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第38話 転校生は唐突に


 その後、次々と警察車輌が到着し、父は近付いてきた警察と話をしていた。


「はい、あの秘書の奴が私の車の窓を破壊して……」


 父親はそんな感じで一連の流れを警察と話しているので、俺は車の中に入って座席に腰をかける。


 ふぅ。と、溜息を吐いた。

 疲れた……。

 今回も冷静に対処できた部分が大きいので、被害は少なくできたと思いたい。


「えっと、その……駿さん。ありがとうございました」


 隣に座っていた長友さんがお礼を言ってくる。


「いや、いいんだよこの位の事。とにかく君を守ることができてよかったよ」


 俺がそう言うと、


「本当に感謝しかありませんわ……」


 長友さんは少し寂しそうな感情を含んだ笑顔を見せた。


 彼女も疲れているし、精神的にも辛いのだろう。


 何せ信頼していた父の部下が、とんでもない変態だったのだから。


「どうしましょう。私達のお家も安全じゃなくなってしまったから、今からでも長友さんのお父さんに連絡して、長友さんをお家に帰した方がいいかしら?」


 と、ここで母がそんな事を言ってきた。

 確かに我が家に居るよりかは安全……か?

 いや、ちゅん太が居るといないとでは大きな違いだと思う。


 情報は家を飛び出してきた時点のものしか知らないので、もしかしたら他に片仲議員の仲間が暴れているかもしれないのだ。


「お父様に連絡してみますわ」


 長友さんはそう言うと、持っていたスマホで連絡を取っていた。


 ようやくこの長友 理音の事件は解決か……。


 残りのヒロインは留学してくる『イリス=フリュード』のみ。


 彼女さえ守ればこの世界ともおさらばできる。……はずだ。


 イリス=フリュードの身に降りかかる事件も今回と同様に厄介なものであるが、対抗することは可能なのだろうか。

 無茶苦茶強い警官三人、ちゅん太、……後は佐々木刑事。


 彼等とどう協力していこうかと考える。




「えっ!? それはどういう事ですの? お父様。――――――――あぁぁ、な、泣かないで下さいまし! えっと、では私はどうすれば……」




 隣でなんか長友親子が揉めている?


 長友議員泣いてるの? なんで?


「えっと。どうしましょう……。あ、はい。代わります……」


 長友さんはそう言うと、


「真希のお母様。父からお話したいことがあるようです……」


「えっ!? 私?」


 申し訳無さそうにスマホを渡す長友さんと驚く母。


「はい、お電話代わりました。真希の母です――――――」


 なんか話を始めた。


「何かあったのかな?」


 俺がそう長友さんに聞くと、


「どうやら父はマスコミと、報道を信じない野党支持者と父を守ろうとする与党支持者に囲まれ、外に出られないようなんです。それで私を迎えに行くことができないと泣いてしまって……」


 なんじゃそりゃ。


「家にも誰も入れない状態で、秘書が今回の事件に関わっていた事も知り、今誰を信じていいのか精査中のようでして……」


 一番信頼していた秘書があんなぶっ飛んだ性犯罪者だもんな。


「今、私に対して一番信用できるのは尾野家と警察の方々だけでして……。どうやら私を警察署に保護させようか尾野家の方々に任せようかで悩んでいるようです」


 と、申し訳無さそうに言ってきた。

 チラッと母親の方を見る。



「いえ! お礼なんてとんでもありません! 分かりました。そういうことでしたら私達が責任を持ってお預かりさせていただきます」



 母は力強くそんな事を長友議員に言っている。

 その後、母は長友さんにスマホを返し、


「理音ちゃんを家で預かることにしたわ」


 と、言ってきた。


「えっ。あの変態達はもういないの!?」


 真希は驚いたように言った。


「皆捕まったようよ。それと、理音ちゃんのお父さんがホテルを手配してくれたから、私達はこれからホテルに向かうの。それと、警察官をホテルの部屋の前に置いてくれるらしいわ」


 うーん。安心できるような、心細いような。

 普通の警官じゃ、アイツ等と渡り合えないぞ?


