第54話 ゲーム世界からの脱出
昨日に引き続き、誤字報告機能を使用し、ご報告していただいている方へ。
とても多くのご報告、助かっております!!('◇')ゞ
誤字報告機能の仕様のためか、IDのみの表示でお名前が表示されず、この場をお借りしてお礼をさせていただきます。
そして、感想を送っていただいた方、ブックマークを付けて頂いた方、評価をしていただいた方。本当にありがとうございます。とても励みになっております!(*^^)v
最終回までどうかよろしくお願いします!
―駿視点―
初めて乗るバイクは、感動とはかけ離れたものであった。
時折頭上をものすごい速さで飛び、通り過ぎる戦闘機。
町には戦車と共にトラックに乗った自衛隊員や警官隊がアサルトライフルを持って俺とは逆の方向へと向かっていく。
街の人たちも老若男女が銃を持って待機している。
とてもバイクに乗った感想が出てくる余裕は無い。
そうしてようやく家の付近に到着した。
ちゅん太に見覚えがある場所まで案内されたが、目の前にあったのは家ではなく大きな黒い円柱状の何かであった。
おそらく家はあの黒い何かの中にあると思われる。
円柱状の黒い存在は国道まで幅を広げており、大きさは直径200~300m位だと思う。
俺の家を中心にその柱は建っている状態だ。
しかもこの柱。ゲームの世界の住人達を続々と"中"に入れている。
いや、取り込んでいると言った方がいいのか? 出入り口が見当たらず、黒い柱の中に人々や乗り物が入っていっているのだ。
入っている人達や乗り物も特殊なモノであり、地上ではパトカーや戦車、空では戦闘機やヘリコプターが次々と飲み込まれていく。
「なに……これ?」
状況が理解できない俺は上を見上げながらそんな事を呟いた。
「尾野 駿殿でありますか?」
「えっ?」
と、突然声を掛けられた。
声を掛けてきた人物の方を見ると、警官の男が片手で持ったノートパソコンのモニターを此方に向け敬礼している。
「あっ、はい」
俺は自然と返事をしてしまった。
警戒をするが、肩の上に乗るちゅん太が大人しいので、危険人物ではないだろう。
あっ! この人、ストーカーの半田を取り押さえた警官の一人だ!
俺はゆっくりと警官に近付く。
すると、突然ノートパソコンのモニターが起動し、
「<やぁ、こんにちは。無事で何よりだよ尾野殿>」
と、狐の面を被った男が前面に現れ俺に挨拶をしてきた。
「うわぁ!?」
誰だこいつ。
……いや、どこかで見たことあるぞ?
あぁ! そうだ。こいつ俺が1週間位この世界で過ごした後、"狭間の世界"だかの神社っぽいところに居た奴だ。
今思えば狭間の世界って、狭間って神が創った世界って事か?
「榊って名前の巫女さんの仲間……ですよね?」
俺がそう質問すると、
「<その通りです。正確には、私は榊家の従者でございます。良くぞご無事でした>」
と、心から安堵している様子が伝わってくる。
「そうだ! 佐々木刑事が。佐々木刑事が変態誘拐犯のボスに殺されちまったんです!」
確か佐々木刑事は榊という巫女さんが用意した式神だったはず。
復活とかできるんじゃないかと淡い希望を持って俺は狐面の男に報告をした。
「<そうでしたか……。彼も本来の目的である尾野さんの救出に尽力でき、きっと幸せでしたでしょう>」
「……ん?」
それだけ?
「あのっ! 復活とかできないんですか?」
ゲーム脳だと言われてしまうかもしれないが、アレはゲーム世界に酷似した世界。
もしかしたら復活するかもしれないと考えたのだが、違うのか!?
「<残念ながら。そちらの世界で死んでしまえば復活は無理です。それに復活させたとしてもこちらの世界に連れてくるのが少々厄介かと……>」
「それはどういう意味なんです?」
復活させたら厄介?
あれか? 人一人を養うのがとんでもなく金がかかるとかそういった話か?
