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第5話 鬼畜主人公の代わりに



 翌日。


 学校にて、俺は人気が無い廊下へ豊森先生を呼び出し、とあるお願いをしていた。


「私に尾野君の携帯で撮影した野和さんの動画が入っていないか、確認をしてほしい。ですって?」


 と、豊森先生は驚いた顔をして俺に聞き返した。


「はい。実は警察の方から一昨日の事件の動画が入っていたスマホを返してもらう予定でして。

 ですが、その動画の内容が問題でして……」


「うん……。そうね。あまりよろしくない内容よね」


 豊森先生は直ぐに察してくれたようだ。


「はい。あまりよろしくない野和さんの姿が映ってしまっているので、ちゃんと消えているかどうかチェックをしてもらいたいんです。副担任という身近な存在で、尚且つ女性の先生がチェックをしてくれるのであれば、野和さんも安心できるでしょうから。

 野和さんに辛い事を思い出させるわけにもいかないので、チェックには立ち会わせない方が良いかと思いましたし、ちゃんと動画が消えている事を確認した後に報告したいと思っています」


 そう、俺は昨日の佐々木刑事の電話でこの内容を思いついたのだ。


「そこで警察の方も、学校内に警察が入るとまた学生達に不安を与えそうだから。と、別の場所で渡したいそうなんですよ」


「う~ん。そうねぇ。確かに」


 よし、豊森先生も悪く無い反応をしているぞ。


「そこで、集合場所は先生の自宅なんてどうでしょう?」


「え!? いや、駄目駄目!駄目よ!」

 ここで慌てて否定してくる先生。

 やはり自宅は駄目か。

 だが、ここまでは想定通り。


「では、先生の自宅の近くに人気の無い公園や空き地なんてあります? ファミレスとかだと動画内容がアレですから、人目についてはいけないので……」


 ちなみに豊森先生の家の近くに公園がある事は昨日見たので知っている。

 公園なら夜なので人気は少ないだろうという考えでの提案である。

 佐々木刑事にもあらかじめそこを集合場所として伝えていた。


「う~ん、条件に合う公園なら私の家の近くにあるけど……」


「なら、そこに決定です。公園の名前を教えてください」


「分かったわ」


 こうして知らないふりをし、公園の名前を聞いた。


「時間は? 何時頃?」


 ここで俺はあらかじめ決めておいた時間を伝える。


「夜の7時半でお願いします」


 原作でも夜の7時に豊森先生が羽間に自宅を突撃された時間だ。

 主人公が帰宅して『7時か……。する事もないし先生の家に仕掛けたカメラでも見るか』とか頭がおかしい事を言ってたからな。

 そういえばあいつはいつ隠しカメラなんて設置したんだ?

 まぁ、それは置いておき、主人公が隠しカメラの映像を見ているとその直ぐ後に豊森先生が襲われたのだ。


 ちなみに30分ずらして伝えた事には理由がある。

 早めに佐々木刑事と公園に行った方がいいと思ったらだ。

 誰かが遅れて救出に間に合いませんでした。じゃ話にならない。


「わかったわ」


 よし、これで準備は整った。

 この話も他の先生に聞かれていない。

 後は……。


「一応この件は今日は秘密でお願いできますか? もしどこからか野和さんにこの件が伝わったら嫌な思いをするかも知れないので……」


「それも了解。それじゃあ公園で待ってるからね」


 そう言って豊森先生は廊下を歩いて行った。


 豊森先生の後ろ姿を見届けた後、俺は豊森先生とは逆の方向に向かって廊下を歩き出す。

 そして俺が角を曲がった時、


「何を話してたのかな?」


 と、目の前に現れた人物に声をかけられた。


「うわぁ!? さ、坂江さん!?」


 そこには坂江さんが呆れた表情をしながら立っていた。

 脅かすんじゃないよまったく。


「えっと、どうしたの?」


「どうしたのはこっちの台詞だよ?豊森先生と何を話していたの?」


 ジト目で睨んでくる坂江さん。

 いろいろと事情は話してしまったので、下手に言い訳はしないほうがいいかもしれない。


「昨日の件だよ。豊森先生に注意しておこうと思ってさ。で、今日は偶々警察から俺の携帯が返ってくるんだよ。その時に携帯に事件の動画がちゃんと消えているか確かめてもらおうと思ったんだ。

 ほら、警察の人に注意してもらった方が俺が言うよりも豊森先生は気を付けてくれるんじゃないかなぁって思ってさ」


 嘘は言ってない。

 重要な事を言っていないだけで、全部本当のことだ。


「ふぅん」

 ちょっと疑いの目がありつつも、不自然な点が無さそうだと理解してくれたみたいである。


「じゃぁ、私も行く」


「え!?」


 え? 急に何言ってやがるんだ??


