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第35話 長友理音を救うには



 翌日。

 ゲーム内生活14日目。

 ついにゲームの世界で生活を始めて2週間である。

 忙しすぎて2週間という日数が経っているという感覚が無かった。


 まったく、展開が早すぎるんだよこのゲームの世界!


 そりゃそうか。このゲームはヒロインとの恋愛度を高めて攻略してくゲームじゃないもんねっ!

 目に付いた女を片っ端から襲っていくような外道ゲームだった。

 だからって、限度ってもんがあると思うんだ。俺は。




 それよりも、現実世界でも2週間という時間が経っているのだろうか。


 元の世界の会社には当然なんの届出を出してはいないし、最悪行方不明扱いになっている可能性だってある。


 戻った時の事を考えると少し憂鬱だ……。




 それはさておき、俺は今日も学校へと向かう。

 妹は落ち込んでいるようだが、励ましつつ連れ出した。

 どうやら長友 理音とは連絡がついたようで、彼女も隠れながら学校へ行くとの事。

 家に居るとどうしてもマスコミがうるさいらしい。

 よく抜け出して来れたなぁ。


 当然のように三田川さんと合流し、続いて野和さん、坂江さん、そして坂江さんの弟の洋太と一緒に学校へ行く。


 俺は三田川さんと野和さんに見張られているようで、少し居心地が悪い。






 そして放課後。

 家に帰る際も野和さんと三田川さんに捕まり、一緒に帰ることになった。


「ちょっと待って。その前に寄りたい所がある」


 俺がそう言うと、二人の目つきが鋭くなった。


「また……危ないところへ……?」


「私も一緒に行くから」


 なんか疑われているなぁ。

 だけど、今回は本当に危ない場所ではない。

 先ほど校舎の目立たないところで話がしたいという内容のメールが妹の真希から送られてきたのだ。


 しかし……、野和さんや三田川さんの様子から、どうやら俺の信用は無くなってしまっているようだ。


「いや、えっと。真希から呼び出しを受けたんだよ。相談したいことがあるんだとさ」


「「一緒に行く」」


 どうやら本当に俺の信用は無くなってしまっているようだ。

 仕方が無いので野和さん、三田川さんと一緒に妹との待ち合わせ場所へ行った。


 こんな状態で妹に会いに言ったらまた何か嫌味を言われそうだなぁ……。




 呼び出しを受けた場所へと行くと、二つの人影があった。


 一つは妹だ。

 そしてもう一つはというと……。


「こんにちは……。真希のお兄様……」


 見るからに憔悴している長友 理音がそこに居た。

 可哀想に……。


「兄貴ぃ……」


 妹はというと、俺に軽蔑の眼差しで見てくることは無く、助けを求めてくる目になっていた。


「えっと、どういう事かな?」

 一応聞いてみる。

 なんとなく想像はつきそうだけど……。


「えっとな。兄貴」


「真希。私がご迷惑をおかけする内容ですので、私から話させていただいてもいいですか?」


「えっ? うん……、わかったよ……」


 どうやら長友 理音が説明をしてくれるらしい。


「真に身勝手なお願いとなってしまい、申し訳ないのですが、数日私を匿って頂きたいのです」


「匿う? それって君のお父さんの件でかな?」


「はい、そうです。現在父や私達家族はマスコミに追われる日々を過ごしております。学校までその手は及んでいませんが、家から出る事自体難しくなっています。姉達は海外へ行っている事もあり、今は問題ないようですが、私は学校へ行く為に家から出るのもままならない状況なのです」


 なるほど。

 よく今まで事件が大量に発生し、その渦中に居る俺の周辺にマスコミが来なかったな!

 この差は何だ?? 一般人と政治家との違いだろうか。


「それで、俺の家……尾野家に一時匿ってほしい。そういう事かな?」


「左様でございますわ」


 まぁ、予想通りだな。


「兄貴ぃ」


 妹がまるで拾ってきた子猫を飼って良いか聞いてくるような目で同情を引こうとしている。

 そんな目をしなくても俺の答えは決まっている。


「大丈夫。俺は全然問題ないよ! 親父とお袋には俺からもお願いしてみるよ」


 俺がそう言うと、妹と長友 理音の顔は明るくなる。


「「……」」


 ただ、俺の後ろから何か威圧が飛んでくる。

 別に同じ部屋に泊まるわけじゃないからいいだろ!


