第34話 ヒロインに殺されるぅぅ
「失敗……したのか……」
長友議員への疑いのニュースが流れたという事は、佐々木刑事達は失敗したようだ。
あぁぁ……。そうだよ。失敗するのは当然だろ!
不自然にならないよう時系列的なことばかり心配していて、俺は警察達に片仲の狸爺の不正を調査するだけの時間を与えなかったんだ。
たった1日半ほどの時間で何ができると思っているんだ?
せめて一週間前にこの情報を渡していれば、こんなことにはならなかったのではないか……。
佐々木刑事と一応それなりの信頼関係が築かれていなかろうが、彼はこの世界で俺を助ける側の存在として在るはずなんだ。
あれ? そういえば佐々木刑事はあくまでも一般人としての記憶しかないんだっけ?? つまりあの狐仮面の巫女さんの部下としての記憶は無い……ということか?
「え!? ちょっと待ってマジで!? もしかしてどの道無理ゲーだった?」
だけど、俺からの情報を無視はしないだろう。たぶん。
あぁぁあああ!! これはどうすりゃ良かったんだ!? とにかく失敗したぁあああああ!!!
「おい、駿。どうしたんだ?」
「ちょっと、駿!?」
父親と母親は俺が絶望している姿を見て、驚いて心配をしていた。
「どうしよう、どうしよう!」
真希も混乱しているようだ。
そりゃ友人のお父さんがそんな疑惑を持たれたんだからショックだもんな。
あぁ、待て待て取り乱すな。俺が言うのもなんだけど。
「嘘だよね! 兄貴! 嘘だよね!!」
「うん、嘘だね」
「え???」
おっと。口が滑った。
「あ、いや。うん。アレは絶対嘘だよ。何処かの対立している議員が長友議員の秘書と結託して長友議員を落としいれようとしたに決まってるんだ」
「そ、そうだよね! うん、そうに決まってる!! ……え? どういうこと?」
妹は混乱はしているが、最初よりは落ち着きを取り戻しただろう。
「わ、私、理音に連絡してくる!」
と、言って妹は部屋の中に入り込んで行った。
「俺もちょっとここ離れる……」
俺は父親と母親に心配されつつもこれからの準備の為に自室へ入る。
まずはボイスレコーダーを持っていかなくてはな。
さて、ゲーム内では仕掛けていたのは長友議員のニュースが流れてからその日だったからな……。
出かけるとしますか……。
ピンポンピンポンピンポン――――――。
目指せ17連打。
「洋太くぅ~ん」
俺は坂江家に行っていた。
呼び鈴を鳴らし、俺は猫なで声で坂江 洋太を呼ぶ。
最初は坂江さんのお母さんがインターフォンに出て、次に洋太へ代わってくれた。
「<はい。何か用っすか……?>」
警戒したような声で洋太はインターフォンのマイク越しに話しかけてきた。
「夜分遅くに申し訳ございません! ちょっとスクーターを貸してく~ださいっ」
「<はぁ!?>」
何言ってんだ?というトーンで返される。
「スクーターを貸してく~ださいっ」
俺の目的はそれだけなので、繰り返しそう言った。
もう勢いで押し切ろう。
「<えっ。あ、いや。別に良いっすけど……>」
「ありがとう!」
洋太は快く承諾してくれた。
俺がスクーターに拘る理由。
それは、まず流石にこれから行く距離をタクシーで行ったら金がかなり掛かるだろうと思ったからだ。
そもそもタクシーだと、高校生一人で長距離移動は不審に思われるかもしれない。
バスや電車もあるだろうが、時刻表がどうなっているか分からないもんなぁ……。
バスのカメラやタクシーの運転手なんかにも顔を覚えられても嫌だし。
そういえば鬼畜主人公はなんかかっこいいバイクで行ってたな。
クソゥ。金持ちのクソガキめ。
あの野郎、学校で唯一スクーターじゃなくてバイクで学校に通うという特別感丸出しの主人公だったからなぁ。
そんな事を思っていると、洋太は家から出てきて庭に置いてあったスクーターを引っ張り出し、俺の前へ置いた。
「えっと、これっす。後これ、メットっす」
いたる所に擦り傷が付いたスクーターが出てきた。
サイドミラー割れてるな。
だけど、接着剤で直した痕がある……。
これで運転しても良いのだろうか? 警察に捕まらない?