いやいや、それだったら今続々と現実世界にいく為に入っている警察や自衛隊とかはどうなんだよ。
「<佐々木刑事の式神は、現実世界の人間を元にした唯一の存在なので……>」
「……あっ」
そういえば、あの水が広がる世界でそういった説明を受けたと思う。
彼らの組織に協力的な現実世界の人間を元にした存在だって。
元の世界に戻したら佐々木刑事が二人になっちまうな。
だとしたら、最初から使い捨てのつもりだったのか?
そんなのあんまりではないだろうか。
「<彼らには魂はありません。簡易的な術式で組み上げられた存在なのです>」
だとしても割り切れるかよ……。
彼はこの世界に入ってからずっと俺を助けてくれたんだぞ。
「<魂が入っていない存在だとしても、彼の死を悼んでいただけるのは術者冥利に尽きます。感謝をさせていただきたいます。
それに、そちらの佐々木刑事に魂があるとしたら、一刻も早く尾野さんの脱出を願うはずですよ>」
そう言われ、俺は佐々木刑事が最後に俺に言った『君は逃げろ!』という言葉が頭に浮かんだ。
佐々木刑事が俺を想って言ってくれた言葉。そして、命はないと言っているけど、命がけで助けてくれたと思っている。
その想い。無駄にはできない!
「……わかりました。俺は狭間って神様にここへ向かえば元の世界に戻れるって言ってましたが、合っているんですよね!?」
若干、誰に向けてかわからない納得できない怒りを含ませながら続けて質問をすると、
「<はい。今であればゲーム世界の規制が緩くなっており、尾野殿を救い出せる穴を開けることに成功しました。さぁ、時間がどれ程あるかわかりません。直ぐ警察車輌か自衛隊の車輌に乗ってこの黒い柱に飛び込んでください>」
「はぁ!? こ、これにですか……。ってかさっきから続々とこの柱に警察やら自衛隊が入っているけど、何で連れていってるんです?」
俺を脱出させる為の護衛だとでも言うのだろうか?
それにしては多すぎる気がするが……。
「<あぁ、えっと、佐々木刑事の話をした後にするのもなんですが、これは琴音様が欲を出したというかなんというか……。えっと、ゲームの世界の味方NPCを簡易な式神札を貼れば高度な式神に変化する事を発見しまして……。自分の手足として使うために連れ出しているのですよ……>」
「……」
俺はそんな突飛な話に開いた口が塞がらなかった。
あれか? 思わぬ報酬を得られたという感じなのだろうか。
「<と、とにかく早く此方の世界に来てください!>」
「あ、あぁわかった」
結局貰ったバイクは諦めるしかないか……。
一人で乗ってあの謎空間に突っ込んでいく勇気は無いし。
まぁ、元の世界に持っていった所で、車検証とか色々と問題がありそうだもんな……。
俺はそのままノートパソコンを持った警官に連れられ、自衛隊のトラックに乗って黒い柱に突っ込んでいった。
これが所謂トラック転生……いや、トラック転移か?
……違うか。
黒い世界がしばらく続いたが、光が見えてくると一気に別世界が広がった。
見覚えがある水の世界。
ただ、前回着た時とは違い、石の柱がなくなって、大きな橋が何本も通っており、多くの車輌が走っていた。
分かりやすく言えば一般道の上に作られた高速道路のようなものだ。
しかも、水の上には数多くの艦船が移動をしている。
空には無数の戦闘機や輸送機が飛んでいる。
しばらく走るとやはり高速道路のインターように一般道へ降りるような道へと入る。
何処へ行くのだろうかと思っていると、神社が見えてきた時点で納得した。
ただ、神社の裏手には大きな駐機場があり、自衛隊のヘリコプターが何機も停まっている。
トラックはその駐機場に入り、ヘリより少し離れたところに停まった。
「さぁ、どうぞ降りてください」
俺はそう自衛隊の人に案内をされてトラックの荷台から降りた。
あれ? 俺を案内してきたあの警官はどこへ行った?