 まぁ、でもちゅん太も居るだろうし安心だろう。









 その後、自宅に一旦戻り、ホテルに着くと、待っていたのは例の警官三人組だった。


「「「警護をするであります!」」」


 俺の危機を何度も救ってくれたあの警官達である。

 この警官達とちゅん太が居れば安心だろう。


「うぅぅ……。俺の車……」


 父は警察車両の隅っこで泣いていた。


「その……。よろしくお願いします」


 長友さんはそう言うと、母と真希に促され、ホテルの中へと入っていった。


 はぁ、まぁいろいろあったけど、怪我が無くて良かったよな。ホント。








 一息ついてテレビを見ると、片仲議員銃乱射事件と同時に長友議員への冤罪事件は大きく報道された。

 証拠は録音された片仲議員と長友議員の秘書の会話だ。

 勿論、俺が録音したものではないので、おそらく昨日の夜俺を止めた警官が仕掛けてくれたのだろうと思う。

 特に銃乱射事件については、日本ではそういった事件はあまり起こらないため、海外からも注目されているようだ。





 今日は疲れた……。


 もう寝よう。





 こうして俺は寝る準備をしてベッドの中へと入った。

 ホテルのベッドってふかふかだなぁ。


 さて、事件は後一つとなったわけだが、近々この世界とおさらばするのか……。などと、別れを惜しむような感情が出てきたが、気の迷いだと思いたい。
















 翌日。

 ゲームの世界に入って15日目。


 俺達はホテルから出て、一旦俺の家に戻ることになった。


「チュンチュン!」


 ホテルを出ると、ちゅん太は朝日がまぶしい空へと飛んで行く。


「俺の護衛をずっとしていてほしいんだけどな……」


 そうポロッと、口に出して言ってしまったが、ちゅん太はちゅん太で仕事があるのだろう。


 家へ戻る理由としては俺と真希、長友さんのカバンを取りに行くためである。





 そして、尾野家へと着き、



「大変お世話になりました!」


 と、長友さんは家の前で俺の両親に向け頭を下げる。


「はっはっは。気にしないでくれ」


「そうよぉ? また何か困った事があったら頼ってくれていいんだからね?」


 と、父親と母親は長友さんに優しくそう言った。

 俺は二度とあんな事はごめんだと思ったが、そんなことは口には出さない。

 この両親、人が良すぎる上に、メンタル強いな。


 さて、俺は後で佐々木刑事に連絡を取ってみよう。

 今日は繋がるといいんだが……。


 そうこう考えていると学校へ行く時間となり、妹と長友さんと一緒に家を出た。

 家を出る前に長友さんは父親の長友議員と電話で話をしていたが、終始明るい表情であった為、もう問題はないと思う。

 そんな事を思って歩いていたが、気付くと俺達の周りは同じ学校の生徒。それも女子を中心とした下級生だらけになっていた。

 なんじゃこりゃ。


「えっと、もしかして朝も私の事を守ってくださるのですか?」


 と、不安そうに長友さんが言うと、


「今朝、真希ちゃんから連絡があってねぇ。昨日のニュース見たけど、まだマスコミがいそうだからねぇ。マイナスイメージで質問されることは無いだろうけど、質問攻めに合うのは嫌かなっと思ってさ」


 と、下級生の女子の誰かが言った。


「うぅ……ありがとうございます。みなさん」


「もぅ~泣かないでよ~」


 女子達がキャッキャしている。

 なんとなく肩身が狭い。


 そんな感じで俺達は偃月の陣形をとり、学校へと歩いていくと、




「オォ~。これがハーレムというやつデスネー? 私ジャパンのアニメーションで見ましたヨー」




 と、いかにも外国人ですよという感じのイントネーションで一人の少女が近付いてきた。


「!?」


 あれは! 最後のヒロイン、『イリス=フリュード』!?


 なぜココに!?

 突然の登場に俺は慌ててしまう。


「ライトもレフトも分からなくてー。困ってましたガー。同じ学校の生徒さん達のようなので、安心し増しター」


 などと言って近付いてくる。

 誰もが、え? 何この人。という感じで戸惑う。

 ところでどうでもいいのだが、フリュードさんが使う日本語はどうも似非外国人っぽいのだが、これは原作であるゲームの設定通りだったりする。


「おやおや~。どうしたんですか皆サン? あ、挨拶がマダデシター。私、この度ユー達の学校に留学してきたイリス=フリュードと申しマース。よろしくデスー」


「「「「「よ、よろしくデスー」」」」」


 何故君達も発音が外国人っぽくなるんだい?


