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 大学に入学してから、木野はずっと恋をしていた。

 彼女の名前は薊と言った。

 彼女の名前と、それから容姿。それが木野の知っている彼女の情報のすべてだった。

 出会いは大学の図書館だった。

 いや、これは出会いとは呼べないのかもしれない。少なくとも相手は木野のことにまったく気がついていなかったからだ。

 大学に入学してすぐのころに、木野は大好きな本を読むために、大学の図書館に足を運んだ。木野はその空間の中で少し興奮気味に本を探した。

 読みたい本がたくさんあった。

 木野の選んだ大学は図書館がとても充実していた。それが木野がこの大学を選んだ理由の一つでもあった。

 木野がそうして本を数冊選び、閲覧室でそれらを読んでいると、ふと、ある一人の女性の姿が見えた。

 その女性が、薊だった。

 名前も知らない、始めて、ただその姿を見ただけの彼女。でも、その瞬間、木野は確かに恋をした。

 木野は自分の心臓が高鳴ることを感じたし、顔が少し赤く染まるのを認識した。

 彼女はある本を手に取ると、それを持って図書館のカウンターに向かって歩き出した。そして、やがて彼女は本を読むふりをしている、木野の横を通り過ぎた。

 彼女は本を借りて、それから図書館を出て行った。

 木野はもう本を読むどころの騒ぎではなかった。

 しばらくして、木野は図書館をあとにして、近くで彼女の姿を探してみた。でも彼女はもうどこにもいなかった。

 それ以来、木野はずっと、世界のどこかに彼女の姿を探し求めていた。

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