すると、遠くから小走りで近付いてくるスーツを着た人物が確認できた。
「あぁ~。どうもどうもぉ~」
と、スーツを着た人物は俺の近くまで来ると声を掛けてくる。
眼鏡をかけたいかにも役人風の男だ。歳は30歳位だろうか。
「では、自分はこれで」
自衛隊の人はスーツを着た男を確認すると、敬礼をしてトラックに戻って着た道を戻っていってしまった。
俺はポカーンとしていると、
「えぇと、尾野 駿さんですね?」
スーツを着た男が俺に話しかけてきた。
「あ、はい。えっと、あなたは……」
正直この時点で狐面を被った者達以外の人物が登場するなんて思わなかった。
「はい。私は『日本異世界召喚対策室』の斉藤と申します」
そう頭を軽く下げて自己紹介をされた。
なに? 異世界召喚対策室??
目の前の斎藤という人物は、紺色のスーツをピシッと着込んだ30代半ばの男であった。
「秘密組織の為、名刺をお渡しできず、申し訳ありません」
などと、その人物は謝ってくる。
「いえ……。異世界召喚……対策室ですか? えっと、名前からして異世界に召喚された人を助けるという事でしょうか?」
俺は混乱しながら紹介された名称を繰り返しながら質問すると、
「日本異世界召喚対策室ですね。はい、近年増え続けている日本人が異世界へ召喚されてしまう事件の被害者を救出、または異世界に渡らないように守る組織です」
「はぁ……なるほど」
わかったようなわからないような。
そもそもそんな組織ができるほど日本人が異世界に召喚されることが増えているという事実に驚く。
俺みたいにわけのわからない事件に巻き込まれている奴が多数存在しているのか?
「一応今回の事件も異世界召喚に近い転移という形ですからね。私のような組織の者が救助に選ばれたのです。
まぁ、尾野さんが呼ばれた世界が悪霊に改造されたゲームの世界という特殊条件下であったため、今回は専門家に救助の依頼をさせていただいたのです」
「はぁ……。えっと、専門家というのは榊家という人達の事で?」
「はい、その通りです。彼女等は霊的存在に対するプロフェッショナルですからね。さぁ、此方へどうぞ」
あの狐面の人達と協力関係を築いているとは。
日本政府の役人という事だろうか?
と、いう事は、一連の俺の救助を担当した代表者と考えてもいいかもしれない。
俺は案内されるがまま、一機のヘリコプターに乗せられる。
機種は"ブラックホーク"と呼ばれるものだった。
こいつが落ちる映画をみた事があるが、今は攻撃されている真っ只中ではないので墜落する可能性は無いだろう。
ブラックホークに乗り込むと、そこには先客が居た。
「あ。どうもでーす」
「ご無事で何よりです」
狐面の男女が居た。
一瞬ビクッと引いてしまったが、俺を度々救ってくれた恩人達だ。
若干時間が経過したことにより頭が冷えたので、狐面の男に対しては失礼な態度をしてしまい申し訳なく思っている。
「チュンチュン!」
「あら? ちゅん太も無事だったのね? お疲れ様」
と、巫女さんはちゅん太にも優しく声をかけていた。
式神に対しては優しさを感じている。
その様子に少し安心した。
「そういえば尾野さんにはちゃんと自己紹介をしておりませんでしたね……。既にご存知の通り、あの狭間雷様の世界では私達と狭間雷様は敵対関係だったようなので……」
と、巫女の方が言いながら、
「改めまして。榊 琴音といいます」
続いて男の方が、
「神澤 峰貞と申します」
名前を名乗った。
「あ、尾野 駿です。今回は助けてくれてありがとうございます」
そう言って俺は頭を下げる。
「いやいや~、気にしないで下さい。此方としても遥か昔に袂を分かった一門の子孫がこんな外道な事をした責任があるのですから」
巫女さんは本当に申し訳無さそうに言う。
「……えっ?」
ん? ちょっと待って。今なんていった?
