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★その後の尾野駿の活躍

※注意!

この話は『18禁ゲームの世界に入りました。助けてください』の元となった小説の一つ『日本異世界召喚対策室』の中の話です。

その話はプロット状態ですので、今のところ投稿することはありません。

今回は以前簡単に書いたものを修正しました。


今回こちらをここに投稿したのは、本作主人公『尾野 駿』の原型となった人物が出てきた話だからです。

本編は第62話で解決しておりますので、蛇足となってしまうかもしれません。

本編とちょっと性格違うんじゃない? と、感じてしまうかもしれませんので、お読みいただく際はご注意ください。


 地球とは違う惑星、異世界『イース』。


 この世界の人々は異世界の存在に気付いていた。


 異世界移動とは全く別の目的で作った新しい技術を使用していた所、別の世界を偶然発見してしまったのだ。


 この世界で起きた60年前の大きな戦争から、人々はもう二度と戦争はしたくはないという思い、民衆は突然もたらされた異世界の存在に恐怖した。


 自分達はもう戦争なんてしたくはない。


 だけど、異世界に住む知的生命体はどう考えているのか分からない。


 そういった思いから、この世界の人々は研究を重ね、異世界を観測する事に成功する。


 そして、恐怖した。


 異世界人は大抵自分達と同じように戦争をしており、未だに人間同士で殺し合いを続けている。


 彼等の凶暴性が自分達の世界に向かないという保証は無かった。


 そこで、各国の政府は、急遽異世界人に対する対策を進めることになった。




 ある国は軍事力を高めた。

 いつ異世界人が攻めてきても迎え撃てるように。




 ある国は未知の技術を研究した。

 魔法、聖法。今までこの世界に存在した科学技術とは別の。オカルトと呼ばれていたものを真剣に研究を開始した。



 ある国は脱出の方法を考えた。

 この惑星に異世界人が攻めて来た時、どうしても勝てないと判断した際の逃走ルートの確保。惑星外へと逃げる方法を考え、宇宙開発に着手した。







 そしてある国は……。

 異世界人を研究する為に、異世界の人間の戦闘能力を確認する為に異世界人拉致を開始した。








 キュリス共和国。


 この世界『イース』にて、軍事力がNo.3と言われている巨大な国家である。

 広大な土地に、人口は5億人。

 この世界の総人口の10分の1であった。


 そして、異世界への入り口を作成する分野に長け、異世界人を拉致して研究を始めた国であった。


 その国の異世界人実験施設で、とある催しが行われていた。




【ケース:地球人、日本人7名。目標、全員殺害】




 そう映し出されている電子掲示板がある部屋に、兵士達30人が控え室で待機をしていた。


「お前等よく聞け! いつも通りの仕事だ。今回は俺達の世界のヨシュアン地域に広く分布するヨシュアン人種に酷似した人間を狩る。

 惑星地球の日本国から来たお客さんだ。

 性別は男が5人、女が2人。今回は一般人だ」


 兵士達の上官らしき人物が、異世界から拉致して来た人間達の顔写真をスクリーンに映した。


「大尉殿ぉ、日本人の女は俺達を楽しませてくれるもんは持ってんですかい?」


 と、一人の隊員が説明係の上官、大尉に質問をした。


「あぁ、安心しろ。事前の調査では俺達とはそう変わらない人体構造をしているらしい。楽しんでもいいが、ちゃんと後始末はしろよ」


 大尉がそう言うと、


「ぎゃははははは! いいねぇ、やる気が出るってもんだ」


「お前、未知の病気になったって知らねぇぞ?」


「よし、お前が変な病気になったら、日本人病と名付けよう!」


 等と、兵士達は下種な会話で盛り上がっている。


「士気が上がるのはいいが、お前達。くれぐれもヘマはするなよ? 訓練中の事故ならばまぁ許されるが、逆に奴等にやられることがあれば、それ相応の責任はとってもらうからな」


