第55話 巨大化
―ゲームの中の世界―
羽間と半田が一般人NPC達の波に捕らえられ、殺されていた頃、刑務所付近は度重なるB-52やB-1、B-2などによる爆撃で更地になっていた。
これにより強化された三田川を虐めていた不良グループ達は抵抗する間もなく全員死亡し、残る敵は後"一人"となった。
「ンギョワァアアアアアアアアアアア!!!!」
その残る一人は奇声を上げ、周囲を威嚇していた。
刑務所跡の地下から現れたその存在は、包囲していた自衛隊員達の度肝を抜く。
「な、なんだアレは!?」
「化け物が現れた! 繰り返す、化け物が現れた! 全長20m程の巨人だ!」
突如現れたその"巨人"は周囲を威嚇し、次々と戦車を葬る。
「まさか……、あいつが神命……?」
巨人の顔は極端に青白かったが、神命 成一そのものであった。
そう。神命 成一は、自分自身にかけた術により巨大化したのだ。
元々は大量の同一の魂を無理矢理一つに押し固められただけの存在。
結束を緩め、魂一つ一つを細胞のように繋ぎ合わされる事により成り立った巨大化。
常識外れなその離れ業に、琴音達尾野 駿を救出した術者達は完全に後手に回ってしまった。
「ポワァアアアアアアアアアアアア!!!」
神命は一鳴きすると、再び思いっきり戦車を蹴り飛ばし、近場のビルへ当てる。
ボールでサッカーの練習をしているわけではない。
当然戦車は跳ね返らず、ビルを貫通し、隣のビルへ一時突き刺さった後落下した。
その為、一般人NPC達が吹き飛ばされたり瓦礫の下敷きになってしまう。
「なんであの爆撃を受けて平気なんだ!?」
「砲撃の手を休めるな! ヘリ部隊からの攻撃も続けろ!! なんでもいいから攻撃を続行するんだ!!」
「了解っ!」
その指示で、戦車だけではなく、自走砲や高機動車の上部ハッチから出された重機関銃も攻撃を開始する。
先ほどから継続的に行われている爆撃の効果が見られない。
「第六爆撃部隊が到着する! 退避しろ」
それでも僅かに効く可能性を信じ、爆撃を続ける指示を出す。
「支援爆撃が来るぞぉぉおお!!」
そして降り注ぐ爆弾の雨。
現代ではあまり見ることができない位の光景が空に広がり、数十機の爆撃機が巨大化した神命の頭上へ爆弾を落とした。
地上の砲撃部隊もヤケクソのように撃ちまくり、神命の歩みを止めようとしていた。
やがて爆撃隊が過ぎ去り、攻撃している者は地上部隊のみとなる。
神命を包んでいた爆炎は薄くなり、現在の様子が少しずつ分かるようになってきた。
皆、神命が少しでもダメージを負っていれば……と願う。
「おいおい。嘘だろ……」
爆炎の中から現れたのは、まだ息のある神命であった。
「な、なんだ……あれは」
「効いていない……? いや、それよりも……」
神命は何事も無かったかのように速度を落とさず進んでいた。一緒に巨大化した着ていた服は黒く焦げ、ボロボロとなっていた。
皮膚は綺麗なままであり、相変わらず病的に青白い。
だが、明らかに変わった部分が見られる。
「大きく……なっている?」
「え、えぇ。恐らく……」
測る基準となっていたビルは爆撃により崩れてしまっているので分かりにくいが、スクラップになっている乗用車を踏み潰す足を見ると大きさが変わっていたことに気が付いた。
なんと、神命は20mという大きさから、今では30mほどの大きさになっていたのだ。
「ば、馬鹿な。どういう事だ!?」
「直ぐに新たな爆撃隊をよこせ! 戦闘ヘリによる攻撃も増やすように要請しろ!!」
「了解! 第七爆撃部隊へ。支援爆撃を要請する!」
映画の中の怪獣のように巨大化していく神命。
対峙するゲーム内の自衛隊員達は覚悟を決め全力で挑むこととなった。
一方、巨大化した神命との戦闘をしている現場の上空にて、一機のE-767早期警戒管制機が飛行をしていた。
「これは……。まずいぞ」
機内にて神命の状態を監視していた隊員が、神命の異常さを察知し、慌てて上官へと伝えるた。
「どうした? ……おい。これは本当に対処できるのか?」
報告が上がってきた映像や情報から、神命はどんなに激しい攻撃にさらされても、数十秒後には元通りになっているという驚異の回復力を見せつけていた。
「榊様に報告した方がいいな……」
彼ら現場の。つまり、ゲーム世界の式神達は事態の深刻さを目の当たりにし、すぐに榊 琴音に状況報告をするために通信を送った。
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―尾野 駿視点―
ヘリコプターの中は誰もが無言であった。
そんな中、俺はヘリコプターってこんな乗り心地なんだぁ。という感想を持つ。
人生初のヘリコプター搭乗だ。
こんな時じゃなきゃ喜んでいたんだろうけど……。あっ、そういえば人生初じゃねぇや。変態人身売買集団のアジトから逃げる時に警察のヘリコプターに乗ったじゃないか。
嫌な事を思い出したぞ……。
そういえばあの時、俺はヘリの外に落とされたんだ……。
というか、今日の話じゃん。
まだ1時間も経ってないぞ。
うわぁぁぁ。思い出さなきゃ良かった。
俺、よくあれで高所恐怖症にならなかったよな。
いや、もしかしたら既になっていて、下を見たら発作が……。