 俺が野和さんと三田川さんの視線に怯えていると、


「おや? そこに居るのは理音さんではないかな?」


 と、凛とした声が聞こえてきた。


「桜お姉様!」

「生徒会長!?」


 長友 理音、妹の順でそう言った。

 現れたのは『光明院こうみょういん さくら』。このゲーム世界のヒロインの一人だ。

 ちなみに桜お姉様と言ったのは長友さんだ。

 ゲーム内で姉のようにしたっているという設定があったので、そういった呼び方をしているのだろう。


「君は……。尾野君ではないか。もしや、また事件なのかな?」


 引きつった笑顔でそう聞かれた。

 俺は疫病神か何かですか?


「まぁ事件といえば事件ですが……」


「えっ」


 光明院さんから笑顔が消えた。


「いえ、生徒会長!実は――――」


 慌てて妹が説明をした。





 妹の真希が説明を終えると、


「そうか。確かにそれは問題だね。わかった。私も微力ながら協力しよう。もし、尾野君の家がマスコミに嗅ぎ付けられたりしたら、私の家に来ると良い」


 と、光明院さんがそう提案をしてくれた。

 これで長友さんの隠れ場所は増えたのだが、


「さ、ささささささ桜お姉様のお宅ですかかかかかか!?」


 長友さんは光明院さん宅に泊まれる可能性に興奮しているようだ。


「ん? 嫌かな?」


「い、いえいえ!!! とんでもございません! マスコミに見られたら直ぐにでも参ります!」


 すごく元気になったなぁ……。

 そういえば長友 理音は光明院さんの事が大好きって設定だったなぁ。なんでだっけ?


「それじゃぁ帰ろうか。集団で帰った方がマスコミに狙われにくそうだし」


 もう帰って休みたい。


「分かった! クラスの皆に協力してもらう!」

「私も一緒にお願いしてきますわ!」


 妹はと長友 理音はそう言うと何処かへ飛んでいった。

 元気だなぁ。


「「「「…………」」」」


 その場に残された俺達はどうしていいか分からなくなる。


「うん。君達」


「「はい!」」

「はい……」


 光明院さんが俺達に話しかけてきた。


「長友さんと仲良くしてくれてありがとう。私の家は昔から彼女の家と親交があってね。こういった自体に何か協力できないかと模索していたんだ」


「そうだったんですか」


 そんな設定があったとは知らなかった。

 ゲームでは語られていない情報だな。

 そんな事を思っていると、光明院さんは優しい笑みを浮かべ、


「ふふっ、尾野君。君はまるで我が校の英雄だね」


 と、突然そんな事を言い出した。


「え?」


 いきなりの英雄扱いに戸惑っていると、


「数々の悪人を倒し、今もまた困っている人に手を差し伸べている。まったく、救われた女性であれば君の存在を放ってはおかないよね?」


「はぁ……そうですか?」


「そうだとも。かくいう私もその一人なんだよ?」


 きゃぁ! なんか俺、暖和さんと三田川さんに睨まれてる!? なんで!?


「はははっ、冗談だよ。ゴメンね?」


 この女ぁ……。

 おしっこをちょっとだけちびっちゃったぞ。


「君と……。いや、君達と話していると、"人"とちゃんと会話している。という感覚になって楽しくて仕方が無いんだ。君達の彼氏を取るつもりは無いから安心してほしい」


 君達の彼氏ってなんだよ。

 ってか、人とちゃんと会話しているってどういう感覚なんだ?

 光明院さんの周りには機械音っぽい声しか出さない人ばかりなのか?


「い、いえ。私はそんなんじゃ……。えへへへ」


「分かりました……」


「……」


 クソゥ。二人揃って幸せな表情しやがって!

 というか、もしかして光明院さんは俺をハーレム主人公か何かだと思っているのか?

 これが現実ならばどんなに嬉しいことなのだろうか……。


「お~い!兄貴ぃ。お待たせ~」


「おぉ。真希―――え……?」


 そんな事をしていると、妹と長友 理音は50人位の生徒を引き連れてやってきた。


 え? この人数で帰るの???







 完全に長友 理音を中心に隠す車懸り陣形にて下校した為、マスコミに長友 理音を発見されることはなかった。


 これ、逆に目立つよね?