 大尉が厳しい口調で言うと、


「心配ありませんぜぇ」


「相手は素人なんでしょう?」


 と、兵士達の緊張感は無い。


「ふん、まぁいいだろう。では、作戦は2時間後。既に日本人達にはゲームの内容は伝えてある。3日間逃げ切れば元の世界に返してやるとな」


「ギャハハハハハ」


「3日間楽しめるぜぇ」


 大尉の言葉を聞いて盛り上がる兵士達。


 そう、これは戦闘訓練の一環でもあった。


 逃げる目標を追い詰めて仕留める。


 戦争が激減したこの世界で、この国が見つけ出した限りなく実戦に近づけた訓練である。


 兵士達が浮かれている中、部屋の隅で一人の男がモニターに映し出されている日本人の顔をジッと眺めていた。


「よう、『マチアス』。今回もお前が参加するのか?」


 と、気楽な感じで一人の兵士がマチアスと呼ばれた兵士に声を掛ける。


 マチアスと呼ばれた男は、キュリス共和国軍内では、従順で作戦遂行能力も高い優秀な軍人であった。


 仮に今回の件で他の隊員達が獲物を逃したとしても、彼がきっと始末してくれる。


 司令部でもそう期待されている存在である。


「……」


 だが、マチアスは何も答えない。


「お前はこの前の戦闘訓練でも異世界人を半分仕留めたんだってなぁ? なぁ、今回女を見つけたら俺に譲ってくれよぉ」


 そう下種な依頼をする兵士に対し、何も言わずに背を向けて去っていくマチアス。


「おい、アイツに声を掛けたって無駄だぜ? アイツは完全にお犬様なんだからなぁ」


 今度は別の兵士がマチアスに声を掛けた兵士にそう言った。


「あぁ、そのようだな」


 彼等はマチアスの事を『政府のお犬様』と呼んでいた。


 任務は忠実にこなし、誰とも馴れ合わない。


 仲良くするのは国家だけ。


 そういわれ続けていたのだ。


 これには数々の任務で成功を収めるマチアスに対しての嫉妬も含まれていた。


 マチアスは上層部のお気に入りである。


 こうして彼等キュリス共和国軍の実験部隊は狩りの開始時間まで各々武器の点検などをしながら待つ事になった。





----------------------------------




―キュリス共和国異世界人実験場司令部―




 キュリス共和国の上層部。つまり政治家や軍のトップでは、賭け事が行われていた。


「今回はどの位持ちますかな?」


「あのマチアスが出てきたんです。あいつはエンターテイメントというものを理解していますからな。ワザと時間をかけて獲物を仕留めたりと、中々と面白みがある奴ですよ」


「しかもあ奴は、淡々と殺していきますからな。それが獲物にとって更なる恐怖となるのじゃから、見ていてハラハラするわい」


 などと、大きな画面を見ながら十数人の男女が話している。


「今回の異世界人は我々とはそう変わりないというが……」


 そう言ってモニターを見れば、必死になって走っている7人の日本人の男女が映っていた。