まぁいっか。今気にしている余裕はない。
ブオオオオン!
エンジンはちゃんとかかったな。
「ありがとう。お、燃料満タンじゃん。ちょっと借りてくね~」
これなら帰りまで持つだろう。
「あ、はい……」
「ちょっと待て!」
ガンッ!
「ひぇぇ!」
と、スクーターを突然蹴られた。
俺は乗る直前だった為、一緒にこけてしまう。
「何処へ行こうとしてるの!?」
現れたのは坂江さんだった。
いつの間に外に出てきたんだ?
……あれ? なんか鬼の形相だ。
「お、おい!それ俺のやつだぞ!!」
と、洋太は坂江さんに慌てて文句を言った。
「うるさい! 中学生がこんなもの乗り回す必要はない!」
「そんなぁ!」
おぉぅ。坂江さん、なんというか……強くなったなぁ。
洋太は情けない声を出している。おいおい、もうちょっとあの頃の洋太くんみたいに頑張って下さいよ。
「それで? 何処に行こうとしてたの!?」
あ、標的が俺に戻った。
「ちょっと遊びに――――」
「また危ないところに行こうとしているんじゃ無いでしょうね!? 止めてよ! もし洋太のバイクを借りた事が紗香に知られたら、私が怒られるんだから!!」
信じてもらえなかった。
「な、何故!? 怒られるのは洋太君だろ!?」
流石に坂江さんは怒られないんじゃないでしょうか。
「俺ぇ!? なんで俺が怒られなきゃ―――」
「洋太は黙ってろ!!」
「えぇぇ……」
「うわぁ理不尽……」
坂江さんはよっぽど鬱憤が堪っているご様子。
「危険な所に行くってなら私も連れて行って!!」
なんかとんでもない案を出された。
「いや、それこそ紗香は怒るんじゃないだろうか……。解決策になってないぞ……」
「……それもそうだね」
坂江さんは焦った表情でどうしたものかと思案中だ。
その隙に俺はスクーターに跨る。
「えっと、刑事の佐々木さんに任せている件だからきっと大丈夫だよ。今回は様子を見に行くだけだから」
「ちょっと! 馬鹿な真似は止めてよ!! やっぱり危ない事しようとしているんじゃない! 佐々木刑事って豊森先生の時に一緒に居た刑事さんでしょ!? 結局羽間先生は捕まえたけど、肝心なところで役に立ってないじゃない!!」
肝心なところというのは俺がぶん殴られて吹き飛ばされた事を言っているのだろう。
それでも役立たずは酷いのではないだろうか?
「大丈夫だって。紗香にはバレないようにやるさぁ。あばよぉ~」
俺はそう言ってスクーターを発進させる。
今度は発進に失敗はしなかった。
「逃がすかぁああ!!」
ヒュオン!
「え?」
俺の横を猛スピードで何かが横切った。
よく見ると石だ。
投石しやがったのか!? 嘘だろ??
俺、もしかしてゲームのヒロインに命を奪われそうになってる!?
「待てぇえええ!!」
「うぉお!? ひぃいいい!」
鬼の形相で何処から取り出したのか木刀を持って坂江さんは追いかけてきた。
木刀なんて持ってどうしようというんだ? 殴るのか? 俺は殴られるのか?