「……あれ? もしかしてゲームの中に居た神様の狭間様に何も聞いていないですか?」
「あっ、いや。被害者達を悪霊が苦しめているとか、狭間という神様は力を悪霊達に封じ込められていたとかいう話だけだが……」
そこでふと思いつく。
「あぁ、いや。一つ聞いたぞ。確か庄平の一族が狭間という神様を祭っていたと。庄平の一族があなた達の関係者という事なんだな?」
「あぁ、いや。それもそうなんだけど……。えっと、正直に言っちゃいますと、神命 成一も私達の遥か昔の関係者でして……。こんな悪事をするならば私が住んでいた世界の神命 成一だけでも、僅かに残った能力を剥奪とかできたわけですし……」
と、本当に申し訳無さそうにしている榊 琴音。
「げぇ……。あいつもそうなのかよ……」
申し訳無さそうにしていたのはそういった理由だったか。
庄平が一族の関係者でもまぁ、人助けが出来た分それほど怒りは湧いてこない。だが、あのクソ主人公の関係者だったとはなぁ。
遥か昔と言っていたけどどれくらいなのだろうか。
「えっと、本当に申し訳ありません……」
「ん?」
なんだか榊さんが頭を下げている。
「どうかお許し下さい。もう神命の家が没落したのが300年以上前の話で、彼等に力は殆ど残っていないはずだったのです。
まさか死んでから自分達が合体することによって能力が覚醒するなんて思わず……。しかも今回事件の切っ掛けになった盛田家は我々が住む次元の盛田家ではなかった為、情報収集が遅れてしまったのです」
神澤も一緒になって頭を下げている。
どうやら怒りが顔に出ていたらしい。
「あ、あぁ……。いや、あのクソ主人公に対して怒りを感じていただけで、貴方達に対してどうこう言うつもりはありません。寧ろ助けてくれたのでお礼を言う立場なのです」
300年以上前に分かれた一族の事を今更とやかく言う訳にも行かないだろう。
それに別次元……パラレルワールドの人物が起こした事件ならもはや他人だろうよ。
「じゃぁ、こっちの。俺が住む世界の狭間の神様や盛田。それにゲームのヒロインの元となった人達は元気なのか?」
と、確認をとってみる。
「はい。盛田家の面々を含め、ヒロインとなった人達は元気です。ただ、悪役であった神命 成一は我々の次元の狭間雷様が魂を抜いてパラレルワールドに送っていたので、我々の世界の狭間雷様はシバかれています」
こっちの世界の狭間の神様は全くの無関係ではなかったのか……。
そしてお仕置きを受けているのか。
「我々の世界では誰もあの神命達の被害に遭わず元気にやっていますよ。なにせ悪役達は生まれて直ぐに死んでますから。ですので、我々日本異世界召喚対策室も既に手の出しようがないのです」
と、ここまで空気であった斉藤さんが説明をしてくれた。
ともかく、真相っぽいものは一応一通り知ることが出来たと思う。
悪役達に対してはは赤ん坊の状態で死んでいたため、可哀想なのとザマァ見ろという感情が入り乱れよく分からない感覚だ。
更正する機会があったのか、はたまた犯罪にまったく関わらず生きていくことになっていたのかなんて分からない。
恐らく更正する余地がなかったから殺されたんだろうと思いたい。
やがて、
「準備が整ったので出発します」
と、パイロットから声を掛けられて俺達は地上から離陸した。
神社があっという間に小さくなっていく。
周りには輸送ヘリの他に攻撃ヘリの群れが一直線に同じ方向へ向かって飛んでいた。
下では大量の戦車部隊と艦隊。
上には綺麗な編隊を組む戦闘機と輸送機。
まるで戦争映画の中の世界だ。
榊さんからは、
「このヘリは私の術で防御や消音能力を付与したので、ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしませんし、中で苦も無く会話ができますよー」
と、教えてくれたが、今は雑談する気分ではなかった。
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