 食料と水が入ったリュックを背負い、彼等は森の中を走って逃げている。


 全員がまとまって逃げているようだ。


「こうまとまっているんじゃ、あっという間に終わってしまうかもしれんのぉ」


 今回のハンター役は30人。


 獲物は7人。


 獲物の方は銃を持っては居ない。


 武器になりそうなものは精々ナイフとライター位だ。


「これは早々に片付けて、早めに次の段階に移ろうか。そっちの方が面白そうだ」


 と、彼等はゴミを見るような目で、モニターに映る日本人男女を見ていた。


「マチアスには知らせておこう。見つけ次第直ぐに殺せとな」


「伝えておきます」


 控えていた部下が静かに部屋を去って行った。


「もう少し凶暴そうな種族であれば見ごたえはあったのになぁ」


 などと、残念そうな空気が部屋に漂った。




----------------------------------



―キュリス共和国異世界人実験場、建物出入口―




「出撃1分前! 全員位置に着いたか?」


 そう隊長の号令により、ハンター役の30人は位置に着く。


 彼等は各々好きな武器を持ち、ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。


「おい、マチアス!」


 と、ここで作戦会議室でマチアスに絡んできた兵士が、再びマチアスに声を掛けてきた。


「賭けをしようぜ! 俺の方が早く獲物を仕留めたら、酒を奢れよ」


 そう言って笑っている。


「……」


 マチアスはそれぐらいなら、と、頷いた。


「おっ? いいのか? じゃぁ、この基地で一番高い酒を貰おうかなぁ」


 と、呑気に話をしていると、直ぐに時間が経つ。


「作戦開始まで、10、9、8、7、6」


 全員が武器を構え、


「5、4、3、2、1――――」


 表情を変えた。


「作戦開始!!」


 外へと続くシャッターが開かれ、30人もの屈強な兵士達が一斉に解き放たれた。


「「「「「「うぉぉぉおおおおおお!!!!」」」」」」


 出撃した建物の周りは平地になっており、周囲の300m先には森が広がっていた。


 森へと一直線に向かう。


 監視カメラの映像は直ぐに手元のモニターに表示されている為、今異世界人達が何処にいるのか丸分かりなのだ。


「いくぜぇぇええええ!!!」


 マチアスと賭けをした兵士は真っ先に飛び出した。


 するとその兵士が、森に入ろうとした瞬間、




「ンエ!」




 突然その兵士は倒れたのだ。




「「「!?」」」



ターーン。



 驚く周囲の兵士達。

 次に聞こえるのは銃声音。




「敵だ!!」




 マチアスは直ぐに状況を理解し、物陰に隠れた。


「あっ、あれは!?」


 キュリス軍の兵士達は自分達が出てきた建物の屋根からワラワラと人が降りてきたのを見てしまう。


「ど、何処の軍だ!?」



ズドォォォオオン!!!