「今までの行動から尾野君をあんまり疑いたくないけど、携帯の動画の件は紗香ちゃんの友人として、消えているかちゃんと確認しなきゃね」


 そう言って胸を張っていた。


「だけど、もしもの事があったら……」


「それって羽間先生の事だよね?」


「あぁ。豊森先生を昨日襲うとか言っていたから」


「私を誰だと思ってるの?女子剣道部エースだよ?」


 それを自分で言っちゃうのかぁ。

 俺は知っているぞ。君はいくら強キャラでもゲーム内では鬼畜主人公に負けてるのだ。

 でも、それを言うわけにもいかないし、今回は佐々木刑事も居るから大丈夫だろう。いざとなったら俺が守ればいいし。……俺は坂江さんより絶対弱いけど。


「わかった。そこまで言うなら頼りにさせてもらうよ」


 渋々承諾した。


「任されました!」


 そう元気よく返事をした坂江さんはスキップをしながら去って行った。

 はぁ……。元気そうで何よりだよ。


 意外な展開になってしまったが、大丈夫だろうか。


 まぁ、佐々木刑事もいるし、後方に控えておいてもらえば大丈夫だと思いたい。


「はぁ……」


 俺は坂江さんが見えなくなってから溜息を吐く。


「俺も酷い奴だよなぁ」


 なにせこれじゃぁ豊森先生を囮に使うようなものなのだ。


「ハハッ。こんなことをしても帰れる保証なんて無いのにな……」


 だけど、奴らの所業を見逃して生きていける程、俺の神経は図太くない。

 自己満足? それの何が悪いんだ。

 元の世界に戻れない可能性があるならば、せめて俺にとって住みやすい世界にしてしまおうではないか。


 それにこの世界のクソ共を片付ける為に手段を選んでいる時間なんてないんだよ……。





 こうして俺は放課後になるまで、本当の学生のように授業を受けた。







----------------------------------


―羽間視点―


 俺は今日、一人の女を襲う予定だ。

 対象は同僚の教師。豊森 奈菜。


 最初の頃は俺に色目を使って接近し、その気にさせやがったが、最近は何かと理由を付けて俺の誘いを断ってくるビッチだ。


 俺はああいう女が許せない。

 昨日も食事に誘ってやったというのに断りやがったのだ。


 生徒に下の名前で"ちゃん"付けで呼ばれるような情けない教師の癖に、俺の誘いを断るなんて生意気だ。


 そう、これは指導なのだ。


 先輩が後輩に指導するだけなのだよ。



 指導対象の奈菜が帰宅する時間を計算に入れ、俺も帰る。


 ふむ。今日は早く帰るのだな。


 既に自宅は把握している。

 部屋番号もな。


 あの二階建てアパートの奈菜の両隣、下の階には人が住んでいないことは調査済み。

 今の時間帯は近くの部屋の他の住居者は仕事で居ない。

 大して古くない造りなので、いくら騒ごうが大丈夫だろう。


 俺は移動手段として使った自家用車の中で宅配業者っぽい制服に着替え、空の段ボール箱を持って奈菜の部屋の前へと移動する。

 そして、呼び鈴を押し……。


ピンポーン。



「はーい」


 呑気な声が部屋の中から聞こえる。


「柴犬運送です。豊森 奈菜様宛てのお荷物をお届けに参りました」


 若干声を低くしながらそう言うと、


「は~い」


ガチャ。


 奈菜は簡単に部屋の扉を開けた。

 その瞬間俺は部屋の中に入り込む。


「キャッ。な、なんなんですか!?」


「よぉ」


「えっ……、羽間せん……せい?」


「あぁ、僕だよ。奈菜」


 奈菜は俺がこの場に居る事に驚き、状況が飲み込めていないようだった。


「来い! 騒いだらどうなるか分かっているだろうな?」

 俺は持っていたダンボールを捨て、隠し持ってたナイフをポケットから取り出してチラつかせ、奈菜を脅す。


「ひっ!? ど、どうして」

 奈菜はようやく状況を理解したのか、顔を真っ青にしてガクガクと震えだす。


「決まってるだろ? お前を俺の女にする為だよ」

 する事は決まっている。奈菜に向かってナイフで服を切り裂いて下着姿にする。


「ぐひひひひ。そら、もう一丁!」


「いやぁぁぁぁ!」


