第47話 天へと昇る
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※2019/07/20 23:05
「さぁ、全員天国へお迎えだ。地獄へ行っていた者は今までの罪は帳消しとなり、無事天に昇ることを約束しよう」
と、突然狭間が大きな声で宣言をした。
「ワーオ。自殺した私もデスカー?」
などと、フリュードさんが困ったような笑顔を浮かべ質問をする。
え? 君自殺していたのかよ!?
「あぁ、君もだ。安心しろ。君にとっては異教の神の導きで申し訳ないが、そこは我慢してほしい」
そう狭間が声を掛けると、多くの人たちが光とともに空へと上がっていった。
なんじゃいこりゃ。
「尾野……君、いえ、尾野さん?」
「ん? あ、はい」
突然光り輝く野和さんに声を掛けられた。
「最後にもう一度お礼を言わせてください。ありがとうございました。あなたのお陰で全部記憶が戻りました。そして、もうゲームの中で辛くて悲しい事をさせられなくて済みます」
確かに本来ゲームの中での彼女達は目も当てられないほど悲惨な状態になっちまったからなぁ。
というか、君たちよく庄平や狭間という神を許せるな。
「お、おう。まぁ、俺も帰りたかっただけだし……」
「それでも助けてくれたことは忘れません。ありがとう、本当にありがとう――――――――――」
そう言って野和さんは消えていった。
ゲームでは一番最初の被害者だった。
その野和さんが、笑顔で天へと昇っていく。
「ありがとう……。私は助かる資格なんてなかったけど、あの男を倒してくれた事は感謝してもしきれない……」
次に三田川さんが頭を下げながらそう言って消えてゆく。
三田川さんは、加害者でもあり被害者という微妙な立場だ。
ゲームでは洗脳されているという描写が強く出されていたのは、もしかしたら狭間や庄平が彼女に少しでもゲームプレイヤーの悪意が向かないように抵抗した結果かもしれないな……。
次に坂江さんが彼女の弟と共にやって来た。
「いくらゲームの中とは言え、一歩間違ってたら死んでいたんでしょ? もうちょっと自分を大切にしてね?」
「あっ。はい、すみません」
叱られてしまった……。
すると坂江さんはふと笑顔になり、
「それでも弟も含めて助けてくれてありがとうございました」
「うっす、ありがとうございました」
そう姉弟共に礼を言い消えていく。
天国でも姉弟仲良くしてほしいものである。
そして次々と他のヒロイン達は再び礼を言って天へと旅立った。最後まで残ったのは庄平とその家族だ。
「私達の願いがこのような形になってしまったことは深く反省している。申し訳ない」
俺の父親役であった人物がそんな事を言ってきた。
「先ほど、真希も言っていたが、私達一族は代々狭間様を祭っていた一族だった。そんな一族の一員である真希が神命に襲われた事が切っ掛けだった。我々は家族総出であの男に復讐する為にこのような事をしてしまったのだ。
庄平だけの責任ではない。これは我々の責任でもある。」
気持ちはわからんでもない。
それにもう俺に謝る必要はないだろう。
「いえ、あんな胸糞悪い奴が世間にのさばっているなんて許せませんから、俺の事は気にしないで下さい。俺も帰れるんでしょう?」
「あぁ、それについては問題ないと思う……ですよね?」
父親役の男が狭間に確認すると、
「問題ない。先ほどこの世界に干渉居てきた術者から連絡があった。無事此方の世界から尾野殿を連れ戻す道が開かれたらしい」
「おぉ! そうでしたか」
父親役の男だけではなく、母親役の女性や真希ちゃんはホッと胸をなでおろした。
「本当にありがとう。そして申し訳なかった。
そして、みんなを救ってくれてありがとう……。
駿の事は絶対に忘れないからな」
今度は庄平がそう言ってくる。
彼もまた光の粒子に包まれていた。
「気にするな。それより、向こうではちゃんと幸せに暮らせよ」
「あぁ、本当にお前はいい奴だな――――――」
こうして彼等家族も天に召された。
「俺は……そんなに立派な人間じゃないよ……」
俺はそう言ったが、既にそこには狭間雷以外誰もいなかった。
俺は何もできなかったに等しい。
変態達を倒すため、誰かを誘導したかもしれないが、最終的には俺は何も活躍できていない。
俺は無力だ……。
それでも無力な俺に対して彼女達はお礼を言ってくれた。
あぁ、それでも……もっと俺に力があれば……。うまくやっていたならば……。せめて、俺が見てきた彼女達だけでも苦しめずに救うことができたのではないだろうか?
