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第33話 平和な学生生活


―尾野 駿視点―


 ゲーム内の世界生活13日目。

 今日は月曜日だ。


 ストーリーは進展しているものの、元の世界に帰れるという実感が全く無い。


 それもそのはず。

 これから先の事件は一般人の手には余る規模なのだからな……。

 よく鬼畜主人公はあんな事件を解決できたなと思う。

 まぁそれはフィクションであるから当然だろう。

 現実世界で考えればできるわけが無い内容なのだ。


「兄貴。いつもは朝のニュースなんて見ないのに、どうしたの?」


 と、妹が聞いてくる。

 ここで新たな設定。

 どうやらこの世界の俺は朝食の時はニュースを見ないらしい。


「お父さんも新聞を読むのは止めて、早くご飯食べちゃって」


 と、母親も父親に文句を言っている。


「うん……」


 一方父親は空返事だ。


「いや、この町のニュースはやって無いんだなぁと」


 俺はそう言ってニュースを見続ける。


「<今日は音熊市立動物園にて生まれたニホンオオカミの赤ちゃんの特集をお送りします♪>」


 今は動物園で新しく生まれた動物の話題で持ちきりだった。


「昨日はなんか警察署襲撃事件のニュースが散々やってたけどなぁ。そのうちやるんじゃない?」


 そう言って妹は目玉焼きを頬張る。

 半熟の目玉焼きっていいよね。俺も大好きだ。


「そうか」


 早速警察署の件はニュースになっていたらしい。

 そりゃそうか。現実世界の日本でもそうそう起こらない事件だもんな。


 俺が気にしているのは勿論長友議員の件だ。

 彼の冤罪事件が出たイコール警察が上手く機能しなかったという事になる。


「なさそうだな」


 食事が終わる頃までには長友議員はニュースに出ていなかった。

 とりあえず一安心だろう。



「行って来ます」

「行って来ま~す」


「気をつけるのよ~。特に駿!」


 俺と妹は一緒に母親に心配されながら家を出て学校へ向かう。


チュンチュン!


 今日も元気に一心不乱に地面を突くちゅん太さんの姿を見つけた。


「あ、ちゅん太さん。おはようございます!」


 ちなみに俺の命を救ってくれたちゅん太郎さんへの挨拶は忘れない。

 腰の角度は90°。しっかりとお辞儀をして誠意を見せる。


 日頃の感謝というのはこまめに伝えなくてはならない。

 特に命を救ってもらている身としてはな。


「兄貴……」


 頭を上げると何だか妹が哀れみの目を向けてくる。馬鹿にしやがって!

 このお方は俺の生命維持にはなくてなならない存在なんだぞ!


 などと、言えるわけはなくしばらく道を歩くと、


「おはよう……」


「「うわぉ!」」


 電柱の影から三田川さんがヌッと姿を見せる。

 俺と妹は驚いてしまった。


「お、おはよう」


「あれぇ? み、三田川先輩って家近くでしたっけ……?」


「違う……。尾野君が心配だったから……」


「そ、そうか。ありがとう。一緒に学校へ行くか?」


「分かった……」


 心配してくれるのはありがたいが、突然現れたから心臓に悪いぞ。


「あ、駿。おはよう!」


 今度は誰だ!?


「ひぃ!」


 何故妹はそんなに怯えた声を……。って野和さんじゃん。


「おはよう」


 そこにはいつもの野和さんが立っていた。


「真希ちゃんもおはよう。あれ? 三田川さんも居たんだ。おはよう」


「えぇ……。おはよう……」


 三田川さんと野和さんはにこやかに挨拶を交わす。


「兄貴。拙いよ修羅場だよ」


 と、妹は俺にこっそりと言ってくるが、悪ふざけは良くないぞ。妹よ。


「失礼だろ」


 俺がそう言って咎めると、


「この鈍感クソ野郎」


 と罵られた。

 前から思っていたが口が悪過ぎないかね?

 最初の頃は妹ができたと喜んでいたが、ちょっと最近悲しくなってくる時があるぞ。

 あぁ。「お兄ちゃん」と言ってくれる妹は本当に存在するのだろうか……。


 というか、自意識過剰かもしれないが、二人が俺に対して恋愛感情があるだろうなぁという自覚はあるにはある。

 だけどこの恋愛感情に対し、俺は元の世界に戻る事を前提に行動している為、意味が無いものなのだ。


 って、俺はいつからギャルゲーの主人公になってんだよ。

 完全にこのポジションはギャルゲーの主人公じゃん。


 やだよ。こんな殺伐とした世界の主人公なんて。

 早くお家に帰りたいよぉ。


「あ、おはよう尾野君」


 次は誰だ?