 その瞬間、爆音が鳴り響く。


 砂煙が一斉に舞う。


 マチアス達が居るこの場が戦場と変わったのだ。


 彼等は直ぐに森の木々に身を隠す。


「本部応答せよ! 実験中に敵襲有り! 一体何処の軍だ!? どうぞ!」


 と、無線を持っていた兵士は必死に作戦司令室や指揮官である大尉に連絡を取ろうとするが、


「<此方作戦本部。此方も敵襲を確認した。だが、作戦は続行せよ。繰り返す、作戦は続行せよ>」


「はぁ!?」


 誰もが耳を疑った。


 作戦続行。


 確かに本部からはそう言ってきたのだ。


「失礼ながら、本当に状況は分かっておいでですか? どうぞ」


「<此方本部。状況は理解している。こちらはこちらで対応が忙しい。お前達は与えられた仕事をこなせばいいんだ>」


「くそっ!」


 無線を持っていた兵士は思わず無線を地面に投げつけてしまう。


「上は何を考えてやがるんだ!?」


 無線を投げ捨てた兵士がそう怒りを露にしているが、


「敵の数が多すぎる! ここは一旦引くぞ!」


 と、ここでこの30人の中で一番階級が高い中尉がそう口にすると、同意をする言葉があちこちで聞こえ始める。


「あぁ、敵の狙いはあの建物みたいだからな。俺達は言われたとおり任務を続行すればいい」


「そうだそうだ! 本部の連中がそれで良いって行ってんだから俺達は森の中に入ってようぜ!」


 そう意見がまとまってきた。


 確かに敵はゲートをこじ開け中へと突入していた。


 自分達が目標ではないと思われた。


「任務続行だ……」


 マチアスはそう言うと森の中へと入って行った。


「「「……」」」


 兵士達は互いの顔を見た後、マチアスに続いた。

 彼等は思っていたのだ。


 ここの森は自分達の庭だ。


 道は知り尽くしている。


 だから、仮に追って来たとしても直ぐに撒ける事が出来る……と。




 こうしてキュリス共和国軍の実験部隊は日本人を狩るという本来の任務に戻っていったのだ。




 その判断が命取りになるとも知らずに……。



----------------------------------



―キュリス共和国異世界人実験場建物屋上―




 マチアス達が森へと入った後、キュリス共和国軍の実験部隊が出てきた基地の建物の屋根から、一人の男が飛び降りてきた。


「よっと」


 士官用の軍服を着たその少年の面影を残す男は、腰元の拳銃を入れていたホルダーから、リボルバー拳銃を取り出す。

 彼の頭の上には、小さな鳥が飛んでいた。


「いやぁ~、連れてきた戦闘用ロボットの動きってすごいねぇ。人間よりも軽やかだ」


 と、基地内部に侵入して行く集団を見ながらその男は笑う。


「七人の人間を救わなきゃいけないなんて、なんか運命的なものを感じるねぇ。

 さて、俺も森に入った連中の始末でもしますか。行くぞぉ」


「チュンチュン!!」


 その男は嬉々として空へと浮かび、一羽の小さな鳥を引き連れ、森の中へと入っていった。




----------------------------------




―実験場の森の中。日本人視点―




 キュリス共和国が行っている実験は、その時々によってやり方が異なってくる。


 剣を持っている者を狩る際には、闘技場のような場所でやることもある。


 魔法を使う相手であれば、戦闘車両で対峙する。


 今回のように、日本人の戦闘を経験したことが無い一般市民には、彼等が逃げ回る能力がどれ程あるのか測る為に、2時間の逃走時間を与えている。


 足場の悪い森の中で行軍経験の無い一般市民にとっては、このうえなく悪い条件だろう。


 幸いなのかは分からないが、日本人達は誰一人欠ける事も無く、互いを励まし合って逃走を続けていた。


「大丈夫か? 麻耶まや


「うん。まだ大丈夫だよ文和ふみかず


 そう会話するのは、川島かわしま 麻耶25歳と岩本ふみかず 文和25歳である。

 彼等は恋人であり、近々結婚をする予定であった。

 異世界へ強制召喚されたその日、結婚式場へ下見をしようと一緒に家を出た際に召喚されたのだ。