 学校の前で張り込んでいた大勢のマスコミは、突如出てきた学生達の群れに驚きを隠せず、必死に長友 理音を探していたが、ついには見つけることが出来なかった。


 俺達が家に着くと光明院さんが最後まで付いてきてくれていた生徒を誘導し、その場を離れてくれた。


「まさかこんなに大勢の人が協力してくれるとはな……」


 ちなみに野和さんと三田川さんは仲良く光明院さんに連れて行かれた。

 先ほど俺をからかったお詫びだろうか。

 尾野家に残ろうとしていた二人を無理矢理引き剥がして連れて行ったのだ。


 よし、さっき俺に恐怖を与え、ちょっとだけお漏らしさせられた件はチャラにしてやろう。


「えっと。よろしくお願いします」


「いいからいいから。入って!」


「お邪魔します」


 妹と長友 理音はそう言って家の中へ入っていった。



 父と母の説得は意外にも簡単にできた。

 むしろ、昨日妹が取り乱していたことで長友 理音の事が気がかりだったらしい。


 だが、俺はいつまでも長友さんを置いてはおけないと思っている。

 長友さんも精神的に辛いだろう。

 佐々木さんは駄目だったし、あの目が異様にキラッキラしていたおまわりさんに任せていても絶対大丈夫という確証は無い。


 そんな事を思っていながら長友さんを含めて夕食を共にしていた時、事態は急変する。


「さぁ、遠慮せず食べてくれ!」


「うふふ、一般庶民の食事ですけど、お口に合えば嬉しいわ」


 などと、ほのぼのした雰囲気で父親と母親が長友さんに夕食を進めていた。


「ありがとうございます。真希のお父様、お母様」


 長友さんは無理やり笑顔を作っているようで、食事をとり始めた。

 見ていて痛々しい。


 すると、つけっぱなしになっていたテレビのバラエティー番組が突然ニュースへと切り替わる。




「<速報です、現在『片仲 周蔵』議員の事務所で銃撃戦が行われております! 繰り返します―――>」




「「ブーーーーーーーーーーー」」


 俺と長友さんは揃って飯を吐き出した。


「うわぁ!?」


「ど、どうしたの!?」


 父と母はそんな俺達の異変に驚き問いただす。


 片仲 周蔵。長友 理音の父親を嵌めた張本人の事務所で銃撃戦。

 最早まともな状況ではないだろう。

 ゲームとは明らかに違う急展開に俺達は驚いた。


 銃撃戦ってなんだよ!? 片仲の奴は銃を持っていたのか? それよりもなんでそんな事になった。

 疑問が次々と湧き出てくるが、今はテレビから目を離せない。


「ねぇったら、兄貴、理音、どうしたの!?」


「えっ?」


 我に返ると俺は妹に揺さぶられていた。

 理音は今だ目を見開いてテレビを見ている。


「どうしたのさ兄貴! 二人して」


「あ、あぁ。今銃撃戦をしている片仲 周蔵は、長友さんのお父さんの政敵だよ。今回、長友さんのお父さんを嵌めたのも奴だ……と思われるんだ……」


 危ない危ない。

 まだ片仲が長友さんのお父さんを嵌めた犯人だという証拠は無い。危うく犯人だと言い切るところだった。


「……どうして?」


「ん?」


 今度は長友さんが俺の方を見て質問をしてきた。

 しかしその顔はありえないとでも言うような表情だ。


「何故、父の政敵が片仲という事を知っているのですか? いえ、それはいいとしても、何故父を陥れた犯人が片仲 周蔵だと思われるのですか? 候補はまだ居るはずですよ……?」


「……あっ」


 しまったぁああああああああああああ!!!

 やっちまった。やっちまったぞぉぉおおお!?

 そうだよ。長友議員の政敵はなにも片仲だけではない。

 なんで片仲が犯人だと思ったのかという根拠が無いぞ!

 せめて犯人だと思われている一人だとでも言っておけばよかったか。


「い、いや。ネットで今一番政治の世界で争いがある議員達は誰か! みたいなのを見てね。一番怪しいのが片仲議員だって話で持ちきりだったんだ。ほら、丁度昨日長友議員の不正疑惑が報道されてたから調べたらそういう陰謀論がボロボロ出てきてねぇ」


 などと、咄嗟に適当な言い訳をすると、


「ネットの何処に書いてあったんですか?」


 と、更に問い詰められた。


「あ、あれだよほら、よくある2ndって掲示板で……」


 そんな嘘に嘘を重ねていると、長友さんは素早く自身のスマートフォンで検索を始めた。

 あぁ、ヤバイばれる。

 そんな事を思っていると、


「あっ、本当だ。ありました」


「えっ!?」


 なんと、本当に俺が言ったような書き込みがあったらしい。


「え? どれ?」


 妹が長友さんのスマホを覗き込んだので、俺もついでに覗いてみる。

 その書き込みは2ndというサイトではなく2ndの記事をまとめた、所謂まとめサイトであった。

 だが、しっかりと俺が言ったような内容が書き込みがされているのだ。


 マジか……。


 本当に書き込まれているとは思わなかった。


 俺が驚愕していると、




「<今、武装した片仲議員が射殺されたようです!>」




 というとんでもないコメントがテレビから流れてきた。



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