「うわぁああ!! もっとスピード出ろぉおおおこのポンコツ!!」
俺は必死に慣れない乗り物のスピードを上げた。
なんなんだよ! いきなり坂江さんが凶暴化したぞ!? も、もしや、アレは魔物化しているんじゃないだろうか。
申し訳ないが、そう疑ってしまった。
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~坂江 由梨視点~
「もう! どうして分かってくれないの!?」
私は危険な場所へと向かおうとしている尾野君に対し、怒りを感じていた。
尾野君には親友を守ってくれたあの転校生が捕まった日から、深い感謝を感じている。
そして、更には私の弟の件でもお世話になった。
そんな彼の身に何かあれば……、
「紗香になんて言えばいいのよ……」
私はフラフラと壁に手を付いて嘆く。
すると、
ジッ――――――。ジジジッ―――。
なにこれ!?。
急に頭の中に変な記憶が……。
私は服を全て脱ぎ、憎き男の前に立っていた。
だけどこの男は三田川さんと共に私の仇をとってくれた気がする。
「うぅん。やっぱりスポーツをやっているだけあって引き締まった体だ」
彼の両隣には、私と同じく一糸纏わぬ親友の綾香と三田川さんが立っている。
二人の目には光りが無い。
「しかし、弟……洋太君の件は残念だったなぁ」
何を言ってるの……?
洋太は何もなく……。おかしい。私の頭の中に洋太が死んだ記憶がある?
これは一体、どういうこと?
「市民を守るはずの警察に殺されちまったんだからなぁ」
わざとらしくそう言うそいつに対し、腹立たしさを覚えるが、記憶の中の私はもう何もする気が起きないようだった。
ただ一緒に暮らしていければよかった。
私はいくら嫌われてもよかったから、洋太と暮らしたかった。
なのに、洋太は不良達と一緒に警察署襲撃など、馬鹿な事をしてしまい、射殺されてしまったと私は嘆いていた。
「だが、安心しろ」
何を安心しろというのだ。
「君はこれから子供を……そうだな。可能なら男の子を産めばいい」
「えっ?」
この人は何を言っているんだろう。
「弟の代わりというのは嫌だろうが、君はこれから新しい命を沢山産んでいけばいい。そうすることも寂しさを和らげる手段の一つなのだよ?」
洋太の代わりなんて居ないのだ。
そんな事が許されるわけが無い。
「君はそれに対し罪悪感を覚えるかもしれない。だけどね? これから先、産まれる子供たちに対して、その気持ちを教えられるのは君を含めて数少ない人たちだけなんだ」
教える?
「何が正しくて、何が間違っているのか。君は将来の子供たちに教えていく必要がある」
それは……そうだけど……。
「だから、手始めに俺と君の子供にそのことを教えていこう。沢山産めばそれだけ将来孫やひ孫に俺達の気持ちが伝わるだろう。だから……おいで?」
私はその後、奴に手招きされるがまま、ゆっくりと近付いて行った。
ジジジッ―――。
……私は今、何を思っていたんだろう。
あぁ、そうだ。
尾野君への感謝だったっけ?
でも、尾野君が帰ってきたら、お説教をしなくちゃ……。
私は重い足取りで家へと戻った。
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「ひぃ……ひぃ……。よし、逃げ切れたか……? 怖かったよぅ」
ヒビが入ったサイドミラーには坂江さんの姿は映っていない。
あれ……? 俺の目から何か液体が流れているけど……。これはなんだろう。
「ぐすんっ。予定通りの道には……。来ているな」
このまま片仲議員の事務所へ行く。
ボイスレコーダーをセットして、2日後に回収する予定だ。
ゲームでは鬼畜主人公は上手くやっていたが、俺はどうだろうか。
うん、心配ばかりしていては駄目だな。
あの鬼畜主人公よりも上手くやってみせるさ。
「とは思ったものの……」
現在俺は片仲議員の事務所の前に居た。
庭付き一戸建ての物件だ。
コンクリート造りだが、結構年季が入った建物だ。室内には明かりがついている。
2階建ての建物で、1階部分も事務所になっており、2階が執務室及や応接室がある。
ゲームでは2階の応接室で裏切った長友議員の秘書と片仲が話をしていた場所だ。
俺の頭には片仲と長友議員の秘書がゲヒゲヒと笑っている姿が思い出され、不快な気持ちになる。
「チッ。原作通りあの二人には痛い目にあってもらうしかないな」
俺が元の世界に帰るためだ。
2階へは塀の上から行くことができる。
窓は開いていたはずなので、そこから進入してボイスレコーダーを設置すれば良いのだ。
やるか……。やるしかないか……。
覚悟を決めて俺は塀へ上ろうとした。
「ここから……」
しかし、近くにあった電柱につかまり登ろうとした時、
ガッ!