「くそぉ! あいつ等(わけ)の分からん事言いやがって!」


 今度はそう言ったのは『佐藤さとう 良介りょうすけ』31歳は怒りをぶちまけながら手に持った棒を地面へと叩きつける。

 彼は普通のサラリーマンであり、通勤しようと家を出たところ召喚されたのだ。

 そして先ほど、異世界人達に対抗するために、少しでも武力を持とうと、硬い木の棒を拾って武器としたのだ。

 相手は銃器を持っているため、どれ程役に立つかは分からないが、木々の陰に隠れながら殴りかかろうと考えている。


「よいしょっと。ひぃ、ひぃ。40過ぎの体には堪えるぞ……」


 そう言ったのは、この中で最年長の男である『大海おおうみ 源蔵げんぞう』42歳である。

 彼は文房具店の店主であり、在庫を倉庫から持ってきている最中に異世界へと召喚された。

 若干メタボな体型を揺らしながら必死になって皆に追いつこうと頑張っている。


「あいつ等、本当に俺達を殺そうとしているのかよ……」


 一方、先頭を歩く誘拐された日本人の中で最年少の中学2年生14歳『中岡なかおか 相斗あいと』。

 サッカー部に所属する男子生徒だ。

 と、言っても彼はベンチを暖めている存在で、試合に出たことは数えるほどしかない。

 彼は部活動をする前にトイレの個室に入った瞬間召喚された。


「……はぁ、はぁ」


 今度は息を切らしながら中岡の後を続く少女は、高校2年生17歳の『空谷そらたに りつ』。

 文芸部に所属している為、体力が無いように見えるが、若さでそれを補っている。

 セーラー服のスカートを揺らしながら、必死に逃げていた。


「部品さえあれば……。銃を作れるのに」


 そう嘆くのは、フリーターの青年24歳『上田うえだ みつる』。

 自宅に3Dプリンターを所持しており、色々なモノを作って様々な人に販売していた。

 銃器にも詳しく、違法であるが部品を作った経験もある。

 彼は趣味の3Dプリンターで模型を作っていたところを召喚された。


 以上7人が森の中を必死に逃げ回っている日本人である。


 彼等は全員都会暮らしである為、森に入るのは初めての経験だった。


 唯一自然を感じることが出来たとすれば、それは整備された公園だけである。


「おい、おっさん。大丈夫か?」


 言い方は荒々しいが、佐藤は大海を気に掛ける。


「ははっ、はぁ……はぁ……。日頃の運動不足が祟ったかな? いいんだよ、俺を置いていっても」


 そう笑顔を作り返した大海に、


「はん、アンタを見捨てる時が来たとすれば、それはアンタを囮にして、俺があのイカれた兵士をぶっ殺す時だ」


 と、言う。


「いいねぇ、じゃぁ俺はそのぶっ殺された兵士の銃を奪って更に殺してやるよ」


 と、上田は佐藤の話にのっかる。


「ははっ……。若い子は自分の身を守ることを専念すればいいんだぞ?」


 そう言いながら足を動かす大海。

 彼には昔、妻と息子が居た。

 両方とも交通事故で亡くしてから、彼は自分より他人の命を優先する傾向が見られた。


「あいつ等の思い通りになんかさせたくねぇんだよ」


 と、佐藤。


「そうだな。とにかく3日間逃げ続ければ俺達の勝ちってことだ。頑張るぞ」


 そういう上田であったが、彼自身3日間逃げ切れる可能性は低いと思っていたし、そもそもこの場に居る誰もが身勝手に誘拐してきた異世界人達を信用なんてしていない。

 3日後に生き残れたとして、元の世界に戻す等と言われて集められたところで皆殺しにされる可能性だってあるのだ。


 だが、今は先のことを考えて絶望するより、皆で一緒に逃げることを優先とした。


 そうしないと心がもたなかったからだ。









 やがて夜に近付いてくると、全員の顔には疲労が現れていた。


「ど、どうする? 休憩するか?」


 と、集団の中心を歩いていたカップルの片割れである岩本 文和が皆に問う。


「軍隊って夜間行軍とかするって聞いたことがありますよ? 軍人って歩き続ける訓練があるんですよね? 寝ている間に距離を詰められたら終わりです」


