第42話 化け物になった誘拐犯達
「ンボリュゥウウウウウウウウ!!!!」
「キャァアアアアアアアアア!!」
「うわぁあああああああああああ!!!」
誘拐犯は奇声を上げ、フリュードさんと俺は悲鳴を上げた。
「に、逃げるぞ!」
「イエェス!」
俺達は急いで逃げようとした。だが、尋常ではない身体能力で、おっさんは俺達の前方へと回り込んで来た。
「ンボッホウ!」
「ひぃぃ、本当にアレは人間なのデスカー?」
「もう化け物だよアレは!」
俺はフリュードさんを守りつつ、後退する。
前は化け物、階段を下がれば銃弾。
もう逃げ場なんてない。
「フンボォォォオオオオ!!!」
すると、突然目の前の化け物の左腕が大きく膨れ上がる。
何をする気だ? と、思っていると、膨らんだ腕をフリュードさんへ向け、
「フンンーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
発射した。
左腕が体から分離したのだ。
ロケットパンチのようなものだ。噴射剤は血液だろう。
どす黒い血が、推進剤代わりになっている。
つまり、ペットボトルロケットの水みたいに血液を後方へ噴射しながら飛ばしたのだ。
血は消費され、腕はだんだんと萎み、手先はフリュードさんへと向かう。
「危ない!」
俺は咄嗟にフリュードさんを突き飛ばすが、
「――――カハッ」
俺の首が飛んできた腕の手で掴まれてしまう。
そして俺はその勢いで倒れてしまった。
倒れた場所には会社の事務所に置かれているような机があり、盛大に腰からぶつかってしまう。
「コヒュー、コヒュー」
く、苦しい!
腕は離れているのに首を絞めてくる!?
力が強くて引き剥がせない!
「ハーレムさぁぁぁん!!!」
フリュードさんが俺の事を呼んでいるのだろうが、俺の名前はハーレムさんではない。
一方化け物はというと、
「イ"イ"ィィィン"ン"ン"ンン!!!」
切り離された腕の部分を抑えて苦しがっているようだ。
自ら分離して痛がっているのかよ!
そんな時である。
後方にあった窓ガラスが割れた音が聞こえた。
きっと流れ弾でも当たったんだろうと思った。窓から距離はあったため、必死に俺の首を絞めている腕と格闘しながらおっさんから目を離せずにいると、物凄い速さで何かが横切った。
これは……覚えがある。
確かあれは盗撮犯の紫藤が俺を追いかけてきた時だった。
「チュンチュンチュンチュンチュン!!!」
その時と同様に俺の救世主である雀が俺を助けに来てくれたのだ。
「ぢゅ、ぢゅんとぁぁぁ!!」
うまく声は出せない。
あれはちゅん太だ!
俺はちゅん太の名前を呼んだ。
そして、窓ガラスを突き破ったちゅん太は、そのまま誘拐犯のおっさんの心臓を突き破る。
「ギエエエエエエエエエエエエエ!!!」
断末魔が周囲に響く。
そしておっさんは血が混ざった泡を口から吹き出して倒れた。
ちゅん太は、チチチッ。と可愛らしい声とは裏腹に、全身血を浴び真っ赤な状態で俺のところへ飛んで来た。
誘拐犯のおっさんが死んだおかげで、俺の首を絞めていた腕は力を失い、簡単に引き離せた。
「ゴホッ、ゴホッ。し、死んだのか? ちゅん太、あ、ありがとう」
俺は絶体絶命のピンチを救ってくれたちゅん太に礼を言ったのだが、フリュードさんはそうもいかず、
「イヤァアアア! モンスタァァァァアアア」
と、ちゅん太を見て悲鳴を上げたではないか。
そりゃ悲鳴を上げるだろうなぁ。なんて呑気な考えが頭をよぎる。
どこの世界に人の胸に穴を開ける雀が居るのだろうか。居るとしたらそれは化け物だ。
「フリュードさん、落ち着いて! あれは味方だ」
そう言って落ち着かせては見たが、嫌々と血まみれの雀を肩に乗せる俺に近付かない。
俺だって嫌だよ。
助けてもらった手前言えないけど、なんで血だらけのちゅん太は俺の肩に乗っているんだ? ぞぞぞっと寒気がしてしまう。
そんな事を思っていると、
ズドォォォオオン!!!