「実ハー、ワタクシ困っているのデース!」


 困っている割にはすんごくいい笑顔だな。


 フリュードさんはどうやら学校へ行く途中道に迷ってしまったみたいで、俺達に付いて行きたいようだった。

 別に断る理由もないので許可を出すと、喜んで着いてきた。


 しかしここでフリュードさんと出会うことが出来たのは良い傾向だ。

 とりあえず積極的に話しかけてみて、彼女の誘拐を阻止できる友人ポジションにでもなろうとしていたが、途中何故か合流した野和さん、坂江さん、三田川さんに邪魔をされてあまり話すことができなかった。


 クソっ、俺の計画を邪魔するんじゃねぇ!








 それから一言もフリュードさんと話すこともなく、学校に着いてしまった。


「先生おはよー」


「おう。おはよう」


 校門の前には五和先生が竹刀を持って立っている。

 最近ではあまり見ないスタイルだ。

 おそらく頻発する変態共を警戒しているのだろうが、竹刀一本で対抗できるような連中ではないのが悲しい……。


「お? 尾野か!」


「あ、五和先生おはようございます」


「おう、おはよう……ん? そこにいるのは留学生の『イリス=フリュード』か?」


 五和先生がフリュードさんにいち早く気づく。


「イエスデース!」


 フリュードさんが元気よく答えると、


「おぉ、そうかそうか。じゃぁ、早速君のクラスを受け持つ担任の先生の所まで案内しよう」


「本当デスカー? ありがとうございマース」


 五和先生はそのままフリュードさんを連れて行ってしまう。


「ぐぬぬぬぬ……」


 おぉぉおい! 五和ぁああああ!!! お前まで俺の邪魔をするんじゃねぇ!


「駿? すごい顔しているよ? なんでだろうね」


「……そんなにフリュードさんが気に入ったの?」


「へぇ~。尾野君ってああいう子が好みなんだぁ」


 野和さん、三田川さん、坂江さんが睨んでくる。

 お前らいい加減にしろ! さっきから頭の中ピンク色に染めやがって! この恋愛脳がっ!


「も、もうだめだ。こんな殺伐とした空間に居たくない……」


 ほら、妹が怖がってるでしょっ!? みんな怖い顔をするな!


 そして、モヤモヤした気持ちで生徒用の玄関へといると、


「おや? 尾野君じゃないか」


「桜お姉さま!」


 現れたのは光明院 桜だ。

 そしていち早く反応する長友さん。


「生徒会長。おはようございます」


「「「「おはようございます」」」」


 野和さん達も俺の後に挨拶をする。


「やぁ、みんなおはよう。それと、理音さんもよく頑張ったね。ニュース、見たよ」


「いえ、私はなんにも……。ですが、これでお姉様と堂々とお会いできます!」


「ふふ、それじゃぁ、今日のお昼は一緒に食べようか?」


「はいっ!」


 うぅん。

 ゆりゆりしていて実に良い。

 目の保養になるな。


「それはそうと、尾野君。ちょっとこの後時間を取れるかな?」


「へ?」


 急に話を振られたので驚いてしまう。


「構いませんが……」


 俺がそう答えると、


「も、もう嫌だぁああ!!」


 と、真希が泣き叫ぶ。

 おい、どうした!?


「ふふっ、助かるよ。……あぁ、君達の彼氏を奪おうというんじゃないんだ。安心してくれたまえ」


「?」


 光明院さんが俺の後ろを見て変なことをいう。


「い、いえ。わ、私は別に……」


「入る際は序列だけには気をつけて……」


「えっ? 私も!? えっと、何のことかなぁ~」


 野和さん、三田川さん、坂江さん。今日のあんたらおかしいよ。


「それじゃぁ、理音さん。またお昼に」


「はい!」


「では、尾野君。ついてきてくれ」


「はい……」


 俺はトボトボと光明院さんの後に付いていった。

 後ろでは、


「駿様……」


 と、長友さんの声が小さく聞こえてきた。

 そして、


「理音、あんたもかぁぁぁ」


 と、半泣きの真希の声が聞こえてきた。



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