そう俺は思った。
ヒロイン達、そして盛田家の面々。
このゲーム世界の元となった世界で悲惨な境遇を受けた彼らは、優しい暖かな光に包まれ空へと上がっていった。
僅か2週間ちょっと過ごした人達。
短い間だったが、これからの人生、俺にとって忘れられない人達になった。
彼らが何故死ななくてはいけなかったのか。
何故神命などという愚か者に人生を狂わされなくてはいけなかったのか。
考えてもすぐに答えなんて出ない。
この結果がよかったかなんてわからない。
ただ、彼らの理不尽な境遇にイラついている自分が居た。
そして彼女達に対して……、
「安らかに眠ってくれ……」
俺の口からはそんな言葉がポツリと出た。
海岸の砂浜に残されたのは俺と神である狭間だけだ。
「……えっと、そういえば、彼女達はどうして集まって来れたんだ?」
それが不思議であった。
何故彼女達、神命の被害者達がこの場に集まったのか。
特にフリュードさんは空の上だったはずだ。
途中で降りたとしても、ここまで来るのに時間がかかるだろう。
「あぁ、それはな……。タイミング的に今しかないと思い、私が引き寄せたのだ」
「へ?」
どういうこと?
「前回の失敗を反省し、天に昇らせることができる状況になれば迷わず行かせようとしたのだ。
下手な復讐の機会を与えて逆に利用されたからな……。今度は確実に私の手で……」
「なるほど……」
また状況が変わって神命の手で世界が創り変えられたのでは堪ったものではないからな。
「……それで、俺はどうすればいいんだ?」
帰られることは分かったが、帰り方がわからない。
隣に居る狭間にそう聞くと、
「あぁ、帰り道だろ? それならこのままこの世界の盛田家に……いや、君が今日までゲーム内で過ごしてきた尾野家に向かうと良い。あそこに出口は開かれているとのことだ」
「なるほど、わかった」
そう言うと、
「チュンチュン!」
俺がこの世界に来てから、最も頼りになる存在の声が聞こえてきた。
「ちゅん太! 無事だったのか!?」
空からちゅん太が舞い降りる。
正直死んだと思っていました。
飛んできたちゅん太を見た狭間は、
「君の次元ではこれだけの事ができる術者がいるのだな……」
と、感心したように呟く。
なんの事だ?
俺が不思議そうにしていると、それに気付いた狭間は、
「あぁ、いや。あの雀、高度な術で構成されている式神のようだからな。私が居た次元ではここまでの術を使える人間は既に絶えてしまっていたのだよ」
確かに、家一軒分に結界を張ったり、強化された変態共の体に穴を開けることが出来る雀だからな。
俺もあの狐面の巫女さんは凄いと思う。
「チュン! チュン!」
「へ?」
突然ちゅん太が今までにない位、大きな鳴き声を発した。
すると、ちゅん太のつぶらな二つの目から青い光線が地面に向かって飛び出した。
ほんと、何してんの??
「これは……」
狭間も驚いているようで、俺達はその光線を警戒する。
やがて、今度は人ぐらいの大きさまで光りは縦に伸び始め、光りの線は太くなり――――、
「<――――お久しぶりですね。尾野 駿さん。そして、この世界では貴方は初めましてになりますね。『狭間雷』様>」
と、いきなり光りに映し出されたのは、先ほど噂をしていた狐面の巫女さんだった。
半透明の姿で現れているため、これは一種のホログラムだと思われる。
「……この雀の式の術者か。その通り、私が狭間の空間を操り、この世界を創造した神。狭間雷である」
と、威厳たっぷりといった感じで答えていた。
だが、忘れてはならない。この神は色々とやらかした存在なのだ。
「どうやら、この事件を解決する手助けを現実世界からしてくれたようだな。なにやらこの空間の力を使って式神を増やしているようだが、刑務所に閉じ込めた悪霊共を警戒しているのかな?」
そう狭間雷は質問をする。
式神を増やしている?
