第39話 失恋
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※2019/06/27 20:01
俺は光明院さんに案内され、体育館の裏手に来た。
そこに着くと、光明院さんは振り向き、
「時間を作ってくれてありがとう」
と、光明院さんは笑顔でそう言った。続けて、
「いやぁ、本当ならば生徒会室で話をしたかったんだけどね。ちょっと話し辛い事もあったし……」
そう困ったように笑った。
「いえ、問題ないですよ」
問題と言えば、先ほど妹が後ろでなんか変なことを言っていたが、今は考えないようにしよう。
光明院さんが言う話しづらい事というのはなんだろうな。
もしかしたら紫藤のことだろうか?
「あれから詳しく聞いたよ。紫藤先生……いや、紫藤の奴はとんでもない人間だったみたいだ。本当に君がいてくれて助かったよ」
やはり紫藤のことか。
「いえ、俺が知ったのは偶然ですよ。会長があの時、ご自身が受ける体育の授業時間を教えてくれなければ、俺も様子を見てみようなんて思いませんでした。もちろん紫藤だけじゃなく、神命や羽間の件も同じく偶然ですよ」
あくまでも偶然を装うことにした。
「そうか。……いや、それでも本当に君は良く人を見ているんだと感心させられっぱなしだよ」
べた褒めしてくれる会長。
そんな評価はちょっとばかしこそばゆい。
なにせ事件解決が出来るのは、ゲーム知識があってこそのものだからだ。
「だから、もう一度こうしてお礼を言わせて欲しいんだ。ありがとう。尾野君」
そう言って頭を下げた光明院さん。
「そ、そんな。頭を上げてください! お礼なら前回もらいましたよ!」
俺が慌ててそう言うと、顔を上げた光明院さんは、俺に笑顔を向けてくれる。
その笑顔はとても美しく見えた。
「俺はさっき言った通り偶々あいつの悪行を見つけただけですから……」
そう言うと、光明院さんの笑顔に変化が見られた。
「警察に言われたよ。なんでも私は紫藤のお気に入りだったらしい」
笑ってはいるが、無理をしているようだ。
そんな不自然な笑み。というやつだ。
「警察ってそんな事も被害者に伝えるんですか!?」
驚いた。
確かにゲーム内では紫藤は、光明院さんを中心とした盗撮を数多く保有していた。
それで俺は理解できた。
何故このタイミングで光明院さんが再びお礼を言ってきたか。
それは光明院さんが俺が食い止めた紫藤の所業を改に認識したからだというとに。
俺がそう納得していると、光明院さんは話を続ける。
「ストーカー被害が無かったか。から始まって、そういう理由だと教えられたんだ」
そうだとしても配慮がないような気がする。
現実世界の警察はそんな風ではないと思いたい。
今回は後で佐々木刑事に文句を言ってやろう。
「まったく、この学校はどうしてこんなにも変態が多いのだろうね……」
「同感です……」
いくらゲームの設定だからといってもこれは酷いと思った。
だが、以前あの不思議な世界。見渡す限り水が広がった世界の神社で、俺の味方だと言ってくれた人物はこのゲーム世界で起きたようなことが実際にあったと言っていた。
平行世界だかの話みたいだが、そうだとしても異常すぎる。
「もし、何かあったらまた言ってください。俺はやれるだけやってみますので」
俺がそう光明院さんに言うと、
「――――君は……。これ以上何かをすると言うのかい?」
と、本気で驚いた様子だった。
「えっと、その、まぁ……はい」
早く現実世界に帰りたいからです。なんて事は言えるわけが無かった。
「もしかして、理音さんの件も、君は動いたんじゃないのかい?」
ギクッ。
鋭すぎるだろ。この人。
「ははっ、どうやら君は嘘を吐けないようだ。だけど、それは隠しておきたいようだね。わかった。私から誰かにその事は言わないでおくよ」
「えっと、どうもです……」
話がわかる人で助かった。
坂江さん辺りならば気付いた時点で俺を殴っているかもしれない。
「本当ならばあんなに危険な目に遭っている君には、もうこれ以上酷い目には遭って欲しくはないんだよ? だから休息も大切にね?」
本気で心配をしてくれているようである。
「君には君を大切に想ってくれている人がいるんだろう? ほら、あの二人……いや、三人だったかな?」
光明院さんが言っているのは野和さん、坂江さん、三田川さんの事だろうか。
ってか、その言い方ではまるで俺がハーレムを作っているようではないか。
「いや、あの三人とはそういった関係とはちょっと違うような……」
正直坂江さん以外から好意が寄せられているのではないかとは思っている。
自意識過剰かもしれないが、仮にそうだったとしても彼女達は目の前にいる光明院さんと同じく既に死んでいる人物なのだ。
本来であれば、彼女達はこんな辛い世界ではなく、何の苦しみも無い天国へと行ってもらうべきなのだ。
「おや? そうなのかい? てっきり私はそう思っていたんだけどな」
と、光明院さんはキョトンとした表情をした後、
「大切な人が傷つくのは見るに耐えない事だよ。私だって――――――」
そう言い掛け、いきなり止まってしまう。
直後、ギュッと拳に力を入れ、目を伏せ、悲しそうな表情をした。
何事だろうか?