と、肩を掴まれた。
「!?」
え?発見された!?
と、焦り俺は後ろを振り向いた。
「「……」」
振り向くと俺の肩を掴んだ人物と目があった。
非常にまずい展開になった。なんと俺の肩を掴んだ人物は警官だったのだ。
「あっ……」
ヤバイ。
これが佐々木刑事が手を回してくれた警官じゃなかったら相当拙い。
俺がただの不審者になってしまう!!
そう思って焦っていると、
「大丈夫であります。全て本官達にまかせて下さい」
と、どこかキラキラとした目でそういわれた。
なんか見覚えがある。
「え? ……あ、はい……」
あれ? もしかして本当に佐々木刑事が派遣してくれた警官なのだろうか?
「あのぉ……」
「今日はもう帰るであります。帰り道は気をつけるでありますよ?」
あ、思い出した。
このいかにも警官です。って話し方。野和さんのストーカーだった半田を捕まえた時に駆けつけてきてくれた警官の一人だ。
「えっと。ありがとうございます」
「気にしないで下さい。で、あります」
そして警官は、帰る俺を見ながら力いっぱい手を振って見送ってくれた。
…………。
俺はいったい何しにあそこへ行ったのだろうか……。
その後、俺は坂江さんの弟にバイクを返しに行き、何故か弟君を含めて俺は揃って坂江さんに説教を喰らった。
理不尽だと思います。
死屍鎧:「で? ちゅん太は真実を知らされない事に腹を立て、琴音は疚しい事を知られたくないため、話したくないと……?」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:はい……
琴音:「いや、疚しいと言いますか……。ちょっと聞こえが悪いと言いますか……」
蛇行荒:「愚か者共めが!! そのような事で力を使い喧嘩をするとは! 貴様ら、力を持つ者として有るまじき事をしているのだぞ!? 恥を知れ!」
ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:お、お言葉ですが! 事態は一刻一刻と悪い方向に動いているのです! そのような事とおっしゃいますが、人命が掛かっているのですよ!?
墓畔女:「我等とて、その事は十分理解しておる。我等は召喚され直ぐに理解した。この者はそこまで馬鹿ではない」
琴音:「おぉぉ!」
墓畔女:「とは言え、最優先すべき事柄でも無いがな……(ギロリ)」
琴音:「ひょぇぇ……」
死屍鎧:「まぁ、琴音が道を踏み外すような事があれば、我等が成敗しよう」
琴音:「えぇぇ……」
蛇行荒:「ちゅん太は安心して己の使命を全うせよ」
ちゅん太:「は、ははぁ!」
墓畔女:「琴音ちゃんもいいわね? 式神を無理矢理従えようなんて考えちゃダメよ? 私達は信頼関係で成り立っているのだから」
琴音:「は、ははぁ!」
式神達:「「「……」」」
死屍鎧:「……それじゃぁ帰るか」
蛇行荒:「時代劇の再放送見たいし」
墓畔女:「『マネーフォルムフラット;NEXT』ね? 好きよねぇ、あなた達」
琴音 & ちゅん太:「「……」」
式神達:「「「そんじゃ!」」」
琴音 & ちゅん太:「「……」」




