表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/65

第40話 気分爽快



----------------------------------


―誘拐犯組織アジト―


 とあるビルの一室。


 ここは日本を本拠地として活動している犯罪組織が所有しているビルであり、部屋の中は多くの貴重な美術品で飾られていた。

 これらの品々を購入できるまで、いったい何人の善良な市民達が泣いてきたのか分からない。


 彼等の仕事は元々誘拐業ではなかったが、近年増え続ける日本旅行を目的とした外国人が多くなってきたことを切っ掛けに、このような犯罪に手をつけたのである。

 旅先で行方不明になった場合、大抵の日本人は事件に巻き込まれたと想像するよりも事故にあったのではないかと思うだろう。

 行方不明者を探す家族は遠く海を越えた場所に居るのだ。

 頻繁に探しに来る事も無く、警察も大規模捜索は行っても、継続的に行うのは早々に諦め、半年もすれば小規模なものになってしまう。

 世間の一般市民も数ヶ月も経てば綺麗さっぱり忘れ去るような話だ。


 これを知ったこの犯罪組織は早々に人身売買に力を入れるのは当然の流れであった。


 つまり、彼等は日本に来る外国人を狙った犯罪者達であった。



 その犯罪者達のリーダーの部屋で、二人の男が話をしていた。


 彼等はリーダーとリーダーが最も信頼している部下である。




「今回のターゲットの一覧となります」


 部下からそう言って渡された複数の資料を、この建物の主である誘拐組織のリーダーは見る。そして、一枚の資料に目を付け、


「ほほぅ……。こいつは中々といい女じゃねぇか」


 と、大柄でスキンヘッド。顔には大きな傷があるリーダーのその男は、ゲスな笑みを浮かべる。


「イリス=フリュード。年齢は18歳以上か……。若くて美人でいいじゃねぇか。

 ふぅん、……留学生か。学校がちょっと騒ぎそうだが、まぁいい。コイツの誘拐計画を進めろ」


 幾つか候補があったが、とびきり目を引いた獲物がイリス=フリュードであった。


「はい」


 そう言われて部下は一礼する。

 だが、部下は


「しかし――――、」


 と、続け、


「最近は警察達の警戒も厳しくなってきています。今回のターゲットは、あのニュースで散々話題となっている清高学園の生徒です。他のターゲットに移す事は可能ですか?」


 そうリーダーに聞いた。


「ふん。警戒していてもそれは清高学園関係者だけだろ? 俺だってあの学園の件は色々調べたんだ」


 リーダーはそう言って鼻を鳴らす。


「思い出してみろ。最近あったあの学園での事件の数々を……」


「あの学園の事件を……ですか?」


 部下はリーダーに言われた通り、清高学園で起きた事件を思い出す。


「たしか……。最初は学園教師が同僚の女性教員を襲ったとか……いや、最初は同校の生徒同士でのわいせつ事件だったかな?

 次は警察と清高学園の生徒が衝突して死亡事故に発展しましたね。

 後は……。そう! 学園教師が更衣室で盗難や盗撮をしていて、その教員が射殺されましたね!

