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料理はすぐにやってきた。
持ってきてくれたのは、最近新しくバイトに入った高校生の女の子で、その子の名前は立花葵と言った。
高校は明日香とも、それから梓とも違う都立の東高に通う高校一年生で、綺麗な子だったけど、少しだけ愛想がよくなかった。端的に表現すると笑顔があまりない子だったのだ。
でも仕事はすごくよくできて、下手をすると、もう数ヶ月もしたら、明日香よりも仕事ができるようになるのではないかといった嬉しいような悲しいような不安が明日香にはちょっとだけあった。
「お待ちどう様でした」
そう言って葵は料理を置くと、注文の確認をして、忙しそうにキッチンの中に戻っていった。キッチンからは木野さんが顔を出していて、明日香と匠に小さく手を振っていた。葵はそんな木野さんの服を引っ張って、二人はキッチンの中に消えていった。
「木野さん、お祭りいかなかったんだな」と木野さんに手を振りながら匠が言った。
「うん。そうだね」と明日香は言った。
木野さんのシフトのところには、今日のところに調整中という言葉が書いてあった。だからもしかしたらお祭りにいくのかと思っていたのだけど、やっぱりいかなかった(……というかいけなかったのかな?)ようだ。
料理はそれぞれ匠が和風ハンバーグ、梓がチーズハンバーグ、茜がたらこスパゲティー、明日香がミートドリアを注文した。
それから四人は日頃の話をして、食事を終えると、レストランをあとにした。
そして最寄りの駅で、明日香と梓、そして茜と匠の二手に別れて、その日はさよならをした。
明日香と梓は二人で電車に乗り込んだ。
駅の中で電車を待っている間も、電車に乗っている最中も、二人はずっと無言だった。