 そうネット動画サイトで見た情報を伝える中学生の中岡 相斗。


「3日間も歩き続けるの?」


 そう絶望した表情をするカップルのもう一人である川島 麻耶であった。


「いや、歩き続ける訓練ってたしか24時間じゃなかったか?」


「異世界の軍隊だからなぁ……。常識なんて違ってくるよね?」


 フリーターの上田 充と文具店店主の大海 源蔵は意見を交わす。


「だけど、どの道歩き続けるのは限界だろうな……」


 佐藤 良介は全員の顔を見渡す。

 誰もが疲労困憊となり、死にそうな顔をしていた。

 恐らく自分もそうだろうと感じた佐藤は、ここで無理をしてはいけない。という判断をする。


「よし、適当な場所を見つけて、そこで一旦休憩しよう」


 自然とリーダー的な役割を担ってしまった佐藤が皆にそう言うと、彼等は隠れられそうな場所を歩きながら探した。









 ようやく隠れられそうな場所を見つけたのは30分後の事である。


 彼等は時計を支給されており、地球と同じくこの世界の時間の流れは24時間だったため、分かりやすかった。


「やっと休める」


 岩本はドカッと木の幹に背中を預け、勢いよく座った。


「はぁ、はぁ。奴等、戦闘のプロのようだけど、なんか対策はあるのか?」


 上田はそう佐藤に聞いてみた。


「……正直言うと、なんの対策も無い。素人がどう頑張ってもそういう知識に長けた連中を欺く手段なんて直ぐには思いつかないよ……」


 残念そうに言う佐藤に対し、上田は責める様子は無い。

 余裕がない状況であるにも関わらず、彼等は誰一人他の日本人達を責める様子は見せなかった。


「ならば……私が見張りをしつつ、囮になりましょうかねぇ」


 大海はそう言って笑っていた。


「はぁ? おっさん、あいつ等に勝てる見込みあんのかよ?」


「そ、そうよ。あいつらに見つかったら、きっとパシュっと一発撃たれてお終いよ!」


 岩本とその彼女である麻耶は、大海の行為を止めようとする。だが、


「なにも馬鹿正直に突っ立っている必要はありません。ちゃんと木の葉っぱ等でカモフラージュしますから。

 それにね。私も誰かの為に死ねるなら本望なのです。

 実のところ、私は妻と子に先立たれましてね。未練なんて殆ど無いのですよ」


「「「「「「……」」」」」」


 そう大海から打ち明けられた事実を聞き、その場にいる全員は黙ってしまった。


「あぁ、いや。暗い話をしてしまい申し訳有りません。とにかく、私が囮になりましょう。

 奴等が近付いてきたら大声を上げて皆さんに知らせます。

 ……、あ。そうかぁ、もし音を立てずに殺された場合は知らせることが出来ませんから、私が倒れたら大きな音が鳴るように仕掛けを作っておきましょうか」



 そう明るく言う大海に対し、


「どうしてそんなに明るく言えるんですか? 本当に死ぬかも知れないんですよ?」


 と、中学生の中岡が恐る恐るといった感じで尋ねた。


「先ほどもお伝えしましたが、未練が殆ど無いから言えるのですよ。貴方達は私よりずっと若い。これからの日本の未来を担う若者達なのです。

 ですから、どうかこの老いぼれに君達の明るい未来を進ませる手助けをさせて下さい」


 そういい終わると、彼一人来た道を引き返していこうとした。


「この先に人一人分が隠れられる大きな茂みを発見しました。そこで見張りをしますよ。仕掛けも簡単なものなら一人で作れますから」


 大海はそのまま行こうとした。

 だが、


「おい、アンタばっかりいい格好させねぇぞ」


「そうだな。相手は戦闘のプロ。見張りは複数居た方がいいんじゃないのか?」


 佐藤と上田が声を上げた。


「二人とも、止めてください。もし貴方達に何かあれば、彼等はどうするんです? まだ子供も居るんですよ? お二人は彼等を守ってあげて下さい」


 大海は中学生の中岡と高校生の律を見ながらそう言った。


「あぁ、だから俺が行くよ。俺も少し離れたところからアンタを見ている。本当ならこんな手を使いたくは無いが、囮のアンタが死んだら、大声を上げるとかそういう役割をしたいんだ」