「あ、彩香、それに三田川さん。おはよう」


 坂江さんだった。

 いつの間にか坂江さん宅の近くまで来ていたらしい。


「おはよう由梨。あ、今日は尾野君と三田川さんと一緒なんだねぇ」


「おはよう……。うん……、偶々ね……」


 嘘だぁ。俺、君が待ち伏せしていたの知ってるよぉ。


 おや? それよりも気になる人物が居るな。


「あれ? 洋太君?」


 真っ先に野和さんが反応した。


「うっす……」


 なんとそこには学ランをちゃんと着た坂江さんの弟が居たのだ。


「連絡は貰ったけど、本当に更生してたなんて……偉いねぇ」


 と、野和さんは感動をしている。


「う、うん、まぁね」


 こら。坂江さん。チラチラこちらを見るんじゃない。

 その様子だと、なぜ洋太が更生したかという原因は伝えていないんだろ? 俺を見てるとバレるだろうが。


「ん? 由梨。どうしたの?」


「え? な、なんでもないよ!! 尾野君なんて見てないよ!」


 慌てて否定するからなんか怪しいだろう。やめろよぉ。


「ふ~ん。そぅ……」


 野和さんはそう言って少し低い声を出しながら、


「由梨にも渡すつもりはないから……」


 と、小さい声で言っていた。

 おい、聞き取れちゃったぞ!?

 何を渡すつもりがないんですかねぇ……。

 俺は鈍感系主人公じゃないからだいたいなんの事か分かっちゃうけどさぁ!


「ち、違う! 私、違うからね!?」


「私も……。許容は出来るけど序列で負けるつもりは無い……」


「へぇ~……」


 あ、コラ。三田川さんも参戦するんじゃない! 見ろ、なんか野和さんにスイッチ入っちまっただろう!

 それと、序列ってなんなのさ!


「チッ」


 あ、妹が俺を見て舌打ちをした。

 どういうつもりだ? 見せ付けやがってとでも言いたいのか?

 俺がハーレムを築き上げるのが気に入らないと?

 よ~し、お兄ちゃん怒ったぞ。

 元の世界に戻ったらテメェのクソコラ画像作って俺の日々の楽しみにしてやるからな。

 ネットにばら撒くのは可哀想だから止めておいてやろう。せめてもの慈悲である。

 ……あ。そもそも妹は顔グラすら用意されていないモブだった……。ウププププ。


「チッ。なんか馬鹿にされているような気がする。死ねっ」


 はい。何故か二回目の舌打ちいただきましたー。

 え? 心の中を読まれたのか?

 恐ろしい……。

 ほ、本当に俺がそんな事するわけないだろぅ。




 変なことで緊張や焦りを感じつつも、久々に日常という時間を味わうことができた一日だと感じた。


 学校でも平和で庄平とも馬鹿な話をしつつ、昼休みにはニュースをスマホで確認して安心し、放課後出歩くと豊森先生や生徒会長が親しげに話しかけてくる。






 実に良い一日だったと実感できた。


 本当に学生時代に戻ったかのような感覚になった。



 長友議員の事はきっと佐々木刑事が何とかしてくれる。


 俺はただ待てばいいのだ。


 そうだ。これからの事件も全て佐々木刑事に任せて学生生活を楽しもう。







 そう考えながら今日一日学生生活を楽しんだ。











 だから俺は夕食後、こんなニュースなんて聞きたくなかった。










「<本日、国会議員の自由権力党所属、『長友 総次郎』議員が賄賂を受け取ったという疑惑が発覚しました。議員は昨年6月頃――――>」






「ば、馬鹿なぁぁぁあああ!!!」


 俺は崩れるようにその場に座り込んだ。


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:こ……これは!?


琴音:「あーーっはっはっはっは! 見たか!? その小さな瞳で刮目するがよい! 我が一族より代々伝わりし式神の三英傑! 『蛇行荒だこうあらし』『墓畔女ぼはんにょ』『死屍鎧ししがい』である!」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:巨大な蛇、禍々しき影を纏う女、腕が四本ある鎧――――。


琴音:「榊の琴音が命じよう。さぁ、行けぇい! あの駄雀に力の差を思い知らせてやるのだ!」


式神達:「「「……」」」


ちゅん太:「ちゅんちゅん!」(訳:これは……まずい


琴音:「今更恐れたところでもう遅いわぁ! あーーっはっはっはっは!」


式神達:「「「……」」」


琴音:「……ん?」


ちゅん太:「動か……ない……?」


琴音:「あれぇ? おっかしいなぁ……。おーい、聞こえてますぅ?」


死屍鎧:「……おい」


琴音 & ちゅん太:「「へ?」」


式神達:「「「この……大馬鹿者共がぁあああああ!!!」」」


琴音 & ちゅん太:「「ぴぃ!?」」



~説教開始!~

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