「「ひへぇ!?」」
俺とフリュードさんが突然鳴り響いた間抜けな声を出す。
「クチュクチュクチュクチュ」
「「………………うわぁぁぁああああああああ!!!」」
天井を突き破ってもう一体上の階から化け物が下りてきたのだ。
しかも今現れた化け物は右手に日本刀を装備している。
アレはヤベェって!
「く、くそがぁああ! 死ねゴラァァァア!!!」
反射的に俺は机の上に置いてあった電話機を投げようとした。
だが、上手くつかめず、受話器だけとってしまう。
くそっ、なんでもいい。投げてしまえ。
と、受話器だけ投げたのだが、電話機のコードが繋がっているタイプの電話機だったため、びよ~んと化け物の方に最初は向かっていったが、コードのせいですぐに地面へと落ち、
バシーン!!
「畜生!」
受話器が粉々に砕けた。
何故こうも上手くいかない!
「ビュシャァァァァァァアァ!!!」
「ひえっ」
そうこうしていると、化け物が俺のところへ空中を飛びながら向かってくるではないか。
なにそれぇ!? どうやって飛んでるの!?
「チュンチュン!!」
しかし、ここでもちゅん太が活躍してくれた。
ちゅん太は空中移動している化け物からすれ違いざまに刀を奪った。
「ア"ッア"ッア"ッア"ッ!」
化け物は軌道を変え、刀を取り戻そうとしたのかちゅん太を追いかけようと振り向くが、
「チュンチュン!!」
高速で戻ってきたちゅん太は刀の頭を咥え、化け物の胸に突き立てるところだった。
速いっ!!
「イ"ィ"ィ"ィ"ッグゥゥウウウウ!! 入っでぐりゅんのほぉぉぉぉお!! 逝ッヂャウ"ゥゥゥゥゥ」
空飛ぶ誘拐犯は悲鳴を上げた。
「長くてぇぇえ、硬イノガァァァァx、入ってぐりゅんのほぉぉおおお!!!」
そりゃ刀だからな。
「ン"ン"ン"ン"ン"ン"~~~~、イヤァァァァ、命のほぉぉお部屋をぉぉぉぉツンツンしないでぇぇぇぇえぇ!」
右心室かな? 左心室かな?
そして刀は、心臓へと深々と入り、化け物の背中から刀身がニョキっと出てきた。
「オ"ホォォォォォォォ……」
この化け物も息絶えた。
これ以上化け物はいないよな……?
「よ、よしさぁ、早く脱出しよう」
「イ、イエェス……」
そんな事を言って完全に引いているフリュードさんの手を引くと、
「チュンチュン!」
と、ちゅん太が俺目の前で数秒空中に留まった後飛び立ち、先行した。
「えっ? そっちに行けばいいのか?」
しかし、ちゅん太が行った方向は非常階段へ案内してくれたわけではなく、通常の階段のところまで飛んでいった。
しかも下りではなく上りだ。
「う、上に行ってどうするんデスカー」
フリュードさんも同じ事を思っているようだ。
俺もお前に対してさっき同じ事を思ったけどな!
だが、一刻の猶予も無い。
「大丈夫だから!」
俺は火事場の馬鹿力なのか、嫌がるフリュードさんをお姫様抱っこをして、そのまま階段を上る。
あっ、これ膝に来る!
