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 木野は予定通りに一人で旅行に出かけた。

 旅行先は東北地方にした。

 日本海側と、どちらにしようか迷ったがそっちにした。

 三日の旅行はとても有意義なものだった。

 薊のことはなるべく考えないようにしていたのだけど、やっぱり木野はその旅行の間も、薊のことをずっと考え続けてしまった。

 反対に葵のことは、ほとんどなにも考えなかった。

 木野は東京に戻り、それからいつもの日常に回帰した。

 それで、この恋の話は終わりだった。


 木野と薊の間にあったお互いに一方通行だった恋は終わって、立花葵が木野に向けてくれるまっすぐな、迷いのない、恋の怖さを知らない、恐れ知らずの直球の恋は、まだ始まってもいなかった。

 葵のほうがどう思っているかはともかくとして、木野の認識はそうだった。

 あれから一ヶ月、二ヶ月と月日は過ぎていったが、二人の関係はなにも発展していない。ただ少しだけレストランで仕事しているときの二人の距離が縮まっただけだった。

 だけど時折見せる葵の、自分への好意に満ちた明るい笑顔を見るたびに、木野は、また同じことを繰り返すのか? と自分の心に問いかけることがあった。

 薊でも、葵でもない。

 結局一番子供のままなのは、いつまでたっても変わることができないでいるのは、木野蓮だけなのかもしれなかった。

 それが木野が他人の恋の相談に乗ることに、少しだけ罪悪感を感じてしまう、たった一つのシンプルな理由だった。


 薊 あざみ 終わり

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