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「私、今度結婚をするんです」と薊は言った。
まずは結論から、ということなのだろう、と木野は思った。
「相手は高校時代の友達で、大学に入学してからしばらくして、街で再会したときに声をかけられて、それで私、当時の一番の悩みだった木野さんのことについて、彼に相談をしていたんです。彼はすごく真剣に私の相談に乗ってくれました。
それからまあ、いろんなことがあって、私たちはお付き合いをするようになったんです。木野さんのおかげで、私たちは出会うことができました」薊は言う。
「その彼と、今度薊さんは結婚するんですね」と木野は言った。
すると薊は「そうです」と言って頷いた。
それから左手の薬指につけている銀色の指輪を、手を動かして木野によく見えるようにしてくれた。木野は今の今まで、その指輪の存在にまったく気がついていなかった。
「正式にプロポーズをされたのは最近なんです。お付き合いを始めたのは、もう二年くらい前になるのかな? 木野さんに恋をしていたときのことです。
ふふ。私って、少し軽薄ですかね?」薊は言う。
「そんなことはないですよ」と木野は言う。
二人はそこで少し沈黙する。
空は青色。
秋の空は、憎らしいくらいに、気持ちよく晴れ渡っている。
「薊さん」
「はい」
「僕はずっと前から、図書館であなたを一目見たときから、ずっとあなたのことが好きでした。僕はずっと、あなたを探して、この二年間を生きてきました」木野は言う。
薊の結婚の話を聞いて、言うかどうか迷ったが、自分の気持ちは正直に相手に伝えることにした。
木野の告白を薊はすごく真剣な表情で聞いていた。