そんな事を思っていると、
ピピピッ。
と、着信音が鳴り響く。
俺はその音にビビってしまう。
ヘリの中であるが、防音の結界が施されているらしく、殆ど雑音が聞こえない為このような音でも問題なく聞き取る事が出来た。
「あれ? ゲーム内に残してきた式神達からだ。どうしたんだろう」
と、榊さんは携帯電話のようなものを取り出す。
"携帯電話のようなもの"と表現したのには理由がある。
それは俺が知っている携帯電話とは違いがあったからだ。
「どうしたの?」
榊さんが通信を始めた。
相手の顔がホログラムになって表示される。
そう、俺は今までホログラム表示ができる携帯電話なんて見たことが無いので、"のようなもの"と表現したのだ。
ずいぶんと未来的な道具を持っているんだなぁ。
「<大変です! 悪霊の大元となっていた神命が手に付けられない状態になりました!>」
と、慌てた様子の人物が必死になって訴える。
「どうしたってのよ。まさかあんなに用意した戦車隊やヘリコプター部隊を退けたなんて言うの?」
「<はい……、実はそのまさかでして……>」
申し訳無さそうに答える式神。
見た目は普通の青年の自衛官だ。
「一応退魔術を施した砲弾やミサイルなのよ? 効かないわけがないじゃない。もしそれでも駄目なら爆撃部隊を沢山置いてきたんだからそれを使って街中を更地にするぐらいやって消滅させなさいな」
と、現実世界であれば確実に問題になる発言をする榊さん。
それよりも退魔術を施した砲弾とミサイルとはなんなのだろうか。
退魔の剣やら退魔の矢ならわかるけど。
「<既に6回もやっているのですが、効果が薄いのです……。次で7回目の爆撃を行う予定です。
それに時間がたつ毎に巨大化もしておりまして、今では50mほどの大きくなっております>」
50mだぁ?
最早怪獣じゃねぇか。
「はぁぁ!? なにそれ、ちょっと映像出せないの!?」
「<あっ、はい。ただ今……>」
こうして映し出された映像には、ビルが立ち並ぶオフィス街の間を歩く神命の姿があった。
そして時折大声で鳴く。
その鳴き声が日本語だと気付いた。
声が反響し、よく聞き取らないと分からないレベルだ。
「うわぁ……」
思わずそんな言葉が口から漏れてしまった。
俺は鳴き声……。いや、叫び声が、何を言っているのか聞き取れてしまったのだ。
焦点の会っていない目で真っ直ぐと民家等の建物を踏み潰しながら歩いている。
正真正銘の化け物だ……。
実際には物凄いスピードで移動しているのだろうが、人間のサイズから見てみると怪獣特有の重みのある非常にゆったりとした動きである。
時折顔面が自衛隊の攻撃によると思われる炎と煙に包まれるが、何事も無かったかのようにしている。
「ちょっと、ちょっと! これ50m以上無い!? 絶対50mじゃないわよね??」
「<か、観測によると現在は100mを越えたようです……>」
「……」
言葉を失う榊さん。
「あの巨大悪霊はあの世界から出てくることが出来るんですか!?」
と、慌てて確認をする斉藤さん。
「不可能……ではないかもしれません。あれほど多くの悪意が固まった高密度の魂だ。使える怨念の量が異常です。あれじゃぁ下級神では手が付けられませんよ」
そう言って首を振る神澤さん。
「なんてものを作ったんだ……"あの世界"の狭間雷様は……」
青い顔をして塞ぎこむ斉藤さん。
ほんと、あのドジ神なにしてんだよ!
俺だってアレのヤバさはわかる。
だってアレ、俺を探しているんだもん。
え? なんで分かるかだって?
そりゃぁ……、
「<オォォォォオオオオオオオ!!! ノォォォォオオオオオオオオオオ!!! シュゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!!! ンンンンーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!>」
俺の名前、呼んでいるんだもん。
何アレ、めちゃくちゃ怖いんだけど……。
「現在出口に向かっている部隊は全員あの悪霊に総攻撃を掛けなさい!」
ここで唖然として動きを止めていた榊さんが再起動をして画面? 向こうの式神に指示を飛ばす。
「それでも駄目なら核攻撃よ!! 退魔術を施した核爆弾で攻撃して!」
俺は退魔術を施した核爆弾ってなんだよ。と、ツッコミを入れたくなるが、なんとかそれを押さえる。
そもそもいくらゲーム内の日本だとしても、核爆弾があるなんて、設定ガバガバすぎだろう。
「<その必要は無い>」
「「「「!?」」」」
と、ここで急に回線が割り込まれ、この世界を作ったもう一人の元凶……という言い方は悪いのかもしれないが、そいつが姿を現した事で榊さん達は動揺している。
「あなたは狭間雷様……ですね? 何か手立てがあるのですか?」
なんと、ここにきて顔を見せたのは神命 成一達悪党等をゲーム世界に取り込んだ神、狭間雷であった。
「<あぁ、そうだ。そちらの世界の人々には迷惑を掛けてしまってすまない。私が引き起こした問題は私自らが解決しよう>」
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