「もしかして、会長は大切な人がいるんですか?」
どうしたのかと思い、此方から会話をふってみた。
言っておいてなんだが、大切な人がいても不思議ではない。
恋人は設定上いなかった気がするが、家族はいただろう。
光明院さんの家族関係は三田川さんみたいに崩壊していないはずだし。
「ん? 私? 私かい?」
慌てて表情を元に戻し、不思議そうにする光明院さん。
「えぇ、なんだか遠くに居る恋人を想うような……。そんな顔をしているような気がしました」
「はははっ。その言い方ではまるで私が恋する乙女のようではないか」
笑って誤魔化しているようだ。
「会長。何か気になることがあるならば、言ってください」
俺がそう言うと、
「……あっ、いや。気にしないで欲しい。最近なんだかおかしくてね」
「おかしい? なにかあったんですか?」
まずい。ヒロインが悲惨な目に遭うと、この世界からの脱出が難しくなるかもしれない。
俺は気が気ではなくなり、光明院さんに問い詰める。
「あ、いや。本当に大したことじゃないんだ……」
「言ってください」
本人が大したことじゃないと思っていても、この世界的にはちょっとした情報でも重要な件に関わってくる可能性もあるのだ。
俺はしつこく問う。
「いや……、あまり面白い話でもないんだけどね。実はここ最近……二、三日前から変な夢をみるんだよ」
光明院さんは苦笑いをしながら語ってくれた。
「夢?」
もしかして、狐面を被った巫女さんが自分は味方だとか言ってくる夢だろうか。
「うん。その夢の内容というのが、例えば一昨日だったら『もし紫藤の行いが尾野君によって暴かれなかった場合』の世界を夢で見ていたんだ」
「えっ?」
「ははっ。驚くのも無理はないよね。だけど、それだけ自分の中で危機感があったという事だったんだろう。
夢の中では盗撮された画像や動画がネットに流れてしまった世界でね。私を含め、複数の女子生徒が心に傷を負ってしまったんだ。
いやぁ。私も部屋から出られないほどショックを受けてしまったみたいでね。
夢の中ではネットの画像や動画がリアルに映し出されていたんだ。
確かにあれが流れたならば私は立ち直れなかったかもしれないね」
「……」
「自分でも想像力豊かだとは思うよ。だけど、それ位あってもおかしくなかった事を君は阻止してくれたんだ。だから、私は今日お礼を言っておきたかったんだ。本当に、重ね重ね礼を言うよ」
「えっ。あっ。はい……。その、も、もしまた何かあった場合、言ってください。」
俺は光明院さんの話に驚いてしまい、お礼に対して慌てながらそう言った。
これ、絶対このゲーム世界に来る前、現実世界でお亡くなりになった原因を思い出しているよね?