 それと、……あぁ、そうそう。女子生徒が清高学園の卒業生。現大学生だった男にストーカー被害に遭って……。

 その後再び大規模に清高学園系の不良がまとめていた不良集団と警察隊が衝突。

 そしてニュースでもあった長友議員の冤罪事件と娘が片仲議員と長友議員の秘書に狙われましたね。

 うわぁ、あの学校かなりおかしいですね……」


 部下の話を聞き、頷くリーダー。


「そうだろう? あの学校の関係者達は皆狂っていやがるんだ。

 だが、俺達はどうだ? まったくあの学園に通っている生徒達に繋がりなんてない」


「まぁ……それはそうですが」


「今までの傾向から、警察は清高学園の女達を守ろうとしている。逆に、男共は警戒対象だ。その男達の中に、部外者である俺達は含まれては居ないんだ」


「うーん。そう考えるとそうかもしれませんね……」


 リーダーにそう言われても不安が収まらない部下。


「なぁ、考えてもみろ。こんなチャンスは滅多にないぞ? 俺達は今、学校関係の変態共のお陰で、監視の目が薄くなってんだ。

 それにこの対象はどう見ても高く売れる。

 初物ならば二倍……いや、三倍の価値が付けられるんだ。

 外国人の留学生なら、この国で騒がれたとしても一時のもんよ。まぁ、気付いた時にはすでに船の中だろうけどな」


「わかりました。では下の連中に商品入荷の準備を進めるように言っておきます」


「あぁ、こっちは高額で買ってくれる客を用意しておく。はははっ、今から楽しみだなぁ」


「しかし、毎回下の連中から言われますが、こういった美人を輸送すると輸送部隊ストレスが溜まるそうですよ」


 そう部下がリーダーに言った。


「ほぅ。そいつはどうしてだ? 美人と一緒でストレスが溜まるたぁ。連中、女嫌いなのか?」


 意外そうに驚いたリーダー。


「いえね。ほら、ヤレない商品を目の前にお預け喰らっているような状態なんですよ? そりゃぁ、ストレスが溜まりますって」


「あぁ、そういう事か。なら、今度から部下達用の女も一緒に連れて行かなきゃなぁ! 飽きたら海に捨てりゃいいんだ」


 リーダーがそう提案すると、


「そいつはいいですね! 部下達もきっと喜びますよ!」


 と、部下は満面の笑みを浮かべる。


「なら、早速今回から捕まえて連れて行け。商品に手を出されちまったら商売上がったりだからな」


「「あはははははははははは」」


 リーダーと部下は下種な会話を繰り広げた後、互いに笑い合った。


「そうだ。大体入荷はいつ頃になりそうだ? 客に話すとしても受け渡しの日程を決めなきゃいけねぇからなぁ」


 リーダーはポンッと、手を叩き部下に問う。


「そうですねぇ……。おおよそ3日後には準備が整う予定です」


「ほぉう。わかった。それじゃぁその予定――――で!?」



 彼等の予定が決まろうとした頃、突然何かしらの圧力が彼等に降り注ぐ。


 その圧力は彼等犯罪組織の体の内に進入し、身体のあちこちを動き回る。


「な、なんだこいつはぁぁ――――!?」


「うがっ、うがががががが!?」


 まるで自分ではない何かが体の中で動き回っているようだが、決して嫌な気はしなかった。


 力が増幅し、今なら何でもできる。


 そう思えるだけの力が体の内から湧いてきたのだ。





「ぐきょっ!? げきょっ!?」


「ぎ……ぎぎっ……」





 突然湧いて出た力に反応し、リーダーや部下は体をビクンビクンさせながらのた打ち回り……、


ピタッ。


 と、突然二人とも動きを留めた。


 そして、リーダーが先にゆっくりと立ちあがり、






「キョォォォォオオオオオオオオオオオオ!!」





 と、真っ先に覚醒したリーダーが奇声を発した。




「キョーーーーーー!! 今日! 今日! キョウゥゥゥウウウ!! 今日誘拐すりゅのぉぉおおおおお!!!!」




 リーダーは先ほどの意見を変え、本日中の誘拐をご所望になる。




「イグゥゥゥウウウウ!! イッグゥゥウウウウ!! 今日ぉぅンっ、行ぐぅぅううううっ!!! 今からぁんっあん、イッひゃぅぅうう!!」




 対して続いて覚醒した部下はリーダーの要望に応えるべく、力強くそう答えた。

 直ぐに行動に移すようだ。


「お"ぉ"お"ぉ"おん願いぃぃいいいっ。ハァハァぁああん! 連れできてぇぇぇええ"」


「いいよぉぉ、いいよぉぉおおお! イグゥゥウウウウウウ!!!」


 部下は力いっぱいリーダーの部屋のドアを蹴破り、待機している仲間達の所へと駆け寄る。


 今は部下達は部屋に集まっているはずだ。



ドガン!



 と、今度は仲間達が居る部屋の扉を蹴破った部下は、


「イグイグイグゥウウウウウウウウウウウ!!!!」


 そう仲間達に声を掛ける。


 対して仲間達は、







「ブリュリュリュリュリュリュリュゥゥゥゥウウウウ!!!」


「出りゅぅぅぅうううう!! お外出りゅぅぅぅぅううううう!!!」


「我慢できないのぉぉおおおおおお!!!!!」


「うぅぅん! うぅぅううん!!! 出ちゃうぅぅのぉぉぉ、我慢できないのぉぉぉほぉぉおおお!!」


「ウッキィイーーーーーー!! ウキキィイイイイイ!!!」





 元気いっぱいに、数十人の男達がはしゃぎ回っていた。


 もちろんこの部屋だけではなく、ビルの中に居た者全てがこのような状態だ。


 彼等は先ほどリーダー達と同じタイミングで大きな力を得たのだ。


 そしてリーダーと話していた部下の言葉を聞くと、更にヒートアップする。


 体中の力を抑えきれないようで、机をバンバンと叩き、置いてあったパソコンや筆記用具を破壊して回る。


「イックヨォオオオオオオオ!!!」


 そう言って部屋を真っ先に連続バック転をしながら軽快に出て行ったのは、リーダーと話していた部下であった。


「僕もぉぉおおおお!!」


「俺もぉぉおおおお!!」


「某もぉぉおおおお!!」


 それを見た一部の仲間達が壁を這い、天井を逆さになって走り、床をホバリングしながら後へと続く。


 そのまま彼等は一階の駐車場に停めてあった白いボックスカーに転がり込むように乗り込み、




「「「「ルンルンルンルンルンルンルンルン♪」」」」




 むさ苦しい男達が、野太い声を揃えて楽しそうに口ずさみ、体を大きく揺らしながらリズムを取りつつ清高学園高等部へと向け車を発進させた。


 車体は大きく横にフリフリ揺れながら一般道を進んで行く。


 それを見た一般人が乗る後続車は車間距離を開け、前方を走っていた車は路肩に停めて道を譲った。


 道を歩く親子は、


「ママ―。アレなぁに?」


 と、子が聞き。


「しっ。見ちゃいけません」


 と、親が注意をする。


「わかったよ。ママ」


 子供はとても素直なようだ。







 こうして最後のヒロインの事件が始まった。




 それは予定よりも早く、そして本来よりも圧倒的に強化されたイベントだった――――――。




----------------------------------


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