 上田がそう名乗り出て、


「そっちのアンタは今までこの集団のリーダー的立ち位置に居てくれた。この先仮にアンタが失った状態でこの集団が行動するのは精神的にキツイ」


 次に上田は佐藤にそう言って、佐藤が大海についていこうとするのを止める。


「……だが」


 不満そうにする佐藤に、


「俺だってあのクソッタレ共に一泡ふかせてぇんだ。アンタ銃を取り扱ったことはあんのか?」


 と、上田が質問する。


「いや、無いが……」


 日本人であれば大抵本物の銃なんて使ったことは無いだろう。


「俺は一応あるんだわ。こっちのは異世界の銃だけどさ、知識があるのと無いのとでは大違いだろ? だからここは俺に任せてくれ」


「……二人とも、すまん」


 そう言われてしまえば任せるしかなかった。


 残った面々も彼等二人に頭を下げる。


 大海と上田の顔には悲壮感はなかった。


 寧ろ笑い合って来た道を戻って行った。





----------------------------------



―実験場の森。キュリス共和国軍視点―




 翌朝。6時。



 マチアス達は佐藤達が隠れている場所へ接近していた。


 彼等はゆったりと前へと進んでいた。


 途中休憩を取りながらなので、通常であれば完全に舐めた行動なのだろうが、後方の未確認勢力を警戒しながらなので、どうしても進行速度は落ちていたのだ。


「中尉、熱源反応が前方にあります」


「うん……。一人、いや少し離れたところにもう一人か……」


 先行していた兵士が獲物を一人発見し、中尉に知らせたところ、中尉自身が確認にやって来た。


「見張りのようですね。いかがいたします?」


 大海と上田は残念ながら直ぐに居場所がバレてしまった。


 そしてそれは大海と上田には気付かれていない。


「よぉし、近くに残りの連中も居るはずだ。探して一気に仕留めよう」


「了解」


 中尉の命令で後続に居た他の兵士達はゆっくりと森を散策して行く。




「……」



 その中にはマチアスの姿もあった。


 体力を温存しながら進んできた彼等には一片の隙も無い。


 鍛えられたその肉体と経験を全て使い、一歩ずつ獲物を追い詰めていく。


 マチアスの少し先行して歩いていた者も興奮を抑えきれない様子だった。


 顔には笑みが浮かべられている。


 いやらしい笑みだ。


 これから人をどうやって痛めつけようか。どうやって苦しめようか。そんな感情がヒシヒシと伝わってくる。


 マチアスはそんな事を思う連中が多い中、ただひたすらに任務を忠実にこなす事だけを考え探していく。


 だからか。いや、マチアスは特別耳が良かったからかもしれないが、上空で男の声が発せられたのをはっきりと耳にした。





「ちゅん太。荷電粒子砲だ」





 日本語を瞬間翻訳する装置を耳に付けていた。


 だが、マチアスは何を言っているのか一瞬理解できなかった。


 それを理解したのは、目の前で極太の光りが通り過ぎ、同僚が蒸発したのを見てからだった。


 木々はなぎ倒され、一つの大きな道が出来てしまったほどだ。





「あわわわわわ」


「お、おっさん! 逃げるぞ!」




 大海の眼前を通り過ぎた光は、当然大海にも認識できたが、彼は腰を抜かしてしまって尻餅をついてしまう。


 彼の体にくっつけていた仕掛けが反応し、音がカランコロンと森に聞こえるが、それよりも木々が倒れる音の方が大きい。


 上田は慌てて大海を引っ張って逃げることにした。








 一方、突如攻撃を受けたキュリス共和国の部隊は混乱していた。


「中尉!? 応答してください、中尉!!」


「駄目だ! 反応が返ってこない!」


 この時、大海達を見張っていた先行した隊員と中尉は光の攻撃によって蒸発していた。


「部隊の半数がやられたのか!?」


「一体どこから?」


「上だ! 空に人が浮いている!!」


 木々が倒れ、空が広く見渡せる状態になっていた。


 そんな中、キュリス共和国軍の軍人の一人が発した言葉に、皆一斉に空を向いた。


「あぁ……」


「そん……な……」


「アレが……魔法?」


 科学技術では不可能。いや、反重力装置とかそういったものがあれば可能かもしれないが、少なくともキュリス共和国には無い技術で空に浮かんでいるえらく凝った装飾の軍服姿の青年……いや、少年が居た。


