は別に秋山律のことが嫌いなわけではない。秋山律はちょっと軽薄なところがあるけれど、根はまっすぐで、優しくて、とてもいいやつだった。
それはこの二年間の付き合いによって、わかっている。
問題はそういうことではなくて、桜にあった。
簡単に言うと、桜は律のことが好きなのだ。
桜は初めて律と出会った日から、ずっと律のことを思っていた。そのことは親友である池田鈴にはすぐにわかった。
桜はその自分の思いを口にしない。言葉にしない。
小森桜とはそういう性格の少女だった。