フリュードさんはその間キャーキャー悲鳴を上げていた。
無論、お姫様抱っこが嬉しくてではない。恐怖からだと思う。
顔が引きつっていたからね……。
しかし、格好つけてみたは良いが5階から8階へと上がった段階で息が上がってしまった。
10階ぐらいかなぁと思ったが、実際は後何階あるか分からない。
クタクタのボロボロになりながら階段を這うように上る俺を、途中で降ろされたフリュードさんが冷たい視線で見てくる。
ヤメテ! 決してあなたが重いと言っている訳ではないのっ。
そしてようやく11階を越えて、屋上へと辿りつく。
屋上へ続く扉には鍵が掛けられていたが、ちゅん太が、
「チュッ」
と、目にも止まらぬ速さでドアノブを突き、施錠を破壊し扉をぶち破った。
「よし! 屋上に出ることが出来たぞ! ちゅん太、次はどうする!?」
「チュンチュン」
「え?」
ちゅん太は空へと飛んだ。
空を飛べという事か? と思ったが、違ったらしい。
ちゅん太が飛んでいった方向から爆音を出す乗り物。青色のヘリコプターが飛んで来た。
カラーリングから判断すると、どうやら警察のヘリコプターらしい。
警察のヘリコプターは数機空を飛んでおり、その内の一機が近付いてきた。
幸いヘリポートがある建物だった為、へりは建物の上に降りようとしているようだ。
「「……」」
その計ったようなタイミングの良さと光景にフリュードさんと俺は口が開きっぱなしになる。
俺達はヘリポートに近付かないように離れた場所で様子を見る。
すると、
ガンッ。
と、黒い影が横切り、とてつもない衝撃音とともにヘリコプターへ突っ込んでいった。
「な、なんデスカー!?」
「人!?」
恐らく誘拐犯の一味だ。
屋上への出入り口から飛び出してきたのだろう。
俺とフリュードさんは入り口から離れたところから見ていたため、巻き込まれずに済んだが、ヘリの方はバランスを崩し墜落していった。
「嘘だろおい!」
俺は慌てて下を見た。
ヘリはクルクルと回転しながら、突っ込んでいった誘拐犯とともに地面に叩きつけられ、爆発した。
「うひゃぁああ!!」
「ヒエェェェ」
俺達は情けない声を出した。
しかし、これで脱出の手段が無くなったわけではない。
別の警察のヘリがヘリポートに降りてきた。
そこから次々と特殊部隊っぽい格好をした警官達が降りてくる。
「早く此方へ!」
警察の特殊部隊の誘導によりヘリコプターの中に入れられる俺達。
フリュードさんは放心状態だ。
だが、俺は周りを観察し、危険がないか見ていた。
先ほどのヘリコプターを撃墜させた誘拐犯のように、他にも化け物誘拐犯が襲ってくる可能性があるからだ。
ちゅん太の守りは万全とはいい難い。
「突入!」
「クリア!」
数人の警官隊がビルの中に突入していったのが見えた。
これでビル内からの脅威はなくなったと考えてよいだろうか?
「民間人を保護した!」
と、無線で連絡をし合うパイロット。
無線からは「3番機が落とされたー!」や、「地上への応援をよこしてくれー!」と、悲鳴交じりのやり取りが聞こえている。
そしてようやく離陸することになったその時、
バババババ!
幾つもの銃声が建物の中から聞こえてきた。
入り口で見張っていた特殊部隊の人達が銃を構えていると、
「ンフォォォォォォォォォ!!!」
そこから新たな誘拐犯一味が出てきた。
ヘリが慌てて上昇するが、建物から出てきた誘拐犯の一味は、銃弾を喰らいながらも撃ってきた警官の首を掴んで引きちぎり、その後ジャンプしてヘリのランディングギアを掴んだ。
「「ぎゃぁあああ!!」」
俺とフリュードさんは本日何回目か分からない悲鳴を上げる。
すると誘拐犯は俺の脚を掴んだではないか。
「離せ!! 離せよこのっ!!」
「ボンボボンボンボンボボン!」
顔面を蹴られて痛がっているのか、改造した車のマフラー音のような鳴き声を出す誘拐犯。
飛び上がった所で一人分の重さが乗ったので、僅かに高度は下がったが、ヘリコプターはビルから離れ始める。
「死ねぇええええええ!!!」
「ユーキルゥウウウウ!!!」
フリュードさんも誘拐犯の顔面蹴りに加わり、ついに耐え切れなくなった誘拐犯は俺の足から手を離す。
「ンボホォォォオオオオオオオオオオ――――――――――」
そのまま誘拐犯は地面へと落て行き、地面へと激突したと思う。
思う、というのは誘拐犯の最期を見ることができなかったからだ。
嫌だろう? 人が地面に激突した瞬間なんて見るのは。
すると、
ピロリーン
と、変な音が頭の上に響いた。
直後、
ゴツン。
「あ痛っ」
俺の頭に固い何かが当たる。
なんだ? ……メダル?