 そして何故か彼の近くには小さな鳥が付き従っている。


 彼はゆったりと高度を下げながらまるで演説をするかのように腰の後ろに回していた両手を、大空に向けて掌を上にして上げた。





「やぁ、キュリス共和国の兵士諸君。俺のプレゼントは気持ちが良かったかな?」





 自信に満ち溢れた声でそうマチアス達に話しかけた青年。


 マチアスは静かに彼の額に銃口を向け、狙いを定め、引き金を引いた。



「あいたっ! 人がせっかく格好良く登場したのに! 空気読めよっ!」



 だが、当の青年は額に銃弾が当たったのにもかかわらず痛いの一言で済ましたではないか。


「……」


 これにはマチアスも思わず苦い顔をする。





「全くこれだから野蛮人は……。えっと、仕切りなおしだ。


 え~、私の名前は『尾野 駿』。『日本連邦』、『日本異世界召喚対策室』の『機動強襲攻撃救助係』の隊長だ。


 諸君等は、我々の同族に対し、非道の限りを尽くした。


 諸君らは、我々が与えた猶予を与えたというのに、それも無碍にした。


 これで我等が同胞を助ける為に動くか、降伏すれば見逃してやったというのに……。


 よって、我等は諸君達は"排除対象"と認識し、処分することが決定された。


 喜び給え。これから君達が大好きなゲームが再開される。


 一つ違う点とすれば、我等が狩る側だ」




 尾野 駿と名乗った青年は、キュリス共和国軍を見下しながら上空に停滞している。


「そら、ゲーム再開だ!」


 彼はそう言ってリボルバー拳銃を取り出し、彼等キュリス共和国軍人達に向ける。




「……!!」



 それを見て、キュリス共和国軍人達は一瞬余裕の表情を浮かべた。


 それは尾野 駿がどう見ても貧弱な武器を構えたからだ。


 あの武器の見た目から、あの極太ビームが発射されたものだとは思えない。


 もしそうだとしたら、態々リボルバー拳銃型のデザインにしたという無駄がありすぎる。


 キュリス共和国軍人達は尾野 駿を打ち落とそうと銃を一斉に構えたが、





ブワァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア。





 尾野 駿のリボルバー拳銃からは、装弾数完全無視と思うほど大量の銃弾が発射された。


 完全に見た目に騙されたキュリス共和国軍人達は身を隠す暇も無く蜂の巣にされていく。



バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。



 しかも、尾野 駿の隣に居た小さい鳥の口からビームが発射されているではないか。



「なんなんだぁああああ!! あれはぁあああああ!!!」


「うわぁぁぁぁぁあああああああ!!!」


「た、助けてくれぇぇええええ!!!」


 逃げ惑うキュリス共和国軍人達。


「……チッ」


 マチアスも咄嗟に太い木の幹の陰に隠れる。




ブワァァァァァァァアアアアアアアアアア。




バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。




ブワァァァァァァァアアアアアアアアアア。




バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。バシュゥゥゥウウ。




ブワァァァァァァァアアアアアアアアアア。





――――――――――――。






 一通り撃ち終えたのか、尾野と名乗った人物は攻撃を止める。


「……」


 殆どのキュリス共和国軍人が抵抗を諦めようとしている中、マチアスは何とか打開策は無いかと木の幹の影からほんの僅かに顔を出し、考える。




「!?」




 だが、マチアス達は更に絶望を味わうことになった。


 それは、





「あらら。隠れちゃったか。森の中を探すのは一苦労だよな……。よし、それじゃぁ皆で探そうか」



 と、尾野 駿が発した一言が原因だった。





「「「「「「「「「「了解であります!!」」」」」」」」」」




 尾野 駿と同じ格好をした10人の男達が何も無い空間から、浮いた状態で現れ、空から降下してきたのだ。


 しかもその手にはリボルバー拳銃を持って。





「「「「「「「「「ちゅん、ちゅん、ちゅん!」」」」」」」」




 更には先ほどビームを吐いていた小鳥も、鉄色の色に変わり大量に召喚された。





「……」


 マチアスは厳しい顔をした。


 他の生き残ったキュリス共和国軍人達は我先にと逃げ出す。




 そう。彼等は入れ替わったのだ。






 それをキュリス共和国軍人達はようやく先ほど尾野 駿が言っていた言葉を理解したのだ。






 狩る者と狩られる者の立場が逆転したことに。








「さて、ゲームを始めようか……」






 尾野 駿は冷たい表情で逃げ惑うキュリス共和国軍人を見ながらそう言った。




登場人物説明


追加ますます:ゲーム世界で作ったますますのコピー。コピー元となったますますより若干性能は劣る。

とてもつよい。当たり前だが、通常状態の尾野駿よりつよい。


TNTF-001量産型ちゅん太攻撃機タイプ:オリジナルちゅん太を元に開発した量産型式神。

コピー元となったちゅん太よりも大きく性能は劣っている。

とてもつよい。当たり前だが、通常状態の尾野駿よりつよい。尾野駿と仲良し。

武装

・フェザーミサイル

・フェザーカッター

・口腔ビーム砲

・ツインアイビームバルカン

・マイクロマイトボム

・ちゅんちゅんクチバシ

・ちゅんちゅんクロー

その他装備

・ダウンフレア

・ダウンアンテナ

・排泄口プラズマジェットエンジン

・つぶらな瞳



※ネタバレ的な補足

逃げ回っている日本人達は人間ではありません。

敵を欺き試す為の式神です。

日本連邦があらかじめ救出し、イース人の人間性を試していました。

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