一瞬量産されたちゅん太やますます言ってる警官達を思い浮かべた。
なにその最強軍団。
「<それもあります。それよりも、此方の世界の人間を守っていただいたようで、ありがとうございました>」
そう言って巫女さんはペコリと頭を下げた。
「彼が巻き込まれたのは私の失態だから当然だよ。そうは言っても守るという程の事はしていないがな。感謝するのは此方の方だ」
狭間はそう言った後、
「さて、せっかくだから名前を聞いておきたいのだが、もしや貴殿は朝廷お抱えの術者かな? 私の居た世界では、貴殿のような術者はなかなかと見かけなかったのでな」
そんな質問を狐巫女さんにしていた。
俺は二人から完全に置いてけぼりにされているような感覚だ。
術がすごいとか良く分からないしね!
そして巫女さんは狭間の質問に対し、
「<これは申し訳有りません。名乗り遅れてしまいました」
と、頭を下げた後、
「私は『榊家』本家当主の孫娘、『榊 琴音』と申します>」
そう名乗った。
「ゑ……」
へー。巫女さんの名前、榊 琴音っていうんだ。
俺が最初に会った時は敵がどうこう言って名乗れなかったみたいだからな。
神命達も全員倒したことだし、今はその心配が無いのだろう。
「さ……ささ……」
……おや? なんだか狭間の様子がおかしい。
ぷるぷる震えているぞ?
「さ、榊だと!? 榊とはあの榊なのか!? な、なぜ榊がこれ程の力を……!? いや、それよりも……いかん! 尾野君。直ぐにその雀から離れるんだ! あの者には厄介な神が味方に付いている!」
と驚き、俺を守ろうとしてか、狭間雷は俺とちゅん太の間に入り込む。
ん? どゆこと?
「<混乱されているのも無理はありません。やはり狭間雷様は全ての時空の歴史には触れてはいないのですね>」
「どういうことだ!」
なんだか狭間の声色が怖くなってきた。
なんで怒ってるの?
「<いえ、馬鹿にしたつもりはありませんでした。端的に申し上げますと、私達が居る時空といいますか、世界は、榊家と反榊家との争いは起こらなかった世界なのです>」
なに? 反榊??
穏やかじゃない話だな……。
「そんな!? では、妖怪界の門の封印や五頭家との戦争は!?」
狭間がものすごい狼狽している。え? 何? 妖怪界? 五頭家? 俺、付いていけてないんだけど。
「<五頭家と反榊家の戦争はありませんでしたし、妖怪界の門は封印されていません>」
「なんだと!? それではそちらの世界では、妖怪共に好き放題させていたのか? いや、そもそも妖怪共による被害も無かった世界なのか!?」
「<いえ、そうではありません。私の世界では、五頭家が妖怪界に侵攻した世界なのです>」
「侵攻したぁああ!?」
狭間は発狂している。
う~ん、俺も妖怪界とかいう単語が出てきた事に驚いているよ。
そもそも妖怪界ってあったんだな。
あれかな? これは日本の裏事情とか、隠された歴史とかそういう話なのだろうか?
「<はい。侵攻して一部を征服し、榊家は多くの土地を与えられ、配下にも富が分配された結果、反乱など起きませんでした>」
「妖怪界に侵攻したとか頭がおかしいのではないか!? それでは盛田家はどうなったのだ!?」
「<現実世界と妖怪界を繋ぐ門を形成する組織に所属していますから、それなりの地位に居ますよ?>」
「そんな……。榊が分裂しない世界など……ありえるのか?」
「<まぁ、私的には分裂した世界がある事に驚いていますからね。我々榊家は代々強固な団結力で大きな戦争も無事乗り切れたりしましたから>」
「そうか……。そうなのか……」
狭間さんは放心状態のようだ。そして、
「ならば、そちらの世界の私は、それなりに裕福だったのだろうな」
と、何処か羨ましそうにしている。
「<えぇ、ですが今回の件で罰を受けていますよ。幼い頃の神命達の魂を殺めてせっせとそっちに送っていたのが発覚しましたからね。こっちの世界の狭間雷様は、『狭間鏡』様に捕まってボコボコにされて、収監されていますよ>」
狭間鏡ってだぁれ?
狭間雷の親戚?
「うぐっ……それは確かに悪い事をした。私の神命達に対する記憶を出来るだけ各次元に送った影響だ。私に責任がある。……まぁ、あの鏡の奴に捕まってボコボコにされたのは癪ではあるが……」
ライバル的な神様?
「<そうなのですか? こっちの世界では常に頭が上がらなかったようですよ?>」
空気を読めない榊さん。
ライバルに負けっぱなしの情報なんて要らないぞ。
ほら、狭間がムッとした顔をしているじゃないか。
「<まぁ、今回の事件が起きる前は奥さんの狭間鏡様に殴られてたとしてもデレデレしていただけでしたけど>」
「「えっ?」」
今、なんか変な事言わなかった?