ヘリの中に落ちたメダルを拾い、見てみると、
【メダルを獲得しました! 『初めての人殺し』】
と、書かれていた。
「……なんデース? それ」
「いや……。わからん」
フリュードさんにはそう言ったけど、俺には分かってしまった。
あぁ、これゲームでゲットできるアイテムだ。
やり込み要素の一つだよ。これ。
今になってなんで急に?
考えられるとしたら、この世界の現実味はどんどんと崩れていっているので、こんなゲーム要素がいきなり出てきたんじゃないかと思う。
それにしてもこのメダル……。いらねぇ。
そして、俺は降ってきたメダルを見ることに夢中になるあまり、外で起きていたことを見逃していた。
ガゴン!
と、ヘリが大きく揺れる。
「「えっ?」」
手元に影がかかったので、慌てて上を見てみる。
「あっ……」
「ひぃぃ!」
俺とフリュードさんは目を見開き、眼前の光景に恐怖を抱いた。
「ンゴォォオオオオオオオオオ!!」
なんと、もう一匹乗ってきたのだ。
えっ? ビルからまたジャンプしてきたの!?
「うわぁあああ!!」
そんな事を思っていると、俺は腕を掴まれ外へと放り出されてしまった。
「うわぁああああああああああああ」
既にヘリは飛んでいるので、俺は地面へと真っ逆さまだ。
ヘリから投げ飛ばされる前に見た光景は、ちゅん太が高速突撃で誘拐犯の首に大穴を空けたところだった。
ヘリはそのまま空へと上がる。
俺は地面へと落ちて行く。
これで終わりか。
そう思ったのだが、
「チュンチュンチュン!!」
ちゅん太が俺よりも早く落下してきて背中に潜り込む。
「ぎえぇぇえええええ!!!」
すると背中に鋭い痛みが走る。
恐らくちゅん太は背中を支えたまま空中を飛んでいるのだろう。
だが、ちゅん太のその体は小さい為、俺の全体重が一箇所に掛かってしまう。
これは痛い。
背骨が折れる!!
「チュンチュン」
それを察してか、ちゅん太は今度は背面から落ちている俺の腹部に素早く移動しブレザーの中に着ているYシャツをクチバシで摘んで俺を持ち上げる。
頑張って羽をバタバタさせているところが可愛い。
背中の激しい痛みは治まったが、ビリッ、ビリッ。と、嫌な音が聞こえる。
「助けてくれぇぇ……うえぇぇぇ」
情け無い事に俺は泣いた。
何故俺はこんな事をしているのか分からなくなった。
元の世界に戻る為? なんで俺がこんな恐ろしい目にあわなきゃならんのだ。
ビリッ!
「ひゃっ」
そして、ついにYシャツの腹の部分が破れてしまった。
終わったな……。
『強襲転校生』のゲーム情報。
・ヒロインが変わるような分岐ルートは存在しない。全員一つのルートで登場する。
・選択肢は存在するが、ヒロインをどう襲うかな選択が多いため、ストーリーに直接変化は無い物が大きい。(※例外として三田川 麗子の救出時期による演出の変化、坂江 洋太の生存有無等がある)
・大きくストーリーの変化はないが、やり込み要素としてメダルシステムというものがある。条件を満たして集めればゲーム内ストーリーとは関係なくヒロイン衣装を変え、襲う際の選択肢を増やすことができる。(※機能がある理由はゲームを何度もやらせて悪霊である神命は様々な欲を満たしつつ、プレイヤーの洗脳純度も高めていく為)
・ソフトのコピー防止プロテクトが甘い。




