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その代わり、二人はずっと手をつないでいた。
それが言葉の代わりだった。
「明日香のこと、家まで送っていくよ」と明日香が駅でおりたときに梓は言った。明日香はさすがに悪いと思って「大丈夫。ここでいいよ」と梓に言った。
梓はあまり納得はしていないようだったけど、一応、それを了承してくれた。
梓は駅前まで明日香と一緒にやってきた。
そこでお別れをするとき、二人は初めてのキスをした。
それは明日香にとって、正真正銘の人生で一番の、初めてのキスだった。
梓はどうかわからないけど、梓もそうだったらいいな、とキスをしているときに明日香はそっとそんなことを思っていた。
家に帰ると「ただいま」を言って、それからお風呂に入って就寝の準備をしていると、茜から電話がかかってきた。
そこで二人はお互いの今日の報告会をした。
それから明日香はベットの中に入って眠りについた。その日は、すごくよく眠れた。夢はなにも見なかった。
次の日の目覚めは最高で、朝早くに目が覚めたこともあって、明日香は近くを少し散歩することにした。
朝の街の風景を見ながら、今頃、朝陽先輩はランニングでもしてるのかな? とそんなことを思った。