「ちょ、ちょっと待て。そっちの世界の私は鏡と夫婦になったのか!?」
凄い汗をダラダラ流した狭間が聞いていた。
いがみ合っていたライバルと結婚。なにその胸熱展開。
「<えぇ、そうですよ? すっごいおしどり夫婦です>」
と、普通のトーンで答える榊さん。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
おい! 狭間がバグったぞ!
「<ありゃぁ、よっぽどそっちの二人は仲が悪いみたいですねぇ。こっちでは年がら年中うざったい程ラブラブだったのに……。『いっくん』とか『かがみん』とかで呼び合ってたんですよ? 正直ドン引きでした。
ついでに貴方達の子供の数にもドン引きでした。なんですか? 100人超えって。貴方達、創世記の神様じゃないですよね?>」
「111000111000000110110101111000111000000110010110111000111000000110010001111000111000001010001011111000111000000110101010111000111000000110000001」
おいやめろ。これ以上爆弾を投下するな!
こっちがドン引きだよぉ!
ヤヴァイ。なんか狭間が突然変な数字を話し始めたぞ!
「うぅぅ……」
あぁ……泣いちゃった。
榊さんも口では感謝をしつつも、事件を起こした原因を作った狭間に対してあまりいい気はしていないようだ。
それは俺も同じだけど。
「そういった世界も……あるんだなぁ」
ついには達観してしまった。
「<とにかく、これから我々は尾野さんを回収します>」
「……あぁ、私の処分はいかようにしてもらっても構わない」
「<……それは貴方の次元に居る神々が決めることです>」
「……わかった」
狭間はそう言って俺に向き直る。
「いや、取り乱して悪かった。詳しいことは後で彼女に聞いてくれ……」
「あっはい」
妖怪界とか攻め込んだとか色々と知りたいことが多くなったからな。
「それではこれで私ともお別れだ。重ねて言うが、本当に申し訳なかった。そして奴等を倒してくれてありがと――――――な……なんだ!?」
「だから気にするな。……って、どうした?」
突如顔を歪める狭間。
何事だろうか。
「馬鹿な! 奴等……今更抵抗をしようとしているのか……? しかし、これは……あまりにも」
「おい、どうした!いったい何をそんなに慌てているんだ」
俺は堪らず声を荒げながら問う。
さっきからわからない事だらけなんだから、これ以上わからない事を増やさないでくれ!
「!? あ、す、すまない。……いいか? 落ち着いて聞いて欲しい……」
そう前置きを言った後、
「神命を含めたこの世界に連れて来た悪役共の生き残った連中が、一斉に刑務所から脱獄したようだ……」
「はぁ!?」
俺は間の抜けた声でそう聞き返したのであった。
琴音:「はい、ということで今回もやってきました特別解説役の琴音です」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:雀の形をした式神、ちゅん太です。
琴音:「では今回の解説に参りましょう」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:よろしくお願いします。
琴音:「今回は物語の謎を全て解決した話でした」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:悪霊達もミスをしていたとは……。
琴音:「さて、では細かい点を解説していきましょう。
まず、なぜ尾野駿が盛田庄平のポジションへとなったか。
これは悪霊達が急遽この世界へ入り込んだ異物である尾野駿に対し、ゲーム世界が円滑に進むように用意された場所だからです。
元々盛田庄平が入る位置は空白となっていたため、無理やりねじ込んだ。そういう状態だったのです」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:それじゃぁ、肝心の盛田庄平は元々どのような立ち位置だったのですか?
琴音:「彼もまたモブ。盛田庄平は悪霊達にとって当初から明確な敵であった為、ただの一般人として決められた行動しかできませんでした。しかし、意識ははっきりとしているので、ヒロイン達がひどい目にあっている姿を間近で感じていながら何もできないという辛さをずっと与えられていたみたいですね」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:大切なヒロイン達に対し何もできず、しようとしても体が動かない。見ているだけしかできない存在……。辛いですね。
琴音:「そして、イリス=フリュードが天国に行けると知り、喜んでいた理由は、彼女が入っていた宗教の影響です。彼女は自殺をすると地獄に落ちる宗教と神を信じていたので、このゲームの世界に来るまで地獄にいました」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:おぉぉ……。
琴音:「というわけで、今日の解説はここまで。皆さんさようならー」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:さようならー!