 そして下着も切ったので、奈々は身に付けているものは何もない状態になる。これで外には出られないだろう。


「おぉぉ……」


 俺は次の行為に移る前に感動してしまう。

 あの豊森奈菜の美しい裸体が目の前に晒されているのだ。

 この日をどんなに心待ちにしていたことか。


 今日から眼前にある光景全てが俺の物だ。


 必死に体を隠そうとする奈菜の手を乱暴に払い除け、奈々の体を目に焼き付ける。

 これから楽しむ事に夢を膨らませ、自分のズボンに手をかけようとした。


 その時、



ズガンッ。



「豊森先生! 来ましたよぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」


 と、玄関から扉が開く音と共に男の声が聞こえた。

 なんだ!?


「な!?」


 しまった。鍵を掛けるのを忘れていた!

 俺は慌てて部屋の奥へと土足のまま上がり込む。


 奈菜も同様に部屋の奥へ逃げたようだ。


 そして男の声が聞こえたかと思えば一直線にこちらへ突撃してくる我が校の学生服を着た男子生徒。


「うおぉぉぉぉぉおおお!!!」


「グッ!?」

 その男子生徒は俺が持っていたナイフを蹴り飛ばした。

 油断した!

 ナイフは部屋の奥へと飛んでいってしまう。


カキン!


「きゃっ!」


 壁に当たったナイフの音で、奈菜は悲鳴を上げる。


「何をしている!?」


 もう一人知らない男が俺を睨んでこちらへ先ほどの学生と同様に部屋の中を土足で走り向かってきた。


「捕まえたぁああ!!!」


 男子学生が俺を逃がさないようにする為なのか腕を掴む。


「チッ」


 俺は舌打ちをして男子学生の腕を振り払い張り手で押し退ける。


「グギャ!?」


 男子生徒は吹き飛んだ後、壁に当たってぐったりと倒れた。


「貴様!大人しくしろ!」

 部屋に入ってきた別の男は怒りの表情を浮かべ俺に命令をし、掴みかかる。

 だが、その前にそいつの顔面に蹴りをした。が、両腕で防がれてしまい奴は俺の懐に迫ってきた。


「クソが!!」


 後ろへと回避し、追撃してくる男をスルリと避け、玄関へと逃走する。

 しかし、


「逃がさない!」


 と、正面。玄関の付近でもう一人の人影が俺を遮った。

 やはり俺が勤める学校の生徒で、女子生徒だ。

 見たことがある。

 確か剣道部のエースと言われている奴だ。


 女子生徒は玄関にあった傘立てから一本の花柄の傘を手に持ち、構えている。


「突きぃぃぃいい!!」


 女子生徒に近付くと、容赦なく突きの攻撃が来た。

 先が尖っていないといっても竹刀の先よりも細い。

 体に穴が空く事は無いだろうが、結構なダメージを負いそうだ。


「ふんっ」


 俺はギリギリで体をよじらせて避け、女子生徒の体の近くまで踏み込み傘を持つ手を思い切り弾こうとする。

 だが、それは叶わず女子生徒は後ろに下がり、俺の拳は傘の真ん中辺りを強く叩く結果となった。

 傘は壁に当たった影響もあり、真ん中からポッキリと折れる。

 それを確認した女子生徒は傘立てから安そうなビニール傘に持ち替える。


「ん!?」

 そうこうしていると後ろから掴まれて引き倒された。

「ググッ!」

 体勢を立て直そうとしたが腕を捻じ曲げられ組み倒される。


「警察だ! 暴行の現行犯で逮捕する!」


「な!?」


 驚いた事に俺を組み伏せた人物。男子生徒の次に奈菜の部屋へ入ってきた男は警察だったらしい。

 今日、俺がしようとしていたことがバレていたのか!?

 どうして??


「クソォォオオオ!! 放せぇぇええええ!!!」


 俺がどう動こうがびくともしない。

 終わったのか?

 俺の人生、これで終わりなのか!?


「ふざけるなぁぁああああ!!!」


 俺は体を押さえつける警察の仲間達が到着し、パトカーに乗せられるまで喚き続けた。



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次の話も3日後投稿の予定です。

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