光明院さんの死因は分からないが、この世界のバランスが崩れてくるにしたがい、登場人物達の記憶も戻ってきてしまっているようだ。
はっ! も、もしかして野和さん達も……。
「……ふふっ、長く時間を取らせてしまったようだね。ほら、君の彼女さん達が心配そうに待っているよ?」
光明院さんが俺の背後を見ながらそう言った。
それはどういう事……えっ!?
「じーーー」
「じーーーー」
「あっ! バレたっ」
野和さん、三田川さん、そして焦っている坂江さんが体育館の建物の角から此方を見ていた。
「ほら、三人も彼女がいるじゃないか」
と、光明院さんは笑っている。
「ひえっ」
えっ。彼女達が俺を見ている目が怖いんだけど。
特に野和さんと三田川さんの目が怖い。
何? えっ? どうして睨んでいるの?
「ほら。行ってあげなさい。そして、私は尾野君を君達から奪おうなんて思っていないとも伝えておいてくれ」
「なに言ってんですか!」
そんな勘違いしていたのか彼女達は?
光明院さんも変な事は言わないで欲しい。
「そ、それじゃぁ、今日のところはこれで!」
俺はそう言って足早に光明院さんから離れ、野和さん達の所へと行った。
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―光明院 桜視点―
「恋……、か……」
私は自分自身が分からなくなっていた。
夢の中の世界では紫藤がネットに流したものだけではなく、別の要因も私を苦しめていた。
私は好きな人でもない男に乱暴にされていた。
夢の中で必死に自分が愛した。恋人の名前を叫んでいた。
助けて欲しくて、何回も。何回も叫んでいた。
だけど、夢から覚めると、その肝心な名前を思い出せない。
そもそも私には恋人が居ないのに、おかしな話なのだ。
だけど、恐らくその名前は予想できる。
「私はもしかして尾野君の事が好きなのだろうか……」
私を助けてくれた大きな恩がある人物だ。
ああ言って彼を彼を慕う下級生達の元に送り出したはいいが、少しだけ後悔をしてしまっているような自分がいた。
「そんなことは……ありえないだろうに」
ジッ――――――、ジジジッ―――。
突如私の頭の中に知らない男の顔が映る。
そうだ……この顔。夢に出てきた……。
しかし、私は本当にこの顔を知らないの……か?
いや、私は知っている。知っている!?
あぁ、そうだ。私は彼女達、理音と理音の親友を救おうとしただけだ。
学園の女子生徒達の異変に気付き、あの男に声をかけたのだ……。
だけど、私は救えなかったどころか、自身も奴の魔の手に落ちてしまった。
「はははっ、紫藤の奴も、まさか桜の生着替えが俺の目の前で行われているなんて思わないだろうな」
そう、私を言いなりにしている男が言ったのを覚えている。
奴は私にスクール水着を目の前で着替えさせるのがお好みの変態だ。
「いやぁ、あの動画見たよ。紫藤の奴もわかっている。着替えている最中の胸が水着からプルンッ、と出てきて弾む様子が最高なんだよ」
と言って、奴は私の下半身近くまで顔を近づけながら言っていた。
「このポジションも最高だ」
本当に汚らわしい。
だけど、私が我慢をすれば、理音と"彼の妹"はこれ以上酷い目に遭わなくて済む。
そう思えばできることであった。
既に私の精神は限界であろう。
いつ壊れるか分からない。
この男の直ぐ後ろで控えている三田川さんのように……。
ジジジッ―――。
……私は何を思い出して……、いや、何を考えていたんだ?
心がズキズキと痛む。
もう一度尾野君の後ろ姿を見る。
あぁそうか。
私の初恋について考えていたのかもしれない……。
尾野君を呼び出し、もしかしたらお礼を言った勢いで告白をしようとしていたのかもしれない……。
私は尾野 駿と彼の側に立つ三人の女の子を見ながら決心する。
彼の事は彼女達に任せよう。
尾野君は彼女達の事を本当に大切に思っているようだ。
「ん?」
頬を何かが伝っていた。
なんだろうと思い、手を触れてみた。
そして、手に付いたものの正体を見てみると、無色透明な液体であった。
「涙?」
濡れた手を見て私は悟った。
あぁ。そうだな。
私は……きっと、失恋をしたんだな。と。
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